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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第四章 覚醒

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炎の覚醒

 その時であった。

「……炎の精霊よ、我が剣に地の底に眠る炎の一部を分け与え給え、火炎斬!」

という詠唱が聞こえてきたかと思うと、地から吹き出た赤黒い炎は蛇の如く地を這い、獲物を狙うように一瞬でブラックローズのヒーラーと魔法使い、そして男剣士一人を包み込んだ。人と森の空気を焼くバチバチという音と、辺りに焦げた臭いが漂う。

「アリシア流戦術その三、まず潰すべきは敵のヒーラーと魔法使い、ってね」

と聞き慣れた声が聞こえてきた。

 そして炎に照らされた海斗の姿が、森の暗闇から現われた。

「海斗!」

「信じていました、海斗さん!」

「ダーリン、来るのが遅すぎるよ」

 レイナ、エリザベス、アリシアは次々と海斗の名を叫んだ。

「話は後だ。エリザベス、まだ俺に身体強化魔法をかけられるだけの魔素は残っているか?」

「……かろうじて、そのくらいなら」

「では、身体強化魔法をかけてくれ。アリシアはそこで少し休んでいろ」

「でもダーリン、まだ敵は八人もいるぞ」

「大丈夫。俺は命を懸けてお前たちを守る!」

「ダーリン……」

 エリザベスは残った力を絞り出すように、詠唱した。

「全知全能なる神よ、敬虔なる者たちに御力を分け与え給え、フィジカルエンハンス!」

 海斗の体は青白い光で包まれた。


「俺の仲間を殺そうとした、お前達には然るべき代償を払ってもらう!」


 ……炎が森の空気を焼き、乾いた音を連続して響かせるたび、犠牲者達の悲鳴が混じり合う。その場にいたダンらは、焼き焦がされた仲間を見て愕然とし、互いに目を合わせながら後退をし始める。

「……Kaitoは魔法剣が使えるのか?」

 ダンが叫ぶ。

「聞いてないぞ、そんなこと!」

 ロキシーは思わずつぶやいた。

「メアリーとスーザンがやられた……」

 動揺とも絶望とも言えない感情が広がる。


 海斗は再び詠唱する。

「炎の精霊よ、我が剣に地の底に眠る炎の一部を分け与え給え、火炎斬!」

 地から吹き出た火炎は蛇のように地を這うと、狙いすましたかのように男冒険者三人を襲い、彼らは地獄の炎の生け(にえ)となった。ロキシーは横っ飛びをして、かろうじて火炎の(にえ)にならずにすんだ。

「あと、五人!」

 その時海斗に向けて矢が飛んできた。海斗は炎を(まと)った剣で悠々と矢を()ぎ落とすとハンターのエミリーに向かって、剣を脇構えの形を維持したまま疾走した。

「エミリーまでやらせへん!」

 ブラックローズの剣士・サマンサが海斗とハンターの間に割って入った。海斗はお構いなく、炎を纏った剣を脇構えから左逆袈裟斬りを繰り出す。

 はじき飛ばされるサマンサの剣。

 がら空きになった首を斜め下に海斗は斬り込んだ。頸動脈を斬られたサマンサの首から噴き出した血が、夜の冷気に霧のように漂う。サマンサはその場に倒れた。海斗は叫ぶ。「あと、四人!」

「ボ、ボクに近づくな!」

 慌てたエミリーは近距離で矢を放ってくるが、海斗は半身になって矢を避けると、斜め一閃、エミリーの弓ごと腹をかっさばいた。

 はじけ飛ぶ弓と血潮。鮮血を全身に浴びる海斗。

「あと、三人!」

 怖じ気づいたダンが海斗に背を向けて逃走する。海斗はすぐに追いつくと、

「お前だけは絶対に許さん!」

と叫び、ダンの背を縦一文字に切り裂いた。

 夜気を震わせる絶叫と共に――命がまた一つ森の中に消えていった。

「あと、二人!」

「じ、冗談じゃないぞ、命あっての物種だ!」

 海斗と距離をとっていた男冒険者は逃げ出した。しかし、身体強化魔法をかけられている海斗は追いつくと、その背を十字に切り刻んだ。悲鳴と共に倒れる冒険者。間髪を容れず背後の殺気を察知した海斗が右に避けると、ロキシーの刃が空を切った。ロキシーは海斗を睨むと

「逃がさないよ、Kaito! メアリー、スーザン、サマンサ、エミリーの仇を討たせてもらう!」

と叫んだ。

 海斗は

「お前だって、仲間を殺されたのなら怒りを覚えるのだろう? 俺も仲間を殺しかけたお前を許す気はない!」

とロキシーをにらみ返した。

 ……しかし、どうする? 魔素に変換した生気が不足してきているのか、海斗は今まで感じたことのない疲労感を覚える。恐らく、もう火炎斬は使えない。使ったら戦闘不能になる。それは危険すぎる。果たして剣技だけで、ロキシーに勝つことができるのか? 

 怒りにまかせて戦ってきた海斗の(てのひら)に汗がにじむ。

 二人の顔を二つの月が照らす。ロキシーは不敵な笑みをこぼすと

「アンタの太刀筋は、火炎斬を含めて散々っぱら見させてもらった! 私に同じ手は通用しないよ!」

と威圧するように言った。それに対して、海斗は軽口を叩くように

「お前、仲間の命を犠牲にして俺の太刀筋を見たのか……。仲間の命を使い捨てにするような奴が、今さら仇討ちとは、笑わせるな……」

と挑発した。

「……」

「図星で言い返す言葉が見つからないのか?」

「アンタに、私たちブラックローズの何がわかる! アンタが何と言おうと、私は仲間の仇を討つ!」

 流れてきた雲が二つの月を覆い、森は静かに闇へと沈む。

 ロキシーは上段に構えて怒りのままに真っ向斬り。刹那遅れて、海斗の渾身の諸手突きが、がら空きになった胸元へと闇の中、貫く——。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 海斗はかろうじて間に合ったものの、怒りの代償として、ロキシー戦の前に生気は尽きようとしています。


 仲間を殺されたロキシーもまた必死。


 余力のない海斗は、一撃で仕とめることができるのか。


 次回もよろしくお願いします。

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