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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第三章 エルシオン王国の巫女・エリザベス

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秘密会議――教会内で蠢(うごめ)く影

 王宮への帰りがけに、エリザベスは背後から呼び止められた。

「そこにおられるのは、エリザベス・ヴァレリア様ではないのですか?」

 エリザベスらが振り返ると、エリザベスと同様の巫女装束の女が頭を下げた。

「確かに私はエリザベスですが、あなたは?」

 女は再度頭を深々と下げると

「失礼を致しました。私、セラ・ノエリアと申します。セラとお呼び下さい。大司教カリスト・ヴェルディア様の下にて、日々奉仕の務めを果たしております」

と答えた。

 カリスト・ヴェルディアの名前を聞くと、エリザベスの表情は、ぱっと明るくなった。

「まあ、あのカリスト様の下で……。私もまだ巫女見習いだった時、カリスト様にご指導いただいたことがあるのです。カリスト様はお元気ですか?」

「はい、変わらずお元気に活動されております。現在は異端審問官も兼ねておいでです」

「……そうですか、異端審問官も」

 エリザベスは『異端審問官』の言葉に何か嫌な予感を覚えたが、表情には出さなかった。

「それで、私に何用でしょう?」

「はい、そのカリスト様から『宗教異端者のKaitoとYuiへの対応を協議する会議に出席して欲しい』との依頼をお伝えに参りました」

「……私が、ですか?」

「そうです。Kaitoに唯一直接お会いになった経験のあるエリザベス様のお話を是非とも伺いたいと……」

 エリザベスの胸はざわついた。かつてセリフィアでKaitoらと会ったことも今日の話し合いもアンナベルにしか打ち明けていなかったからだ。どうして、そのことを教会は知っているのだろう? ここは参加しないとかえって怪しまれると判断したエリザベスは

「わかりました。そういうことなら、喜んで出席させていただきます。それで会議はいつ行われるのですか?」

と聞いた。

 セラは少し申し訳なさそうな顔をして

「それが今すぐ開始するとのことなのです。急遽(きゅうきょ)エリザベス様から話を聞こうということになったもので……」

 エリザベスは少し考えたが、今日は神殿にて礼拝する以外に用事がなかったので

「わかりました。会議に参加させていただきます……ギルバート、宮殿および神殿に帰りが遅くなることを伝令に行って下さい。よろしいですか?」

と命令した。

 ギルバートは

「わかりました。すぐに行って参ります。それで、私は再度エリザベス様のもとへ帰ってきた方がよろしいでしょうか?」

と聞いてきたので、エリザベスはトーマスの方へと向き直し

「トーマス、あなたの都合は大丈夫ですか?」

と尋ねた。

 トーマスが

「ギルバートが、アンナベル隊長に、私も護衛のため帰るのが遅くなることを伝えてくれれば、問題はないと思います」

と答えたのを聞くと、エリザベスは

「だったら、護衛はトーマス一人で問題ないでしょう。ギルバートは軍務にお戻りなさい」

と言った。

 エリザベスは、伝令しに行ったギルバートの背を見送ると、セラの案内にしたがって市道を歩いて移動した。十五分も歩くと、目の前に町外れの小さな教会が現われた。巫女であるエリザベスも来たことがない教会であった。

「ずいぶん、こぢんまりとした場所で会議をするのですね」

 セラは頷くと、

「はい、今回の会議は教会内でも秘密裏に行われるものですので」

と淡々と答えた。

「それだけ、Kaitoの案件は、教会にとって重要事項ということですか……」

 セラが教会の扉を開けて、エリザベスが教会の中に入ると少しかび臭く感じた。

 セラはエリザベスを教会の奥へと導いた。礼拝堂を抜け、信徒の目に触れない回廊を進んだ先にあったのは、聖職者のみが立ち入ることを許された「奥の間」だった。エリザベスは、奥の間の外で待機するようトーマスに指示をした。

 そこでは、三名の巫女と数名の司教たちが静かに席に着いていた。ただ、中央に位置する席は空いていた。

「カリスト様は所用があって、まだ、ここに着いておりません。しかし、すぐに用事を済ませていらっしゃるでしょう」

とエリザベスに伝えると、セラは奥の間を出ていった。


 ギルバートは王宮に向かって小走りで移動していた。初冬とは言え、革の胴衣を着て走っていると汗で体が蒸れて、少し気持ち悪い。早く伝令を済ませて、近衛隊に戻ろう。ギルバートはそう思って人通りの少ない脇道を走っていると、道路の端にうずくまっている巫女装束の若い女を見つけた。

「その……そこの巫女さん、大丈夫ですか?」

と言うと、ギルバートは巫女の方へと近づいていった。

 巫女は道路に片膝をつき顔を伏せながら

「……大丈夫です。ですが、できたら背中をさすっていただけないでしょうか?」

と小声で言った。ギルバートは

「まさか、二日酔いとかじゃないですよね……。ハハハ、冗談です、冗談」

と軽口を叩きながら、若い巫女の背中をさすろうとした。

 その時であった。ギルバートは背後で呪文を詠唱する声を聞いた。


「全知全能なる神よ、迷える魂たちに深淵なる眠りを誘い給え、スリープ」


 すると、ギルバートの膝が崩れ、身体は力なく道路に伏せた。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 エリザベスが呼び出された『秘密会議』と、ギルバートを襲った突然の魔法。

 教会の中で何が起きているのか──そして、エリザベスの選択はどのような波紋を広げるのか。


 静かに動き始めた影は、やがて王都を巻き込む混乱へとつながっていきます。


 次回もぜひお付き合いください。


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