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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第四章 覚醒

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絶体絶命――死線の吊り橋

 その瞬間、「……迷える魂たちに深淵なる眠りを誘い給え、スリープ!」

と、背後からエリザベスの声が響くと、スリープの魔法が発動。ダンの身体は糸が切れたかのように崩れ落ちた。

「エリザベス!」

と海斗は言おうとしたが、猿ぐつわを噛まされており、うまく言えない。

 エリザベスは、自分の杖を床に置くと、まずは海斗たちの猿ぐつわを外していった。

「エリザベス、まずは、全員に麻痺を取り除く魔法をかけてくれ。そして、終わったら、俺の縄を解いてくれ。そうしたら、俺が他の人間の縄を解いていくから!」


「いと慈悲深き神よ、敬虔なる者を傷めし毒を浄化し給え、リムーブ・ザ・ポイズン!」

 エリザベスは、全員に毒消しの魔法をかけた。そして、その細腕で何とか海斗の縄をほどいた。そして、海斗がアリシアを、アリシアがエレナの縄を、といった具合に全員の縄を解くことができた。

「エリザベス、状況を教えてくれ」

と海斗が言うと、エリザベスは、杖を持つと

「今は時間がありません。皆さんの武器が隠してある部屋まで移動しながら説明します」

と言った。海斗は

「わかった。それでは全員、その部屋まで走って行くぞ!」

と号令すると、海斗達はエリザベスを先頭に走り始めた。エリザベスは走りながら、海斗の方を向いて

「この牢獄にいる男の冒険者たちは、全てスリープの魔法で眠らせました。一方、ブラックローズの人たちは、私を探しに野外に出ています。私が見つからなかったら、ダンと打ち合わせをしようと、すぐに牢獄に戻ってくるでしょう」

と説明した。

「……確か、ブラックローズのメンバーの中にヒーラーがいたな?」

「はい、確かにいました。ブラックローズが戻ってきたら、スリープの状態異常を解こうとするでしょう。そうしたら……」

「こちらが五人に対して、敵は十一人。おまけに結衣は戦えないから、圧倒的にこちらが不利になる……」

すると、アリシアが側から

「だったら、今眠っている連中を片っ端から殺していけばすむ話だろ!」

と口を挟んできた。すると、遠くの方から、

「おい、ちょっとアンタ。眠っている場合じゃないだろう!」

と言う女性の声が聞こえてきた。

「……どうやら、敵はそういう時間も与えてくれないみたいですね」

とエリザベスは小声で話し、控え室らしき部屋の前まで来ると止まった。

「すでに扉の鍵は開けておきました。皆さん、自分の武器を持って下さい」

とエリザベスが言うと、各自自分の武器を持った。が、海斗の胸当てだけ見当たらなかった。

「……俺の胸当てがない」

エリザベスは少し考えた感じだったが、

「そう言えば、男の冒険者の中に胸当てをしている者がいました。……もしかしたら、海斗さんの物だったかもしれませんね」

 すると、男の声で

「おい、雑居房にKaitoらがいない! まだ、牢獄内にいるはずだ。アンタらも探してくれ!」

と怒鳴る声が聞こえてくる。エリザベスが

「……もう、スリープの魔法が解かれ始めていますね」

と言うと、アリシアは

「ダーリン、今はそんなことを言っている場合じゃないぞ! 敵の戦力が回復しつつある今は、武器も回収したことだし、逃げることを優先した方が良い。万が一、敵が全員回復して、この牢獄内で出くわした日には……」

と言いかける。すると海斗が

「逃げ場のない戦場で、三倍近くの兵力差の敵と戦わなければならない。……おまけにブラックローズには、魔法使いやハンターもいて、遠距離攻撃ができる」

と続けた。

 すると、レイナが

「すみません、私の矢筒ある矢も何本か抜き取られているみたいで、十本足らずしかありません……」

と言うと、エリザベスも

「私もスリープの魔法で魔素を使ってしまい、あまり魔素が残っていません……」

と言った。アリシアが

「今、戦況は限りなく、コチラが不利だ。体勢を立て直す意味でも、今は逃げた方がいい!」

と言う。

「わかった。とりあえず、牢獄を抜け出すとして、どこに向かう?」

「魔物がいて、少し危険だが、牢獄を出て東の森に逃げ込もう。途中幅の狭い吊り橋があるので、最悪、そこでなら一対一で戦うことができる」

 海斗は全員が武器を持ったことを確認すると

「よし、皆、牢獄の入り口まで走れ! 東の森へ急ぐぞ!」と号令した。

 牢獄の通路を覚えているエリザベスを先頭に、海斗達は入り口へと走る! しばらく走っていると、激しい雨音が聞こえてきた。

「入り口は近いぞ! もうちょっとだ!」

 そして、たいまつが掛けられているのだろう、入り口の形の光が暗い廊下の中でチラチラと動いていた。

「よし、入り口だ! アリシア、先頭に立って、皆を東の森に導いてくれ!」

殿(しんがり)はどうする、ダーリン?」

「殿は俺がする! 森に魔物がいたら、頼むぞ、アリシア!」

 海斗達が牢獄から出ると、入り口の側にブラックローズのメンバー一人と男の冒険者二名がいた。

「あっ、アイツら逃げやがった!」

「早よロキシーとダンに伝えんかいな!」

「俺たちは距離をおいて、あいつらを追う!」

 そう後ろから聞こえてくると、時々後ろから弓矢が飛んできた。男の冒険者の中にハンターがいた筈だ。しかし、距離があるのと、向こうも走りながらで矢を射る精度が低いようだ。海斗は当たる気がしなかった。その後、女の声で

「全知全能なる神よ、敬虔なる者達に迅速なる加護を与え給え、ヘイスト!」という詠唱が聞こえてきた。

 海斗たちは、息を切らして走る。海斗の吐く息は白く、初冬なのに背にじわっと汗がにじむ。

 十分も走っただろうか、ようやく東の森とその前にある谷、そして、今走っている道と森とを繋ぐ吊り橋が見えてきた。 

 その時である。普段走り慣れていないエリザベスが転んだ。

「エリザベス、大丈夫か」

 海斗はエリザベスの腕を取ると引っ張り上げて、エリザベスを立ち上がらせた。エリザベスの息は切れている。

「す、すみません」

「謝るのは後でいい。今は森に急ぐぞ」

 海斗は背後を見た。早い。もう十名ぐらいの敵が迫ってきている。

 アリシア、結衣、レイナが立て続けに吊り橋を渡り終える。海斗もエリザベスを前に走らせながら吊り橋を渡ろうとする。そして、吊り橋の真ん中あたりに来ると、振り返って剣を構えた。

「エリザベス、時間を稼ぐから、吊り橋を渡り終えて早く森の中に入れ」

「わかりました。海斗も急いで来て下さいね」

「了解!」

 未だ激しい雨が降り止まない吊り橋の床は滑りやすい。橋の下は今にも氾濫しそうな川だ。海斗は足下に気をつけながら、迎え撃った。狭い吊り橋なので、予想通り一対一の戦いだ。

 まずは男の剣士が向かってきた。上段の構えから海斗に向かって斜めに斬りかかってきたが、海斗は体を半身にし、相手の刃を自分の剣の刃先を滑らせるように受け流すと、そのまま下段から、相手の腹を斬った。

「うわっ」と叫ぶと剣士は橋の上に倒れた。

 倒れた剣士を踏み越えて、ロキシーが海斗に向かってきた。

「アンタらに恨みはないけれど、このままじゃ、こちらもタダ働きになるんでね。素直に捕まっていればいいものを!」

と叫ぶと、ロキシーは剣を真上に振りかぶった。

 海斗は中段で構え直すと、ロキシーは振りかぶるのを止めた。そして、いきなりしゃがんだ。

 一体何を? と思う暇なく、しゃがむ前のロキシーの胸があった辺りを矢が通過して、海斗の左の肩に刺さった。

「くっ。フェイントか!」

 不意を突かれた海斗は一瞬怯んだ。

「もーらい!」

 ロキシーは立ち上がると、剣を上段から斜めに一閃、振り抜いた。

 胸当てをしていない海斗は、左肩から胸、そして腹にかけて斜めの斬撃をまともに受けた。

 斬撃の瞬間、海斗の体から血が噴き出し、雨も混じってロキシーの顔に赤いまだら模様を描く。

 海斗は吊り橋の手すり代わりのロープに腰からもたれかかるように倒れ込んだ。

 すると、上半身が宙に浮いたまま、バランスを失った海斗の体は、頭から川の濁流へと落ちていった。


「海斗!」


 吊り橋を渡りきって、森へ入ろうかという場所から戦闘の様子を見ていたエリザベスの叫び声はむなしく雨空にかき消されていった。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。


 今回は、命がけの脱出の回となりました。

 そして、最後に海斗は思わぬ形で『死線』を越えることに。


 彼はどうなってしまうのか。

 残されたアリシアたちはどう動くのか。


 彼らの運命を見守っていただけると幸いです。


 次回もよろしくお願いいたします。

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