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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第三章 エルシオン王国の巫女・エリザベス

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戦いの幕開け――迫る索敵、潜む罠

 しばし考えた後、海斗は決断した。

「よし、この世界の事情を知っているアリシアと結衣の意見が同じなんだ。少し博打に近いかもしれないが、エルシオン王国軍は少数精鋭で来る。それを前提として戦略を練る。それでアリシア、少数精鋭って、具体的には何名ぐらいだと考えればいい?」

「……そうだな。隠密裏に動くなら、多くて二十名、少なくて七、八名ってところだろうな。それ以上になれば、ティリアス帝国に『これは騎士が領地の見回りをしているだけです』なんて言い訳は通らなくなる。軍事行動と見なされて、兵を動かした理由を探られる可能性が出てくる……」

 海斗はもう迷わなかった。

「わかった。その数なら、この廃墟で迎え撃つ。戦略の基本線は、罠を仕掛けるのと、各個撃破だ。では、これから罠を仕掛ける。皆、知恵と手を貸してくれ……」と言うと、相談を始めた。


 次に、海斗達は使える物資がないか、手分けをして廃墟を探していた。二十分ほど探した後、結衣が備蓄倉庫らしき建物を見つけた。倉庫の中には、元々は粉末化した薬草が入っていたのか、人の掌ぐらいの大きさの布袋が複数枚とシャベル二本が入っていた。


 レイナは壊れた壁に両脇を囲まれた道路に、砕けた陶器の破片を横に並べた。

 結衣は備蓄倉庫らしき建物から先程の袋を持ってくると、薪を燃やした後に残った灰と砂を詰め始めた。

 アリシアと海斗は、シャベルを使って、土の道に穴を掘り始めた。

 最後に海斗は、石畳がなくなって、土が表面に出ている道を探すとわざと足跡をつけた。そして、その先の建物の角地にアリシアから借りた兜に木の棒を入れ、マントを括り付け、わざと半分見られるように設置した。


 一方その頃、セレスティア宮殿では、エリザベスはティリアス帝国に気づかれないように少数精鋭でKaitoを討伐するという王命に頷きながらこう答えた。

「わかりました。Kaitoらは四名のパーティだと聞いております。しかも一人は非戦闘員だとか。トーマス、ギルバート、魔法兵を含めた『十五名の近衛兵』を私にお貸し下さい。兵力が五倍なら、チャームのスキル持ちがいるとは言え、きっと討ち果たすことができるでしょう――兵法書を少しかじったことがある、初心者の意見ではありますが」

 王は少し安心したようで

「よくぞ言った! それでこそ我が娘だ。派兵する人選はお前に任せる。国の名誉のため、アンナベルの(かたき)を討ってこい!」

と命令した。


 王命を受けてから6リスタ後(約6時間後)エリザベスは出陣間際だった。最後にトーマスは編成に関して

「エリザベス様、本当に魔法兵は一人でいいのですか?」と聞いてきた。

「構いません、トーマス。魔法兵は一人で十分です。敵は剣士二人にハンター、非戦闘員。近接戦闘主体の構成です。魔法兵は詠唱中が最も危険。守る兵を増やす方が合理的です。私は守りを優先して、まずは負けない陣を敷きたいのです」

 トーマスは納得した様子で、

「わかりました、エリザベス様。もう、いつでも出撃できます。エリザベス様は私と共に騎乗して下さい」

と言った。

 エリザベスは、トーマスの馬に乗ると、号令をかけた。

「教会の情報によると、Kaitoらは、廃墟の街・ソドラに潜んでいるとのことです。直ちにソドラに向かいます!」

 それにしても、どうして教会はこんな迅速にKaitoの情報を手に入れられるのだろう? まるで、誰かがKaitoらを尾行しているようだ……。 

 しかし、今はともかくアンナベルお姉様の『魅了』の状態を正常化するには、Kaitoを殺すしかない。

 エリザベスは、教会に対して疑念を抱いたまま出発した。

 

 エリザベスたちは万が一、Kaitoらが廃墟を出て、夜襲を仕掛けてこないかを考慮してソドラから離れた場所で野営した。そして、朝食を取った後、ソドラに向けて出発した。

 ソドラの廃墟が視界に入るようになった時、正面の廃墟から煙が上がっているのを確認した。エリザベスは

「トーマス、あれは狼煙でしょうか?」

と尋ねた。トーマスは

「自然発火は考えにくいです。狼煙かどうかは断定できませんが、我々を見張っている者がいる可能性は高いと思います。もし狼煙であれば、南下してきた我々を確認したのを味方に知らせるためではないか、と推察できます」

と答えた。

「そうですか……。それで私たちはどこで駐留します?」

 トーマスは地図を広げると

「廃墟だけあって、狭い路地や崩れかけた建物など死角になる場所が多いです。ゲリラ戦を企ててくると思われるKaitoらには有利な地形です。唯一、辺りを見渡せるのは、町の中央にある八角形の広場です。が、中央にあるので、八方どこからでも攻撃される可能性があります。エリザベス様、廃墟の外で駐留した方が安全です」

と進言した。

「それは構いませんが、Kaitoらを近衞隊の皆さんに索敵してもらいます。その報告を受けるには、中央の広場の方が便利ではないでしょうか?」

「うーん、ではこうしましょう。昼間報告を受ける際には中央の広場に陣取り、夜になったら廃墟の外で野営をする、ということでどうでしょうか?」

 エリザベスは頷くと、

「わかりました、それでいきましょう」

と答えた。


 エリザベスと、十五名の近衛兵(トーマス、ギルバート、魔法兵を含む)は廃墟の八角形の広場に陣取ると、昼食を取った。エリザベスは、自分と近衛兵十五名を四人ずつの四組に分け、三組を索敵班として廃墟に送り出すことにした。そして、索敵に出ない四名(エリザベス、トーマス、ギルバート、魔法兵)は、索敵班の報告を受けるため広場で待機することにした。

 エリザベスは

「これから皆さんに担当する地区でKaitoのパーティの居場所を索敵していただきます。一班を四名にしたのは、Kaitoたちと戦闘に陥った時に数的優位を保つためです。ただし、この作戦の最優先事項は、発煙筒でKaitoらの居場所を味方に知らせることです。次に優先されるのは、味方の増援が来るまで敵を足止めすることです。ですから、増援が来る前に無理な戦いは避けて下さい。Kaitoらの思うつぼです。……ここまでが指揮官としての指令です。矛盾するかもしれませんが、私個人のお願いとしては、皆さん必ず生きて帰ってきて下さい。皆さんの帰りを待っている家族や友人、恋人の方々がいらっしゃるのですから……」

と作戦の説明およびお願いを述べた。

 続いてトーマスは

「それでは各班、索敵始め!」

と号令した。

 散っていく近衞隊の各々の兵士の背中をエリザベスは見つめた。


 廃墟ソドラに、静寂を破る足音が響いた――かくして戦いは、始まった。

 今回もお読みいただきありがとうございます。


 Kaitoを殺す覚悟を決めたエリザベスが率いる近衛兵たちが、ソドラへ進軍。


 近衛兵の索敵と、廃墟に潜む罠。


 海斗はこの戦いで生き延びることはできるのか。


 次回、いよいよ戦闘が始まります。


 お付き合いいただければ嬉しいです。

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