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肥ノ国立志伝~戦国制度革命史  作者: 日野龍哉


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第51章 電撃戦

この物語は生成AIの力を借りながら、細々と進めています。ご了承ください。

挿絵(By みてみん)

 瀬戸内は、目に見えぬ形で変わり始めていた。

 潮は同じように満ち引きする。風も変わらぬ。

 だが、通る船の迷いが消えている。

 案内がつき止まらない。余計な警戒もない。

 それだけで、流れは倍に速くなる。

「……妙だな。」

 長崎の商人が呟く。

「取られぬ。」

「いや、取られておる。」

 別の者が言う。

「だが、無駄に減っておらぬ。」

 沈黙。

「しかも守られておる。」

 短い。

 その変化は、すぐに噂になる。

「日野が、海を押さえたらしい。」

 だが、それ以上に広がった噂があった。

「妹君を出したらしい。」

 ざわめきが走る。

「誰に。」

「村上水軍。」

 沈黙。

 それは、単なる取引ではなかった。


 因島。

 波は強い。

 岩に当たり、砕ける。

 その中で、一隻の船が入る。

 女が降りる。

 名は、梨香。

 土俵際の幻術師、日野龍重の血。

 だが、その装いは日野から見れば簡素、だが、海賊衆から見ると華やかだった。

「……ここが」

 誰も答えない。

 視線だけが集まる。

 海の男たち。

 値踏み。

 拒絶。

 警戒。

 すべてが混ざる。

「帰れ。」

「土豪からの成り上がりめ。」

「土遊びでもしてやがれ。」

 誰かが野次る。いつもより殺気じみている。

 梨香は首を振る。

「帰りませぬ。」

 短い。

「ここが、故郷。」

 沈黙。

 頭領が前に出る。

「分かっておるのか。」

 武家と異なる世界。

 梨香。

「分かっておる。」

 一拍。

「海賊の嫁じゃ。」

 空気が変わる。

 軽い言葉だが、侮りではない。

 頭領はしばらく見ていたが、やがて笑う。

「よく来た。」

 短い。

「来い。」


 この報は、すぐに各地へ届く。

 長崎。

 空海が笑う。

「……やりましたな。」

 信安は無言で帳面を閉じる。

「戻れませぬぞ。」

 一言。

 龍重は頷く。

「戻ると言わんよ、あの妹は。」

 平凡だが、退かぬを知り抜いた一言。

 沈黙。

 空海。

「完全に組みましたな。」

 信安。

「ただの契約に非ず。」

 一拍。

「血の交わる契り。」

 龍重。

「左様。」


 世間の反応は割れた。

「海賊に妹を高く売った。」

 そう嘲る声もある。

 だが。

「違う。」

 そう言う者も出てくる。

「日野様は取りに行ったのだ。」

 何を。

「海を。」

 その言葉は、静かに広がる。


 薩摩国、島津家。

「ほう」

 義久が言う。

「うちの嫁とは違うな。」

 家久が笑う。

「政略。」

 一拍。

「無情ですな。」

 歳久。

「小賢しい。」

 短い。

 だが義久は首を振る。

「いや。」

 一拍。

「かなりの重みよ。」

 沈黙。

「雷鳴の鎖じゃ」

 その言葉で、空気が変わる。


 安芸国、毛利家。元就は報を受ける。

「妹を、ですか」

 隆元が言う。

 元春が笑う。

「見事見事。」

 隆景は静かに言う。

「かなりの一手。」

 元就は目を閉じる。

 一拍。

「……冷徹。」

 短い。

「銭でも契約でもない。」

 一拍。

「日野の血の流れ。」

 沈黙。

 元春。

「斬りますか。」

 武に優れる元春は十八番を持ち出そうとするが、元就は首を振る。

「斬れぬ。」

 一拍。

「そして、切れぬ。」

 瞑目する隆景。

「海が変わります。」

 元就。

「既に変わった。」

 短い。

「奪われたのではない」

 一拍。

「組まれた」

 その言葉は重い。


 因島。

 梨香は座していた。

 豪奢ではない。

 だが、整っている。

「これは、何だ」

 村上の者が問う。

 帳面。

「記す」

 梨香は言う。

「何を」

「流れを」

 短い。

「何が、どれだけ流れたか。」

 ざわめき。

「そんなもの。」

「奪うのが我ら。そんなもの、役に立つか。」

「流すのは敵の血じゃろがい。」

 吐き捨てる声に落ち着いて梨香が。

「分からねば、守れぬ。」

 一拍。

「守れねば、信を取れぬ。」

 沈黙。

「奪うのではなく、流れを整える。」

 頭領が見ている。

 何も言わない。

 だが、否定もしない。


 数日。

 船の動きが変わる。

 無駄が減る。

 衝突が減る。

「……増えている。」

 誰かが呟く。銭だけではない。

「取れる。」

 通行料。

「だが減らぬ。」

 村上の信。

 梨香はただ、記している。

 地道に、確実に。

「奪う海賊から整える海賊か、日野は恐ろしい。」

 頭領が笑顔で言う。

 梨香は顔を上げない。

「変える。」

 短い。


 瀬戸内。

 流れは、もはや止まらない。

 速くはない。

 だが、確実。

 誰も無理をしない。

 だが、誰も止まらない。


 大村城。

 龍重は報を聞く。

「根付いたか」

 信安。

「はい」

 空海。

「逃げ場はありませんな」

 龍重。

「逃げるどころか、今や梨香お嬢だそうだ。」

 一拍。

「こっちが見放されるかもな。」

 机の上。

 三つの紙。

 毛利、島津、日野。

 龍重はそれを見て言う。

「……さらに一つ、入ったな」

 空海。

「海ですな」

 信安。

「人でもあります」

 龍重。

「皆々じゃ。じゃが……これで敵も増える。些か難儀。」

 短い。

 風が吹く。

 流れは、もう止まらない。

 戦ではない。

 だが、勝敗は既に動いていた。


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