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肥ノ国立志伝~戦国制度革命史  作者: 日野龍哉


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第35章 斬り捨て御免

この文章は生成AIの力を借りながら、細々と進めています。ご了承ください。


挿絵(By みてみん) 愛野と牛口名。風は、変わらなかった。

 砦は残っている。だが、もう意味は薄い。

 有馬は動かぬ。崩れぬ。退かぬ。

 そして、日野も動けぬ。


 神浦城。

 竹が鳴る。

 信安が地図を見ている。

「四つ。」

 空海が笑う。

「何ですかな」

 信安。

「切る場所です」

 筆で示す。

 経済、宗教、外交、領土。

 沈黙。

 龍重は竹を見ている。

「どれを捨てる」

 信安。

「三つ捨てれば死にます」

 空海が苦笑して。

「選択肢に見せかけて一つしかないじゃないか。」

 沈黙。

 信安。

「左様、領土だけです。」


 空海が盃を置いた。

「……鶏肋」

 静かに。

 信安が目を向ける。

 龍重も、わずかに笑った。

「言い得て妙じゃな」

 空海。

「出汁は取れる。だが食うには歯が折れる。」

 少し間。

「捨てるには惜しいが、無理して食せば砕けるな。」

 沈黙。

 龍重少し大仰に。

「褒めてやろう。」

 空海が頭を下げる。

 龍重が言った。

「捨てるか。」

 それだけだった。

 だが、信安が言う。

「ただ捨てれば、士気が落ちます。」

 空海。

「当然ですな」

 龍重。

「ならば」

 少し間。

「理由を作る」


 数日後、愛野、牛名口の砦。

 日野の陣が動く。

「総員、退け!」

「負傷者を運べ!」

「民を先に!」

 声が飛ぶ。

 兵が走る。

 だが、その後ろ。火が上がる。

 倉。兵糧。資材。焼かれていく。


 一人の兵が叫ぶ。

「まだ残っております!」

 重直が怒鳴る。

「下がれ!」

 沈黙。

 兵は歯を食いしばる。

 火を放つ。

 別の場所。

 村。

「急げ!」

「子供を先に!」

 泣き声。

 怒号。

 全ては拾えない。

 一人の老いた女が言う。

「わしはよい」

 兵が止まる。

「だが……」

 女。

「行け」

 沈黙。

 兵は歯を食いしばり、走った。

 その光景を、丘の上で信安が見ていた。

 空海が言う。

「骨髄に徹する(こつずいにつうずる)悔しさよ。」

 信安。

「ええ」

 少し間。

「全部は拾えない」


 その頃、有馬軍。

 砦の前。

「……退いた」

 誰かが呟く。

 有馬晴純は黙っていた。

 数刻後。

 砦は落ちる。抵抗は、ほとんどない。

 だが、中は空。焼け跡。

 家臣。

「勝鬨を上げい!」

 沈黙。

 有馬は言った。

「……そうか」

 だが、その夜。

 村は静かだった。誰もいない、誰も従わない。

「得たはずなのに何も得ていないではないか。」


 数日後。

「年貢どころか人が居りませぬ。」

「商人も来ませぬ。」

 有馬は帳簿を見る。

 数字が、合わない。

「……なぜだ」

 答えは外にあった。

 風説の流布。

「日野は民を救いながら撤退した。」

「有馬は奪いつくし、焼き尽くし、殺し尽くした。」

「逃げろ」

 有馬の見た目の領地は広がった。だが、中身は空だった。


 長崎。

 混乱は続いていた。

 光輝。

「……止めろと言ったはずだ」

 商人。

「遅い。」

 別の商人。

「もう決めた。」

 その時、鐘が鳴る。重い音。寺。

 地空が立つ。

「市を開く。」

 沈黙。

「勝手に値を決めるな。」

「場で決めよ。」

 光輝が言う。

「……市場。」

 地空。

「監視させよ。」

 商人。

「勝手に決めるな。決めるは我ら。」

「坊主がしゃしゃり出てくるな。」

 地空がにこやかに、

「お主どこの商家の者じゃ、言うてみい。」

 はたと気づく。彼の者、日翔寺住持北天翔院地空僧正。長崎での治水の功徳が思いの外評価を得て、噂によると大僧正の話しも来ているとか。

 怖気づく商人。虚勢を張ろうとして、腰砕け。

「信仰する者は救われるが、意のままに操ろうとする者には仏罰が下っても、仕方がない、仕方がない。」

 数日後。

 広場。

 商人が並ぶ。

 値が掲げられる。

 だが、完全ではない。

 宗教の威に表向きは頭を下げるが、伏せた口からは舌が出る。不満はより陰湿化。


 地空は言う。

「締めるのではない」

 少し間。

「底にたまった汚泥を浚渫し、流れを作りなおす。」


 薩摩国、内城。

 義久の元に報が届く。

「日野、撤退。」

 歳久が笑う。

「逃げましたな。」

 義久は首を振る。

「違う。」

 沈黙。

「見切った。」

 さらに報。

「我が方の商路、滞り」

「塩の流通、遅延」

「兵糧価格、高騰」

 歳久の顔が変わる。

「……何だと」

 義久は静かに言う。

「動きが早い。」

 実態は単純だった。

 日野は商人に圧をかけ、中継を遅らせ、相場に少しだけ介入する。

 戦ではない。だが、効く。

 義久。

「してやられたか。」

 少し間。

「やる。」


 神浦城。

 竹が鳴る。

 龍重。

「小河。」

 信安。

「はい。」

 龍重。

「何を捨てた。」

 信安。

「領土にございます。」

 龍重は首を振る。

「違う。」

 少し間。

「余裕じゃ。」

 沈黙。

 風が吹く。

 竹が鳴る。

 日野の国は、縮んだ。

 だが、崩れてはいなかった。


 神浦城。竹が鳴る。

 信安が地図を見ている。だが、その目は土地を見ていなかった。

「……土地は不要。」

 空海が盃を傾ける。

 空海が笑う。

「では何を取る。銭か。」

 龍重。

「銭、人、物。土地に拘るは柵に縛られる。流れを制し、流れに乗る。」


 数日後。

 薩摩への使者。

「日野より、条件変更。」

 島津の前で書状が開かれる。

「……領地を求めず。」

 歳久が眉を上げる。

「ほう。」

「代わりに、交易路の保証。」

 沈黙。

 義久が言う。

「気味が悪いな。」

 歳久が笑う。

「欲が見えませぬな。」

 義久。

「違う。」

 少し間。

「見えぬは欲でなく底よ。」

 沈黙。

「化け物め。」


 筑前国、秋月の館。

 小河が言う。

「支配は致しません。」

 沈黙。ただ、かつて龍造寺の中で唯一話の分かる人物。

「ただ、商いを共に。」

 秋月の男が言う。

「利は。」

「増えます。」

 沈黙。

「減りません。」


 蒲池。内容も同じ、使者も同じ小河。

「取らぬ、互いに増やす。」


 阿蘇家、神前。

 地空の名が出る。

「日ノ本を鎮守する神仏を守る寄進を流します。」

 沈黙。

 阿蘇の者が言う。

「……我らの信仰に触れぬか。」

 答え。

「触れませぬ。」


 長崎港。

 まだ荒れている。

「値を下げろ!」

「上げろ!」

 怒号。

 だが中央に板が立つ。

 値が書かれる。

「これで決める。」

 商人が舌打ちする。

「……面倒だ。」

 別の商人。

「だが儲かる。」

 沈黙。

 完全には従わない。だが、離れられない。


 光輝が立つ。

「流れを止めるな。」

 誰も返さない。だが、動きは揃う。


 地空が言う。

「締め過ぎるな。」

 少し間。

「詰まる。」


 北の遠く、まだ見えぬ地。

 だが、噂は広まっていた。

「北九州。」

 信安が指す。

「……ここです。」

 龍重。

「遠いな。」

 信安。

「ええ。」

 少し間。

「だから、取れる。」


 新しい商人たち、若く軽く、速い。

「日野に乗るか。」

「乗れば早い。」

「乗らねば遅れる。」

 沈黙。

 彼らは動く。


 その裏で古い商人。

 動く気が無い。

「認めぬ。」

「秩序を乱す。」

 だが、銭は流れる。


 薩摩国、内城。

 義久が報を聞く。

「秋月、動く。」

「蒲池、応じる。」

「阿蘇、静観。」

 歳久が笑う。

「広がりますな。」

 義久。

「違う。」

 少し間。

「繋がっておる。」

 沈黙。

 義久。

「点と点がつながり線となった。線が重なると……同じ土俵に上がってきたか。」


 神浦城。

 竹が鳴る。

 龍重。

「小河」

 信安。

「はい」

 龍重。

「何をしておる」

 信安。

「……溜めております」

 龍重。

「何を」

 少し間。

 信安。

「銭と信、そして流れ」

 風が吹く。

 竹が鳴る。

 日野の国は、広がってはいなかった。

 だが、繋がり始めていた。


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