第44章 日野家動乱④
この文章は生成AIの力を借りながら、細々と進めています。ご了承ください。
消耗は続く。目に見えぬまま。
嬉野。静かだ。
だが軽い。
兵は立つ。士気もある。崩れてはいない。
だが、足りない。
兵糧が少しずつ削れる。
「まだ持つ。」
誰かが言う。
間違ってはいない、今は。
だが、明日は違う。
永谷一典。静かに瞑目して座る。
動かない。
強制徴発はできる。だができない。
「崩れる。」
一言。
民が離れ、信が切れ、それで詰み。
野生の勘、理ではない。
だが正しい読み。
ならば、一手打つ。
「戦う。」
挽回の妙手。
方面。
北、大岡高次。守り、崩れない。長期戦の末勝てはする。だが、時間がない。却下。
東、佐賀の龍朋。堅城と海、水軍。
「相性が悪い。」
正しい、正面では崩せない。
南、山。論外。片道、兵糧が尽き、溶ける。却下。
残るは東。さらに東。川棚、平戸。
海があり、繋がる。
「補給。」
小さいが確実。
海運は細いが続く。
「ここだ。」
決まる。
龍造寺。北と東を任せる。
指示は必要なし。
「自分の身は守る。」
支援はできない。
南西、瀬戸郷の日野重直。若いが慎重、故に動けない。
「恐れている。」
奇襲を。
それで止まる。
彼杵宿を押さえる。
細く強い場所。
「ここを締める。」
道が止まる。
少数で大軍を止める。形が見える。
永谷がゆっくり立ち上がる。
「陣ぶれじゃ。」
短い。
周りが動く。止める者はいない。
必要だからだ。
外へ出る、初めて。
籠もっていた者が動く。
大村城、評定の間。
報が入る。
龍重。
「……来るか。」
空海、頷く。
「動きましたな。」
間。
「東。」
短い。
龍重、真顔。
「読み通りじゃ。」
だが、軽くない。
「迎えるか。」
誰もすぐには答えない。
流れが変わる。
止まっていた戦が動く、ゆっくり、だが確実に。
動いた以上、早く終わらせる。
永谷一典に迷いはない。
「長くは持たん。」
短い。
兵糧が限界を告げる前に決める。
道は一つ。
嬉野南部から俵坂峠を越え、山を抜ける。
その先、彼杵川。流れに沿って坂本郷、菅無田郷、法音寺郷と繋がる。
さらに南の三根郷、あるいは彼杵宿郷。そこまで届けば。勝ち筋が見える。
「流れを掴む。」
それだけ。
兵が動く。軽く、速く。止まらない。
山に入る。見えない。だが進む。
一方、日野龍重。地図を見る。
線が重なる。
「来るな。」
空海が頷く。
「俵坂。」
短い。
焦点が定まる。
止めるか、抜かれるか。
龍重、即断。
「握る。」
重直へ。
「瀬戸から彼杵川まで。そこから川沿いに北上。」
狙いは坂本郷の中尾稲荷神社。
「そこを押さえろ。」
重直。頷く。
「承知。」
速い。若い、だが正確。
同時、空海が一軍を預かる。
坂本郷の釈迦堂、その西。
「ここに張る。」
中陣。動かず支え、見る。
龍重も今回は動く。
菅無田郷、戦場に近く、危うい。
「行く。」
だが、止める者はいない。
後陣、伊万里より桜岡軍が動く。
だが、あくまで抑え。
彼杵宿。
「抜かせるな。」
それだけ。
形が整う。
前陣、中陣、後陣。そして本陣。崩させない。
山は互いが入る。
青雲工兵隊。動き、道を変え、削り、通す。
強襲山岳兵。潜り、登り、消える。
だが、互いに知っている。
裏口はある。だが、通れない。
牽制し合い、見合い、潰し合い。
主攻はそこではない。
坂本郷、釜ノ内と三ノ瀬。そこに寄る。
流れも、兵も、視線も集まる。
平地ではない。山の傾斜、林の狭路。
数は活きない。速さと判断が問われる。
永谷は俵坂を進み、越える。止まらない。
「抜けろ。」
短い。
龍重は俵坂の先で待ち受ける。
「止める。」
空海、静かに見る。
「ぶつかりますな。」
龍重。
「ここで決まる。」
早いか、遅いか。
抜くか、止めるか。
それだけ。
風が通りぬけ、山が鳴る。
まだ見えない。だが、すぐそこだ。
戦は形を持つ。
日野龍重本陣。
俵坂の永谷一典を三方から囲む。
小河
「陣形と数だけ見ると優位。」
龍重は後頭部を掻きながら、
「陣形と数だけならのぉ。地形がきつい。」
一応中尾稲荷神社の北部には物見台をいくつか設けているが、険しい。
「地の利でひっくり返してくる。」
小河が龍重を見る。
「そうじゃのぉ。酒に酔ってくれるといいのじゃが。」
以前の焼酎を思い出すが、
小河。
「あれは戦勝祝いで使うでしょうな。気付けに一杯、には高すぎです。」
「となると……。」
ちらっと目配せする龍重。
肩を竦める小河。
「殿が『諸経費』の中に溶かし込んだ、雑穀酒を近隣農民に振る舞わせましょう。」
「日見峠じゃな。」
「五家に突っ込ませますか?」
験担ぎなら選ぶが、
「味方に突っ込ませるのかね。」
龍重の冷めた口調。
これは内なる戦い。
首を横に振る。
「いえいえ、野生の猪狩りに鉄砲を千丁だと割に合わぬと思うただけです。」
小河も食えない男。
「狙うはここ。重直と空海には足止め。本陣一点突破。」
龍重。
「鶴翼で迎撃。」
小河。
「敵の進軍を乱す斜線鶴翼。北部を短く、南部を長めに。」
龍重。
「敵の速度をさらに落とす。」
小河。
「ぬかるみ。」
龍重。
「足りぬ。」
小河。
「流れを進路上に巻き込む。」
龍重。
「重直と空海に伝令。青雲を一部残して本陣へ。強襲山岳兵は中尾と釈迦堂へ。」
配置換え。
小河。
「先の短い兵糧、古い武具を荷車に。」
龍重。
「ならば……本陣の一部を強行偵察に。中尾への輸送も含め、負けを装わせる。」
小河。
「噂。中尾より西、岩屋川内より強襲山岳兵強襲。」
多くの情報と噂が一典の陣にも届く。
一部は偽情報だとしても、情報量が多い。
「これは……難しい。」
一典が呟く。
「と……小僧、ここまでの報を裁いておったのか。」
一門。
「偽情報じゃ。」
「どれが。」
一典の一言に、口籠る。
「調べよ。強襲には兵を割け。」
「されど攻め手が。」
「隙を与えない。揺らぐな。読み切れ。」
空海と重直が時間差で永谷本陣に強襲をかける。これは秘匿した情報の一部だが、これはあっさり防がれた。
一典の戦闘指揮。理ではない、勘。
だが、強く俊敏。
空海隊、重直隊も無理はしない。そういう作戦。
一度退くが、また小隊が僅かに違う角度から攻め込む。半包囲になりそうでならない、そんな微妙な攻め。
空海。
「やれやれ、うちの軍は下手な戦を演じることが得意になってきたな。」
皮肉っぽく笑う。
重直。
「第二陣帰還。第三陣突入。第四陣準備。しばし時を開けてまた第一陣を再投入。」
間断無く攻める。
「敵は弱兵、我らに敵なし。」
一典の怒号が響く。
日野の兵がたじろぐが、退かない。訓練通り。
鉄砲を撃ち、弓を放ち、石を投げる。
そして迷わず退く。
「やい腰抜けども。」
「臆病風に吹かれやがったぜ、あいつら。」
「母ちゃんの乳でも吸ってやがれ、ガキ。」
あらゆる罵詈雑言が永谷陣から飛ぶが、激昂する隊はほとんどいない。
「小僧、いつの間にあれだけの兵を。」
一門の老臣が苦々し気に言う。
一応永谷軍も統制は取れている。
だが、出すぎる。そして叩かれる。
永谷の殿の采配は見事だが、それだけ。
龍重。
「優れた勘も、四方八方だと鈍るものさね。」
小河。
「永谷殿自信は優れた戦術家。」
龍重。
「視野が広ければ。」
小河。
「我らの負けでしたな。」
龍重。
「そろそろ。」
小河。
「伝令、中尾に輸送隊を送れ。強行偵察隊を付けよ。」
龍重。
「負け場所を間違えるなよ。」
ほら貝が四度短く鳴った後、一度長く響く。
空海。ほら貝を聞き、
「第二段階。」
それだけ。
重直、音無田の方を向き、無言で采配を振るう。
龍重と一典、同時に呟いた。
「大博打の始まりじゃ。」




