切迫した対峙の果て――アンナベルの決断
海斗は静かに仮面を取った。そして、海斗に促されて結衣も仮面を取った。
女騎士は小声だが怒気を含んだ物言いで
「……やはり、お前ら、KaitoとYuiなのだな。私の名は、近衞隊隊長・アンナベル。一度しか言わないからよく聞け! ……お前らエリザベスをどこにやった!」
と詰問した。
海斗は
「……何の話だ? 宿屋の前でエリザベスと交渉し終えた後の彼女の足取りなど知らない!」
と答えた。
アンナベルは
「……それは本当か? 本当なら、その証拠を見せてみろ!」
と怒鳴った。
結衣は
「そんなものあるわけないでしょう! エリザベスなら、交渉を終えて私たちが宿屋に入った後には、もういなくなっていたわよ!」
と答えるが、当然アンナベルは納得した顔を見せない。そこへ新たな歩兵が槍を持って息も絶え絶えにアンナベルのもとへ走ってきた。
「す、すみません、アンナベル、さ、ま。ようやく到着致しました」
アンナベルは歩兵に、
「ここは私が時間稼ぎをする。お前は副隊長にこの場所を知らせ、辺りを包囲するよう伝言しろ」
と命令した。
「わ、わかりました」
と歩兵が答えている最中だった。アリシアは投げナイフを立て続けに二本放った。一本は歩兵の喉元へ、一本はアンナベルが騎乗していた軍馬の腹に刺さった。歩兵はナイフを抜こうとしたまま道路に倒れ、馬は前足を大きく上げると暴れてアンナベルを落とすと元来た道の方へ走り去っていった。落馬したアンナベルは怒りを露わにして
「……やってくれたな! この不意打ちの代償、高くつくと思え!」
と叫んだ。そして、すぐさま剣を抜いて上段の構えから、アリシアに向かって突進してきた。
アンナベルが斬り下ろした刃を、アリシアは剣を地面と平行に構え、左拳を刃の背に添えて頭上で受け切った。
睨み合う視線と視線。
互いに口から漏れる白い息。
何もなかったかのように輝く、明け方の二つの月。
「強い……!」
一撃で、剣士としての格がわかる。アリシアはそう確信したようだった。
「ダーリン、私一人ではどうにもならないので、背後から攻撃を仕掛けてくれるか」
アンナベルはその言葉を聞くと、一旦後ろに跳んで海斗たちとの間合いをはかった。そして、旗色が悪いと思ったのかアンナベルはじりじりと後退し、逃走の隙を窺っているようだった。
それを見たアリシアは
「そうはいくかよ! 今度はコチラの番だ!」
と叫ぶと、剣を体の右斜め後ろに構えてアンナベルに突っ込んでいった。
一方、海斗とレイナはアンナベルの背後に回ろうと、それぞれ時計回りと反時計回りに旋回した。
レイナは、アリシアとアンナベルがつばぜり合いをしている時を見逃さず、アンナベルの側面が見えると同時に、腰につけていたボーラ(ロープの先端に球状のおもりをつけた狩猟用投擲アイテム)をアンナベルの足元めがけて投げつけた!
今回もお読みいただきありがとうございます。
アンナベルとの対峙は、ついに戦闘へと発展してしまいました。
誤解したまま怒るアンナベルと、否応なく戦うしかない海斗たち──
レイナが投げたボーラの先には、どんな未来が待っているのか。
次回も読んでいただければ嬉しいです。




