表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第五章 魔法研究家・アンジェリカ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/55

雲海楼へ――魔女アンジェリカの手がかり

「なんだ兄ちゃん……。俺に用があるのか?」


 男は笑っていない。

 むしろ、海斗の動きを一つも見逃すまいとする目だった。そして、下手なことをするなら――わかっているんだよなという雰囲気を醸し出している。

 海斗は両手を軽く上げ、敵意がないことを示しながら尋ねた。

「すみません、そのアンジェリカって魔女の話を聞かせてくれませんか?」

「なんだい、兄ちゃん、情報が欲しいのか?」

 中年の冒険者の表情が、わずかに緩んだ。

「話が聞こえてきてしまって……すみません、そのアンジェリカって人が、賞金首の依頼を冒険者ギルドに伝えた人を知っているとか」

「それがどうしたってんだ?」

「どこに行ったら、そのアンジェリカって人に会えるのでしょうか?」

「兄ちゃん、人にものを尋ねるときには、それ相応の礼儀ってものがあるんじゃねえのか?」

 海斗は銀貨一枚を冒険者に投げた。冒険者は銀貨を右手でキャッチすると

「なんだよ、銀貨一枚かよ。しみったれてんな。まあいいけどよ……。そのアンジェリカってのは普段は街中に出てこないらしいが、酒好きでよ、週末の夜限定で雲海楼(うんかいろう)っていう酒場に出入りしているって噂だ」

と答えた。

「ありがとうございました」

 海斗はその場を去ろうとした。

「ちょっと待てよ、兄ちゃん。もう一枚銀貨をくれたら、もっと重要な情報を教えてやらなくもないんだがね」

 海斗は少し考えたが、再び銀貨一枚を冒険者に投げた。

「へへ、そうこなくちゃな。そのアンジェリカって魔女はすごく疑い深くて警戒心が強いらしいんだ。もし会いにいくのなら、一人で行くべきだね。あと、情報料として法外な金を時々ふっかけるらしい。交渉するのなら覚悟して行くんだな」

「ありがとう。確かに有用な情報だったよ」

 海斗はもう一枚銀貨を冒険者に投げた。


「で、ダーリン。雲海楼には誰が行く?」

 冒険者ギルド内で、小声でアリシアが尋ねてきた。

「いろいろ考えたが、俺が行こうと思う」

「警戒心が強いのなら、女性の方がいいんじゃないのですか?」

 レイナの言うことはある意味もっともだった。

「しかし、法外な報酬を要求してくることがあるらしい。今の俺たちにそんな金はない。だったら……」

 海斗は少し言いづらそうに言葉を紡ぐ。

「また、チャームのスキルを使うんですか?」

 レイナは露骨に嫌そうな顔をした。エリザベスもうんうんと頷いた。

「いや、まあ俺もリサリアやエリザベスのお姉さんの例もあるから、あんまり使いたくはないのだけどさ……」

「ま、仕方ないだろう。あたしたち、今お金ないんだよ」

とアリシアは助け船を出した。

「アリシアさんは、またカイルが他の女の人をチャームのスキルで好きにさせても嫌じゃないのですか」

「そりゃいい気はしないけどさ。でも、このパーティの財布を預かる身としては、無駄な出費は極力避けたい。と言うか、そんな大金、どこにもない」

 結衣はこの話題にのってこなかった。フェルノスでの戦いで単独行動をして以来、結衣は沈黙を守ることが多くなってきた。アリシアとの仲も微妙だ。海斗はそれらのことを少し気がかりに思っている。

「とにかくダーリンが酒場に行く。そして向こうが法外な報酬を要求してきたら、ダーリンのチャームのスキルを使って情報を聞き出す。他に方法があるか?」

「私の預金を引き出せたら良かったのですが、残念ながら今私はさらわれている身となっているので、無理ですね」

 エリザベスも代替案はないらしい。

 そう言われるとレイナも何も言えなくなってしまった。

「そういうわけだ。俺が行く。できるだけチャームのスキルは使わないようにするからさ。アンジェリカが適切な情報料を提示してくることを祈っておいてくれ」

 レイナは

「はぁー仕方ないですね」

とため息をつきながら、あきらめ顔で言った。

「くれぐれもチャームのスキルは最終手段ですよ、わかっていますよね」

 エリザベスも海斗のチャームのスキルの使用をしぶしぶ認めた。

「ところで、ダーリン」

「何だい、アリシア」

「その情報料ってやつだけど」

「うん」

「20ゴールド以上は使ってくれるな」

 海斗は本気で言っているのかといった感じで

「つまり20ゴールドよりも情報料が高ければチャームのスキルを使えと?」と確認した。

「まあ、そういうことだ」

 海斗はアリシアの徹底した倹約ぶりに、思わず苦笑した。が、逆らってもこれ以上値は上がらなさそうなので

「わかった。そういう方針でいく」

と答えた。


 海斗たちは他の冒険者に雲海楼の場所を聞くと、海斗は他のメンバーと別れて雲海楼へ、他のメンバーは宿屋を決めに行くことにした。結衣が、交渉が終わりそうな頃を見計らって、海斗を迎えに行くことにした——それが、後に彼らの運命を左右することになるとは、まだ誰も知らない。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。


 次回、いよいよ海斗がアンジェリカと接触します。

 果たして彼女は、海斗たちを賞金首にした張本人を知っているのか。

 そして、その理由は?


 次回もお付き合いしていただくと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ