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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第四章 覚醒

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結衣の貞操の危機――忍び寄る悪意と潜入の巫女

 ……海斗達は猿ぐつわをされ縄で縛られたまま、牢の中で転がされていた。辺りに明かりはなく、完全に闇の中だ。

 しばらく経って、ようやく海斗の目は暗闇に慣れてきた。真正面にも鉄格子らしきものが見え、他にも監房があるらしい。かなり大きい牢獄のようだ。 

 しびれ薬の効力が少し切れてきたのか、口は動かせるようになった。

「んんん。ヴヴヴヴ」

 が、猿ぐつわを噛まされていて、うまく喋ることができない。

 すると、明かりが廊下から移動してくるのがわかった。たいまつを持った冒険者の一人が、海斗達がいる監房をのぞき込んで

「いいか、生きていたけりゃ、おとなしくしていろよ。ま、教会に渡した後、どうなるかは、知ったことじゃないがな!」

と言うと、笑いながら明かりと共に廊下の先へと消えて行った。

 言葉で意思疎通ができない。暗闇で辺りの様子もよくわからない。痺れている上に縄で拘束されていて、動くこともままならない。このまま、教会に引き渡されるのを待つだけなのか? ……教皇国まで行ってえん罪を晴らす前にこんなところで教会に引き渡されてたまるか! どうする、俺? 海斗が思考を巡らしていると──再び、廊下から明かりが近づいてきた。たいまつを手に、鉄格子越しにこちらを覗き込む影がある。


 ダンだ! 


 ……海斗は嫌な予感しかしなかった。


 一方、エリザベスは暗闇の中、光(ライト)の魔法で光量を最小限に抑えた球形の光源を足元に浮かしながら、牢獄の廊下を歩いていた。

 すると、前方から明かりが、こちらに移動してきていることを察知した。エリザベスは球形の光源を消して、暗闇の中で壁に背をつけた。息を殺して待っていると、ごつい体の男の冒険者がたいまつを持って歩いているようであった。冒険者が壁に何か違和感を覚えたのか、エリザベスが潜んでいる辺りを照らそうとしたとき、エリザベスは

「全知全能なる神よ、迷える魂たちに深淵なる眠りを誘い給え、スリープ」

と静かに詠唱した。……冒険者は力なく倒れた。エリザベスは、石造りの床に落ちたたいまつを足で踏んで消した。

「杖があれば、もっと距離をおいてスリープの魔法が使えるのですが……それにしても海斗たちは一体どこの監房にいるのでしょう?」

と独り言を言うと、再度光の魔法で光源を作って足元に浮かせながら、静かに廊下を歩いて行った……。


 エリザベスがスリープの魔法を唱えてから歩き始めて三分ぐらい経ったころ、後ろから男の野太い声が聞こえた。

「おい、どうした、お前! 目を覚ませ!」

 しまった。もう仲間が先程の冒険者を見つけてしまった! エリザベスは胸が締め付けられるような感覚に襲われた。

「たいまつの火が消えている……! まだ温かい。近くに侵入者がいるぞ! 俺は侵入者を捜すから、お前はダンに報告して来い!」

 初冬の冷気の中、エリザベスの掌にじっとりと汗が浮かんだ。冒険者がこちらに来る! しかし、幸い一人だ。何とかするしかない。

「巫女か、巫女なのか! 素直に出てこなかったら……わかっているんだろうな!」

 男の叫び声が牢獄の中で反響する。声はどんどん大きくなってくる。エリザベスは、廊下が交差しているところまで行くと、その壁に隠れ、息を潜めた。

 ……相手は走ってくる――魔法を詠唱するタイミングを間違えたら、私が先に捕まるか、殺される。思わず、冒険者に蹂躙される自分を想像した。エリザベスは思わず唾を飲み込む。やる、やるしかない。明かりがものすごい勢いでこちらに近づいてくる。

 明かりが10フェルドほど(約10メートル)まで近づいたとき、エリザベスは詠唱し始めた。

「全知全能なる神よ、迷える魂たちに……」


 他方、海斗たちの監房にダンが、右手でたいまつを持ちながら入って来た。そして、たいまつでアリシア、エレナ、そして結衣の順に体を照らすと、

「これは賞金首への『検査』だ。武器なんか持って脱獄されると困るんでなぁ」

 ダンは下卑た笑いを浮かべ、左手で顎の無精髭をさすった。

 海斗は心の中で

「縄で拘束されている俺たちが武器なんか持っているわけないだろう!」

とツッコミをいれるが、残念ながら目と口以外体は動かない。

 ダンは結衣の体のラインをなめ回すように見渡すと、にやりと不気味に笑った。ダンの視線がいやらしく上下し自然と笑みが漏れてくるのを、結衣は、猿ぐつわを噛んだ口から漏れる声と、怯えた目だけで必死に拒絶の意思を示していた。

 海斗は、結衣の方へ近づくダンを見て、心の中で叫んだ。

「やめろ、やめろ――俺の体よ、動け、動け!」

 ……ダンは、たいまつを壁の掛け具に置くと、舌なめずりをした。そして、その指先が結衣の襟元に忍び寄ろうとしていた……。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。


 海斗の無力、エリザベスの潜入、そして──結衣の危機

 果たして、結衣はどうなるのか? 暗闇の中、エリザベスは希望の光となれるのか。


 次回もよろしくお願いいたします。

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