絶体絶命の包囲網
一方、アリシアたちは冒険者達と森の中で戦っていた。
「全知全能なる神よ、敬虔なる者たちに御力を分け与え給え、フィジカルエンハンス!」
アリシアの体は青白い光で包まれた。
「こちらの前衛が一人に、向こうの前衛が八人というのはあまりに多勢に無勢と言ったところか」
「アリシアさん、すみません。もう魔素が尽きそうです!」
レイナも、
「アリシアさん、もう矢がありません。私もナイフで戦います」
と息を切らしながら言った。
アリシアは苦笑しながら
「ダーリンに助けられた、この命もここまでか」
とつぶやいた。
エリザベスは真剣な表情をして
「弱気なことを言わないで下さい! まだ、きっと何か策があるはずです」
とたしなめた。そして、この中に離脱をした結衣の姿はなかった。
ダンとロキシーは、
「賞金首のパーティはもう限界だ。周りを取り囲め!」
「アンタ達、Yuiの居場所を吐かせる奴を一名生かしておきなよ!」
とそれぞれ言うと、仲間達にアリシアたちを取り囲ませた。
その声を聞いたアリシアは、弱気になる自分にカツを入れるように
「くそ! だが逆に言うと戦力が分散したとも言える。南東にいるダンを討って一点突破するぞ!」
と指示した。
「わかりました。レイナ、行きますよ」
エリザベスが叫ぶ。
アリシアは剣を振りかぶりながら、南東にいるダンに向かって走り出した。が、
「……背中ががら空き。炎の精霊よ、我にその炎を分け与え給え、ファイアーボール」
という詠唱が聞こえてくると、アリシアの背は火球の炎に包まれ、青白い光が一瞬にして赤く染まった。
「ぐはっ!」
「アリシアさん!」
「大丈夫です、アリシアさん。いと慈悲深き神よ、敬虔なる者の傷を癒やし給え、ヒール!」
エリザベスはなけなしの魔素を使った。
アリシアは立ち上がったが、剣を杖のように支えながら足元がおぼつかない。
ブラックローズを含めた冒険者たちがじわりじわりと距離を詰めてくる。
「もう……駄目かも」
レイナは涙をこらえながら、震える声でつぶやいた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
包囲は狭まり、全滅までもう時間は残されていません。
海斗は間に合うのか――。
次回もよろしくお願いします。




