Kaitoとの再会──運命と交錯する思惑
エリザベスは、王都・セレスティアの宮殿内にある居室で、近衛兵ギルバートからの報告を受けていた。
「それで、冒険者ギルドには、Kaitoらの目撃情報はありましたか?」
「はい、関所から王都へ向かう途中の平原で、Kaitoと他三名が魔物狩りをしていたとの目撃があったようです」
「……それは、関所からの報告と一致していますね。おそらくKaitoらは、このエルシオン王国に入国しているのでしょう……。問題は、今エルシオン王国のどこにいるか、ですが……」
そのとき、侍女のセリーナが口を開いた。
「エリザベスお嬢様、教会からの情報ですが、今朝Kaitoらと思われるパーティが王都に入り、ギントウ館という宿屋に泊まる予定だということを確認した、とのことです」
「……やけに詳しい情報ですね。どうしてこんな具体的な情報を教会は手に入れられるのでしょう?」
「お嬢様、どうしますか? ギントウ館でKaitoらを待ってみますか?」
エリザベスは、教会の詳細すぎる情報に内心、少なからず違和感を覚えた。だが、関所での通過記録や目撃情報と矛盾はなく、今はそれ以上深く考えるべきではないと判断した。
「わかりました。ギントウ館まで行ってみましょう。Kaitoらを警戒させぬよう、同行者は最低限に抑えます。ギルバート、アンナベルお姉様に、あなたとトーマスを随行させてもらえるよう、エリザベスが秘密裏に要請していると伝えてくれますか?」
ギルバートは敬礼をすると
「承知しました。すぐにアンナベル隊長へお伝えに参ります!」
と言って、エリザベスの居室を出た。
「エリザベス様、本当に護衛が私とギルバートの二人で大丈夫ですか?」
近衞隊の訓練中から呼ばれてきたトーマスは、出発前に不安を吐露した。
「大丈夫です、トーマス。報告によれば、KaitoらのパーティはKaitoを含めて四名だとか。そのうち一人は非戦闘員との情報が教会から入っています。つまり、戦闘ができる人数だけなら、五分と五分です。それに戦いに行くわけではありません。再度会ってみて、異世界に通じるトンネルを作る魔法を使わないよう警告することと、Kaitoの魔力の大きさを再確認するためです。問題ありません」
と、エリザベスは諭すように言った。
しかし、それでもトーマスは
「本当に話し合いで済めばいいのですが……。万が一戦闘になって、エリザベス様の身に何かあれば、我々はアンナベル様に顔向けできません」
と心配そうに言った。エリザベスは
「前回会ったとき、Kaitoは自分を庇った少女の傷が癒えたとわかると、涙を目に溜めて彼女を抱きしめていました――悪人ではないと思います。それに私が感じた、彼のオーラも邪悪なものではありませんでした。彼や仲間たちの生死がかかっているのであればともかく、私は戦闘になることはない、と思っています。いや、戦闘になんかさせません」
ときっぱりと言った。
「しかし、もしKaitoがエリザベス様の警告に従わない場合は……」
「……その時は仕方がありません。ただし、討伐する場合でも日を改めて戦うことになると思います。幸い、教会からKaitoらの詳しい足取りの情報は入ってくるので、逃がすことはないでしょう」
「……わかりました。そこまでおっしゃるのであれば、私とギルバートは命をかけてエリザベス様をお守りします」
エリザベスは頷くと、
「それでは、ギルバート、ギントウ館までの道案内をよろしく頼みます」
と護衛二名を引き連れ宮殿を後にした。
ギントウ館近くの路地に隠れていたエリザベスらは、仮面姿のKaitoと同じく仮面姿のYuiがセレスティアの市場の方向からギントウ館に戻ってくる姿を確認した。Yuiは、焼き貝柱の串を右手に、肉の塊の串を左手に持ち、交互に頬張っている……。Kaitoが
「また、無駄遣いをしていると、アリシアに小言を言われても、俺は知らないぞ」
と言うと、Yuiは少し頬を膨らませながら
「知らないわよ、あの吝嗇剣士の言うことなんか! 私はね、食べることが生きがいなの。食べたいものを食べられない人生なんて、生きている意味がないわ!」
と口を尖らせて言った。
二人がギントウ館に戻ってくるのを見計らって、エリザベスは路地裏から出て来て、背後からKaitoに声をかけた。
「Kaito……いえ、カイル、久しぶりですね……」
Kaitoは振り返ると、エリザベスたちに対して剣を抜こうとした。YuiはKaitoの背に隠れて、Kaitoに小声で
「この人、セリフィアで会ったエリザベスさんよ……」
と耳打ちした。エリザベスは雰囲気を和らげるように
「カイル、今日は用事があって会いに来たのです」
と言ったが、海斗は
「……悪いのですが、あなたが教会の代表として俺たちを捕まえに来たのではないかと疑っています。『次会うときはどうなるか、わからない』という言葉も気になっていたので」
と剣を構えた。
Kaitoの好戦的な態度に、トーマス、ギルバートはエリザベスの前に出ると槍を構えた。
エリザベスは、空気が一瞬で張り詰めたことを感じ取った。誰かが一歩でも踏み出せば、剣と槍が火花を散らす――そんな嫌な予感が脳裏に走った。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
エリザベスはKaitoを信じたい気持ちと、巫女としての使命の間で揺れ続けています。
そして再会の瞬間、状況は一触即発の緊張へと傾きました。
二人の思惑がどのような結末を迎えるのか──そして、教会はどのようにして『詳しすぎる情報』を手に入れているのか。
第三章はここから本格的に動き出します。
次回もぜひお付き合いください。




