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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第三章 エルシオン王国の巫女・エリザベス

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消された真実――陰謀と見えざる刃

 バキッ。


 廃屋の中で金属同士がぶつかる音がした――そして、トーマスが倒れた。

 アリシアが目を開くと、弾んだ声で

「ダーリン!」

と叫んだ。

 海斗の剣がトーマスの頭を兜ごと叩いていて、兜がへこんでいる。

 トーマスの体はもう白い光に包まれておらず、防御力強化魔法の効力は切れているようだ。

 海斗は

「頸動脈を狙ってもよかったが、コイツを殺したら、エリザベス、アンタと本当にどちらかが死ぬまでの殺し合いになりそうだったので、止めた」

と冷静に言った。エリザベスは

「……ずいぶんと余裕ですね。それでギルバートは死んだのですか?」

と感情を抑えたように尋ねた。海斗は

「いや、まだ生きている……」

と言いながら、自分の腕を見た……。


 海斗の刃はキルティングの襟が裂け、人の肌に到達したが、ギルバートはさほど出血せず軽傷だった。海斗は剣を投げ捨てると、灰で視覚を失っているギルバートの背後に回り、腕を首に回した。

……一瞬、武道場の畳の感触が頭をよぎる。


「頸動脈を圧迫すれば、数秒で意識が落ちる。でも、決してやるなよ、お前ら!」


 柔道の授業で、体育の先生がそう言っていた。

「……まさか、こんなところで役に立つとは」

 ギルバートの体が力を失い、膝をついた。


「……そうですか、まだギルバートは生きているのですね。……ありがとうございます」

 エリザベスはため息をすると、覚悟を決めたように

「それで、私をどうします? カリスト様のように斬りますか?」

と言った。

「それでは、君の護衛の兵を殺さなかった意味がない……」

 海斗はそう言うと、ためらいなくエリザベスの方へと歩み寄り、エリザベスの目を三秒間見つめた。その間、エリザベスも目を閉じなかった。

「……悪いけど、エルシオン王国の関所を抜けるまで、人質になってもらう」 

 するとエリザベスは、

「いいえ、あなたたちの旅が終わるまで、あなたたちに付いていきます。あなたの、厄災を引き起こす魔法を使わせないように……」

と言った。海斗は

「ひょっとして、わざとチャームのスキルにかかったのか?」

と尋ねた。

 エリザベスは、頬を少し赤く染めながら、海斗の目を見ないように言った。

「……王族って、いろいろ面倒なんです。だから、こういう言い訳が必要で……」

 すると、海斗は

「……わかった。そういうことなら、護衛の兵が君を引き留める前に、ココを去るぞ」

とアリシア、エリザベスに向かって言った。しかし、エリザベスは

「その前に、命に別状がない程度にカリスト様を回復させて下さい。お願いします」

と語気を強めて言った。海斗は

 ……わかった。あくまで戦闘不能の状態にまで留めておくのが条件だ」

と答えた。アリシアは

「ダーリン、本当にいいのか?」

と反対するように言った。

「大丈夫、今、エリザベスはチャームのスキルにかかっている状態だ。俺の言葉には逆らえない筈だ」

 エリザベスは、そのやり取りを見て、カリストの側まで行くと

「それでは、回復させていただきます。……いと慈悲深き神よ、敬虔なる者の傷を癒やし給え、ヒール!」

と唱えた。海斗が仰向けにすると、カリストは意識が戻っており息も絶え絶えに何か言おうとした。

「……エリザベス君、無理な命令を……出して、すまなかった……。なぜ、あんなことを言ったのか……自分でも、よく、わからない……」

 エリザベスは

「カリスト様、無理に今、喋らないで下さい。お傷に障ります……」と(いたわ)るようにささやいた。

「いえ、あなたに伝えておかなくてはいけないことがあります……あの方に会ってから、何かが変わった気がするのです。自分が、自分でないような……」

 エリザベスは、

「一体、誰に会ってから、そうなられたのですか?」

とカリストに聞き返したときであった。外から多数の光の矢がカリストめがけて飛んできた。

「危ない!」

 海斗はエリザベスを抱くと、廃屋の床を転がって、カリストから離れた。

 多数の光の矢がカリストに刺さっていて、カリストはもう息をしていなかった。

「カリスト様!」

 エリザベスはカリストに向かって手を伸ばすが、海斗がそれを許さない。海斗が光の矢の飛んできた方向を見ると、巫女の白装束を着た女が他の廃屋の二階から身を隠した。

「エリザベス、今の女を追うぞ! アリシア、悪いがトーマスの身を拘束しておいてくれ!」

と海斗は叫ぶと、エリザベスの手を取って廃屋の階段を下り始めた。


 ――海斗とエリザベスが、女がいた廃屋まで来ると、先程の巫女と思われる女の身に光の矢が刺さっていて、女は息をしていなかった。

「セラさん!」

 エリザベスの声が震えた。

 海斗はその様子を見て、静かに尋ねた。

「……知り合いか?」

「はい、カリスト様と会議を共にする際に、私を呼び止めた巫女です」

 それを聞いた海斗は淡々と

「……恐らく、カリストを殺したのは、この女だろう……。そして、自分も殺された……。きっと口封じのために」と述べた。エリザベスは涙を流しながら

「一体誰が、こんなむごいことを……」

とへたり込んだ。

「ローレンシア教関係者の中に、俺を殺すのに手段を選ばない奴がいるんじゃないのか。そして、自分の正体がばれるのを極度に恐れている――あくまで俺の考えだが」


 ……そして、エリザベスは涙を拭い、静かに立ち上がった。真実を確かめるために。


 北風が、何事もなかったかのように海斗たちの頬をそっと撫でていく。

 瓦礫の間から生えていた花だけが、静かに揺れていた。

 今回もお読みいただきありがとうございました。


 カリストとセラ、二人の死が示すものは何なのか。

 そして、エリザベスの「真実を確かめる」という決意は、教会の闇を照らすことができるのか。


 次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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