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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第三章 エルシオン王国の巫女・エリザベス

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拉致――王宮に広がる疑惑

大司教姿の高齢の男は呪文の詠唱を終えると、巫女に命令した。

「……助祭達がすぐに来ます。彼らにこの者を廃屋にまで運ばせなさい。そして、私が良いと言うまで、廃屋の部屋に幽閉しておきなさい。いいですね」

「わかりました、カリスト様。全ては神の御心のままに……」

 巫女のその言葉を聞くと、カリストはギルバートを見ながら少し不敵な笑みをこぼしてささやいた。

「今、君が王宮に行ってもらっては、我々の計画に支障をきたすのだよ……。いかんいかん――早く会議に赴かなくては」

と老体を揺らしながら、小走りで現場を立ち去った。


 エリザベスは奥の間で待っていると、息を切らせたカリストが部屋の中に入ってきた。

「まあ、カリスト様、ご無沙汰をしております。」

とお辞儀をしながらエリザベスが言うと、カリストは

「やあ、エリザベス君も、元気そうで、何よりですね」

と息を切らせながら挨拶を交わした。

「詳しい互いの近況報告は会議の後で……」

と言うと、中央の席まで行き、立ちながら

「皆さん、お待たせして申し訳ございません。すぐに会議を始めましょう」

と司会進行を始めた。


 ……会議の最中エリザベスにとって衝撃的だったのは、エリザベス同様、三名の巫女もKaitoと似た少年が異世界へのトンネルを作る魔法を操っていた神託を授かっていたことだった。

「やはり、私が授かった神託は――間違っていない」

 エリザベスはそう確信した。すると、Kaitoへの対応についての議題に変わった。議長のカリストは

「それでは、実際にKaitoとYuiに会ったことのあるエリザベス君から、Kaitoの現状についてお話をしていただこうと思います」

とエリザベスが話すよう促した。エリザベスは小さくコホンと咳払いをすると静かに立ち上がった。

「現状のKaitoについてですが、本人の話では魔法の教育を受けておらず、私が感じた彼の魔力も……」


 一方、奥の間の外で待たされているトーマスは涙を目に溜めながら、いかにも暇そうにあくびをした。

「一体、いつまでやるんだ、この会議……」

 窓のない回廊は薄暗く、頼りになるのは、ろうそくの火だけで、今が夜なのか、朝なのかもわからなかった。

 夕方から飲まず食わずで護衛をやらされているトーマスが、小用を足しに行ったのは、一度や二度ではない。いい加減勘弁してくれと思いながらも

「いくらギルバートが伝令に行ったとはいえ、これだけ帰りが遅いとアンナベル隊長や王様も心配するぞ……」

と心配も募る。

 できるものなら、奥の間の扉を開いて、会議はいつになったら終わるのか確認をしたい欲求に駆られる。が、教会内でも内々の会議らしいので、扉を開ける勇気をトーマスは持ち合わせていなかった。それに音を遮断する魔法が奥の間に施されているのか、全く中の様子はわからない。

「……仕方がない、もう少し我慢してみるか……」

と独り言を言うとため息をついた。


 他方、王宮ではアンナベルが王の間に呼び出されていた。アンナベルが王宮の間に入ると、エリザベスの侍女・セリーナが暗い顔でうつむいて、玉座にいる王の対面に立っていた。アンナベルは嫌な予感しかしなかった。ともかくセリーナの隣にまで歩くと、アンナベルは王の前で片膝をついて頭を下げた。王はすかさず

「アンナベル、エリザベスが賞金首と秘密裏に会うことを知っていたと言うのは本当か?」

と詰問してきた。

 アンナベルはセリーナの表情を窺った。うつむいて青白くなっていたセリーナの顔を見て、これは洗いざらい事情を喋ったな、と悟った。

「はい、エリザベスが賞金首・Kaitoに会いに行くと聞いていたのは事実です」

 王は顔を真っ赤にして

「どうして止めなかった!」

と一喝した。

 アンナベルは

「エリザベスは、Kaitoに関する神託を授かって悩んでいました。何でも、Kaitoに似た少年が異世界へ通じるトンネルを作る魔法を唱えると、災厄が起こると……」

 王はさらに厳しい口調で

「言い訳はいい――王族が賞金首それも宗教異端者と接触するなぞ前代未聞の出来事だ。そのことを黙っていたお前らにも責任があるぞ、アンナベル、セリーナ!」

と怒鳴った。

 アンナベルは床を見ながら、返す言葉が見つからなかった。王は続けて

「……それに、王宮内にエリザベスはKaitoに拉致されたという噂が流れている」

と少し怒りを抑えた口調で言った。

 アンナベルは思わず顔を上げると

「まだ、エリザベスがKaitoに会いに行って一日も経っていません。それは本当のことですか? 噂の情報源はどこですか?」

と王に尋ねた。

「それについては、現在調査中だ……。アンナベルよ、今からエリザベスの捜索を命じる。近衛兵の半分を出動させても構わぬ。Kaitoらを見つけて、エリザベスの居場所を聞き出せ。拷問もやむを得ぬ。罪を雪ぎたければ、速やかにエリザベスを見つけ出せ。いいな!」

 アンナベルは

「ははっ」

と言うと頭を下げた。

「セリーナの処分については、追って沙汰する。いいな、二人とも!」


 王宮を出ても、セリーナの顔色は青白いままで涙が頬に滲んでいた。

 王宮を出たアンナベルは近衛隊の一人に

「今回の噂の情報源を調べさせろ。それと副隊長を呼んでこい!」

と命令すると、自らは厩舎へと向かった。


「エリザベス様! どこにおいでですか!」

「エリザベス様!」

 近衛兵たちの叫び声が雨の中、夜が明けかかっているセレスティアの街に響く。軍馬に乗ったアンナベルは、近衛兵たちに

「KaitoやYuiは仮面を着けている、との情報が冒険者ギルドから届いている。仮面を着けている者がいたら、誰彼構わず仮面を取らせて素顔を確認しろ!」

と号令した。

 そして、捜索を続けてしばらくした後、近衛兵の一人がアンナベルに報告した。

「ただいま捜索隊の一人から、仮面を着けている男女二人にその他剣士とハンターらしき女の四人組が町外れで見つかったとの報告がありました。いかがされますか?」

「素顔は確認したのか?」

「いえ、それが、女剣士がやたらと強く、実力行使ができないとのことです!」

「わかった、私が現場に赴く。それと副隊長にも報告して、現場周辺を囲んで逃げられないようにしろ」

とアンナベルは命令した。近衛兵が副隊長を探しに行くのを見届けると、アンナベルは目撃をした者に道案内をさせた。


「ダーリン、ヤバいぞ。一人取り逃がした。きっとこの場所に兵を呼んでくるぞ」

とアリシアは小声で、しかし、はっきりとした口調で言った。海斗は

「では、どこに逃げる? ヴァルディス公国への関所を目指すのであれば南だが?」

と思案した。

「それにしても、エリザベスは酷いわね。人に親書を渡して油断させておいて、追討の兵を出すなんて……」

「結衣、泣き言は後だ! 今は生きのびる方法を考えなくては!」

と海斗はたしなめた。

 アリシアは

「今は裏路地に隠れて、兵が過ぎ去った後に南下する方がいいと思う。……あくまで見つからなかった場合の話だけどね……」

と提案した。

「よし、すぐに移動しよう――貧民街の路地まで走るぞ!」

と、海斗は小声で号令した。

 四人は走った。しかし、二、三分走ったところで、背後から馬の蹄鉄が石畳の路面を叩く音が近づいてくると、馬上から女の声で

「そこの四人、止まれ! 止まらないと、問答無用で攻撃するぞ」

との叫び声が背中越しに聞こえた。

 ……海斗達は走るのを止めて後ろを振り返ると、鎧姿の女騎士がコチラを睨んでいた。そして、

「そこの二人、仮面を取れ!」

と一方的に命令してきた。しばし沈黙が続いた。


「どうした、仮面を取れというのがわからないのか? わからないと言うのなら、実力行使をするまでだ!」


 剣の柄を取ったアリシアを手で制して、海斗は仮面に手をかけた……。

 今回もお読みいただきありがとうございます。


 それぞれの思惑が交錯し、誤解がさらに深まる回となりました。王宮では「拉致」の噂が広がり、アンナベルと逃走中の海斗が対峙する結果に。果たして、海斗とアンナベルは「対決」するのか――それとも……。


次回も読んでいただければ嬉しいです。

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