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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第三章 エルシオン王国の巫女・エリザベス

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賞金首との約束

 エリザベスは、急いでトーマスたち二人を後ろに下がらせると

「待って下さい、今日は話し合いに来たのです。決して捕まえに来たのではありません」

と、誤解を解こうとするように言った。

が、Kaitoは

「……本当ですか? 一体何の話し合いというのですか?」

と疑い続けている様子であった。

エリザベスは続けて

「以前申し上げたように、私はローレンシア教の巫女です。日頃神殿に行って、お祈りを捧げると共に、時によっては神託を授かる場合もあります……」

と、Kaitoらに自分が授かった神託の説明をした。


「……つまり、何ですか。俺がいずれ、異世界に通じるトンネルを作る魔法を習得して、この世界とトンネルの先の世界に災厄をもたらす、と」

 Kaitoはそう言いながら、剣を鞘にしまった。

「そういうことです。私はあなたに、その魔法を使わないよう警告しにきたのです」

 しかし、Kaitoは首をひねって

「すぐには信じられないですね、そんなこと。魔法の一つも使えない俺が、そんな大それた魔法を習得できるとは思えない――そもそも、そんなことができる魔力が俺にあるように見えますか?」

と半ばあきれた様子だった。

「……見えません。というか、巫女である私は、他人の魔力の大きさを感じ取る能力があるのです。そんな魔力はありません。……少なくとも今のあなたには」

「ですよね。顔が俺にそっくりの他人の話ではないのですか?」

「その点も考慮して、あなたに会いに来たのです――ところで、あなたは、魔法の教育を受けたことはありますか?」

「受けていたら、今ごろ初級魔法の一つや二つ、使えるようになっていますよ。今は、刺客から逃げ回ることで手一杯で、そんな余裕はありません」

 エリザベスは頷くと

「やはり、そうでしたか。ですが、できることなら、この場で約束をして欲しいのです。その魔法を使わないと」

とお願いをした。

「……わかりました。今後俺たちに付きまとわないという約束をしていただけるのなら、そのような魔法を習得しても使わないと約束してもいいですよ。ただし、俺たちの生命が危険に(さら)された場合を除いて、ですが」

 復唱するようにゆっくりと言った。

「生命が危険に晒された場合を除いて――ですか」

 エリザベスはしばし目を閉じて、考えをまとめた。そして、口を開いた。

「わかりました。今後、付きまとわないと約束しますので、あなたも先程の約束を守ってくれますか? 本来なら、あなた方が危険に遭わないようにエルシオン王国で保護したいところですが、さすがにローレンシア教の巫女である私が、宗教異端者をかくまう訳にはいきません」

 Kaitoは納得した表情で

「で、しょうね」

相槌(あいづち)を打った。

 エリザベスは続けて

「私ができることは、この国から安全に出国できるよう手配をするぐらいです」

と言うと、トーマスに封書を持って来させた。

「これは、私が書いた親書です。これを関所の検問でお見せなさい。これを見せれば、エルシオン王国からどこの隣国にでもスムーズに出国できるでしょう……」

 海斗は少し冷笑しながら

「ようやく納得がいきましたよ。要は、その大それた魔法を俺が使うにしても、エルシオン王国内でやってもらうのは困る、と。よそで使う分には知ったことではないということですか?」

と言った。

 海斗のぶっきらぼうな受け答えに、トーマスは

「さっきからおとなしく聞いていれば、乱暴な言葉遣いに加えて、その不遜な態度。その口の利き方、慎め!」

と、Kaitoに向かって怒鳴った。

 エリザベスは手でトーマスを制して

「いいのです……トーマス。全くそういう意図がないとは言い切れないのですから」

と言った。

 さすがにKaitoも少し言いすぎたと反省したようで

「先程は言い過ぎました……約束は守ります。そして、お互い会うのはこれで最後です。それでいいですか?」

と確認した。

「私も約束は守ります。ただし、教会からの手配については、私では何ともしようがありません……無事を祈っています。その魔法を使って欲しくないので……」

「……親書については、ありがとうございます。この宿を今すぐ引き払って、出国することにします。あなたがここに来たということは、教会にもこの場所は既に知られているということでしょうから――」

 KaitoとYuiの背がギントウ館の扉の向こうに消えたあと、エリザベスはしばらくその場に立ち尽くした。

「本当にこれでよかったのだろうか? 本当にこれで大丈夫なのだろうか?」

 エリザベスの胸のざわめきはしばし続いた。

 ――ローレンシア教のブローチをつけた巫女装束の女が、路地裏からこのやりとりの一部始終を見つめていたことも知らずに……。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 エリザベスとKaitoは、互いの立場や不信を抱えながらも、ようやく言葉を交わすことができました。  

 しかし、二人の思惑が交錯する中で、教会はどのようにして『詳しすぎる情報』を得ているのか── そして、彼らのやりとりを密かに見つめていた『もう一人の存在』。


 エリザベスの今回の行動が周りを巻き込んで、思いもよらない波紋を広げていきます……。


 次回もぜひお付き合いください。


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