決着
「甘いね、それじゃあ私の肋骨は折れても、内臓まで届かないよ!」
すると、海斗は剣身を変化させ寝かせた! 海斗の切先はロキシーの左胸の肋骨の間に刺さり、皮膚を裂いた剣身が肉の奥へと滑り込むと、海斗の両手に心臓を貫いた確かな感触が伝わってきた。――血を吐きながら倒れるロキシー。
「……どうして、私が、皆が、こんな剣士見習いに毛の生えたようなガキに……」
「昨日の勝者が今日の勝者である保証なんてどこにもない……それは俺も含めて、な……」
そう言うと、海斗は、何の反応もしないロキシーに近づいた。剣を引き抜き、ロキシーの口に手を近づけ、もう息をしていないことを確認すると、血走った眼を閉じさせ、骸になったロキシーに両手を合わせた。
「本当は、チャームのスキルで殺さずにすむものなら、そうしたかった……挑発して怒らせる手なんか使いたくなかった……が、そうさせるには、あなた方はあまりに強すぎた……すみません」
雲が流れ、再度二つの月が海斗の顔を照らす。
「ふう」
海斗は一つ大きく息を吐くと、アリシアの元へと走った。
「アリシア、大丈夫か?」
海斗は座り込んでいるアリシアに、血に染まった手を差し伸べた。
「ダーリンに二度も助けられるとは、私も焼きが回ったね」
アリシアは海斗の手を握ると、海斗に引っ張られてそのまま立ち上がった。
「海斗!」
「お帰りなさい、海斗さん」
レイナ、エリザベスも海斗の周りに来た。
エリザベスは震えた声で、
「よくぞ、ご無事で……」
と、ほっとしたのか涙目になり胸の前で手を組みながら海斗の顔を見つめた。
アリシアたちの安堵した表情を見て、海斗は胸の奥が締めつけられるような思いを覚えた。
このままでは、また同じことが起きる。賞金首のえん罪を晴らさなければ、仲間がいずれ傷つくかもしれない――一刻も早く教皇国へ行き、無罪を勝ち取らなくては。
その時、結衣が森の中から現われた。その姿は魔物と戦ったのか、ダガーには乾きかけた血糊がこびりついている。革製のボディスーツも血潮を浴びていた。結衣は海斗が無事なのを確認すると、
「良かったぁ、生きていてくれて……」
とその場にへたりこんだ。その姿が、彼女の心がどれほど削られていたかを静かに物語っていた。
「しかし、海斗、すごいじゃないですか。いつあんな魔法おぼえたんですか」
レイナは純粋に驚いているみたいだった。
「まあ、もう少し厳密に言うと、魔法剣だがな。実は、吊り橋から川へ転落した後……」
と海斗は、今までの経緯を静かに語り始めた。
――この戦いの裏で、彼が何を得て、彼の身に何が起きたのかを。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ロキシーに勝ったことで、海斗たちはダンたちが仕掛けたしびれ薬から始まる奸計を乗り越えることができました。
しかし、海斗の胸に残ったのは勝利の高揚ではなく、仲間を守れた安堵と、言いようのない虚しさでした。
……この戦いは、まだ彼の旅路の一部にすぎません。
次回で第四章は幕を閉じます。
教皇国へ急ぐ海斗の心は、何を得て、何を失ったのか──。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




