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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第三章 エルシオン王国の巫女・エリザベス

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エルシオン王国入国への試練――関所で待つ『最悪の邂逅』の予兆

 その頃、海斗たちはエルシオン王国の関所の外で検問の順番を待っていた。検問を待つ列の中でも商人の荷馬車が多く、長さ五十メートルは続いていた。アリシアは

「一応確認しておくが、レイナも冒険者カード、持っているんだろ?」

と聞いた。

「はい、獲物の素材を冒険者ギルドに買い取ってもらうために、冒険者ギルドに登録しています」

「よし、だったら皆、関所で確認されるから、すぐに冒険者カードを取り出せる状態にしておいてくれ」

 アリシアはさらに小声で、

「ここで作戦会議だ。私たちは冒険者としてエルシオン王国に入国する。問題はその理由だ。理由としては単純に魔物の素材を集めに来た、と言うのがわかりやすい。エルシオン王国では湖沼にウィル・オ・ウィスプという魔物、簡単に言うと人魂みたいな魔物が頻繁に出没するのだが、それを倒すと幽光石(ゆうこうせき)という宝石を落とす。幽光石は装飾品の素材として使われる他、暗闇を照らすランタンや魔法陣の光源の材料として使い道があるんだ。この素材を集めに来た、そういうことにする。それでいいか、ダーリン?」

と確認を取った。

「俺たちはこの地域のことは不慣れなんだ。アリシアに全て任せる」

「了解。それじゃあ検問所での兵士とのやりとりは私が担当するから、ダーリンを含めて他の人は基本黙っていて欲しい。いいか?」

 結衣は海斗を肘で軽く突いて、小声で

「今日はやたらとアリシアが仕切るわね」

と少し嫌そうに言った。

 海斗は小声で

「しょうがないだろ、この中でこの異世界の国々を歩き回った経験があるのはアリシアだけなのだから。とりあえず任せるしかない」

と、ここは素直にアリシアの言うことに従っておけよ、と言いたげな顔をした。

「本当に大丈夫でしょうね。私、知らないわよ」

 そうこうしているうちに、海斗たちが検問される順番が来た。

「次、そこの四人、こちらに来い」

 アリシアを先頭に、海斗たちは検問所の二人組の兵士たちの前まで来た。

「まず名前を名乗れ」

「私がアリシア、右からカイル、ユリッサ、レイナです。全員冒険者です」

 門番の兵士は胡散臭そうな目でこちらを見ている。

「お前ら、本当に冒険者なんだろうな? 大体ユリッサなんて、犬の名前だぞ。本当に本名なのか?」

 結衣は顔を赤くして黙りながらも、アリシアを睨んだ。

「最近、我がエルシオン王国内では他国による諜報活動が頻繁に行われており、冒険者だと偽るスパイも少なくない。まずは冒険者カードを見せてみろ」

 各々の冒険者カードを兵士は取り上げると、冒険者カードの表を見て裏を見てを繰り返し、

「この冒険者カード、本物なんだろうな?」

と、難癖をつけてきた。アリシアは肩をすくめ、困ったような笑みを浮かべながら言った。

「門番の旦那、これは冒険者ギルドから発行された正真正銘、本物の冒険者カードですよ」

「では聞くが、この冒険者カード、どこの町の冒険者ギルドで発行された?」

「門番の旦那、カードに書いてあるとおり、私のカードを除いて全員ガレアの冒険者ギルドで発行されたものですよ」

「ふん、こんなもの、偽造しようと思えば、いくらでも偽造できるんじゃないのか?」

 結衣は眉をひそめ、露骨に不快な視線を門番の兵士に送った。

 するともう一人の兵士が

「そう言えばガレアはエルダー村の近くだったな。エルダー村付近に賞金首が出たとの情報が入っているが、それらしき者を見ていないか」

と尋ねてきた。

「さあ、私どもはそれらしき者など、見ていませんがな」

 アリシアは嘘をついても全く動じる様子は見せなかった。

 兵士は報告書らしきものを見ながら

「待てよ、エルダー村付近の森で賞金首のパーティと冒険者の討伐隊との戦闘があったらしいが……賞金首のパーティの構成は剣士、剣士見習い、ハンター、それに若い女性の四人だったとか。そう言えばお前たちも四人、それに……」

と言うと兵士は、海斗たちの装備を見て

「全く同じメンバー構成じゃないか。おい、隊長を呼んでこい!」

ともう一人の兵士に命じた。

 海斗たちに緊張が走った。海斗は困惑した表情で、判断を仰ぐようにアリシアを見つめた。アリシアは、真っ直ぐ海斗を見据えると、首を振り、静かに手を上げて制した。結衣は落ち着かないのか手を組んで、足はつま先で地面を何度も叩きながら渋い表情をしている。レイナも心配そうな表情で、顔色が少し青白くなっていた。


 こんなところで詰みじゃないだろうな! 俺は必ず教皇の前で冤罪であることを証明して、千葉に帰るんだよ!


 海斗は、ここで暴れても詰み、かと言って大人しくしていても詰みになるかもしれない、この状況に焦りを覚えて仮面は半透明になりかけていた……。

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


 関所での検問は、海斗たちにとって避けられない試練。

 賞金首と同じ構成だと気づかれ、状況は一気に緊迫します。

 かけられた嫌疑をどう切り抜けるのか。


 そして次回、その関所で──海斗の貞操が危険にさらされる『最悪の邂逅』が待ち受けています。


 次回もどうぞお楽しみください。


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