第27章 銀消失事件
この文章は生成AIの力を借りながら、細々と進めています。ご了承ください。
初夏。
弥兵衛は処刑された。三日前のことだった。
長崎の港はいつも通り賑わっていた。
帆柱が軋む。荷車が走る。異国の言葉が飛び交う。
だが、その日。
市場の空気はどこかおかしかった。
商人が銀箱を抱えて倉へ走る。船頭が荷下ろしを止めた。両替商の店の前に行列が出来た。
商人が小声で話している。
「聞いたか。」
「何をだ。」
「日野の銀が消えた。」
沈黙。
「いくらだ。」
「一万五千両。」
ざわめきが広がる。
商人が言う。
「手形はどうする。」
別の商人。
「今は受け取れん。」
港役人が叫ぶ。
「待て!日野の銀はある!」
だが誰も動かない。
船頭が低く言った。
「信用が揺れた港は危ない。」
神浦城、評定の間。
星奈が帳面を閉じた。
「殿。」
龍重が顔を上げる。
「何じゃ。」
「銀が消えました。」
沈黙。
空海が腕を組む。
「いくらだ。」
星奈。
「一万五千両。」
評定の空気が凍る。
空海が低く言う。
「日野家三ヶ月分の収益か。」
龍重は帳面を見る。
数字は整っている。
ただ一つ。銀だけがない。
龍重。
「龍造寺か。」
空海は鼻で笑う。
「違いますな。」
沈黙。
「隆信殿は豪胆な武将です。」
少し間。
「だが、経済で戦えるほど賢くはないし人もいない。」
龍重は頷く。
「では。」
星奈が言う。
「港。」
帳簿を指す。
空海。
「内部か。」
星奈。
「もう一人。」
空海。
「誰だ。」
星奈。
「一番疑われるのは。」
沈黙。
「殿です。」
空海が龍重を見る。
龍重は笑った。
「そうか。」
空海。
「怒らぬのですか。」
龍重。
「もっとも疑いじゃわ。」
沈黙。
「制度故、疑うのが正しい。」
夜。龍重は庭にいた。
竹が揺れる。
柚那が来る。
「聞きました。」
龍重。
「銀の私物化じゃと。」
柚那は静かに言う。
「よろしいのでは?」
龍重。
「何が。」
柚那。
「殿が疑われるなら。」
沈黙。
「まともですね、この国。」
龍重は苦笑した。
その夜、別の場所。
日野重直が帳簿を見ていた。
空海が聞く。
「何かわかったか。」
重直。
「犯人はいません。」
空海。
「何?」
重直は帳簿を閉じた。
「制度です。」
沈黙。
「銀が三度動いています。」
星奈。
「倉銀。」
重直。
「商人手形。」
空海。
「信用。」
重直は頷く。
「殿は国を大きくしすぎた。」
沈黙。
「制度が追いついていません。」
数日後、神浦城城門前。
公開詮議。民衆が集まる。港役人、商人、村役、兵、そして城門前に座る龍重。
明日香が前に立つ。
「公開詮議を始めます。」
ざわめき。
「詮議は私でなく……。」
沈黙。
「筑後から雇った監査役人が行います。」
人々がざわめく。元他家の武士に龍重を裁かせる、公正を期した詮議。
戦国では前代未聞だった。
監査役が帳簿を開く。
「まず、弥兵衛事件。」
人々がざわめく。
六百両横領。
処刑された港役人。
監査役。
「弥兵衛は盗んでいない可能性。」
沈黙。
「制度の穴に落ちた可能性もあります。現在関係者を詮議中。」
ざわめき。
空海。
「どういうことだ。」
監査役。
「港銀は三度動いています。」
星奈。
「倉銀。」
監査役。
「商人手形。」
空海。
「信用。」
監査役。
「つまり。」
沈黙。
「銀は増えていました。」
ざわめき。
星奈が帳簿を指す。
「倉銀一万両。」
少し間。
「流通銀二万五千両。」
空海。
「信用銀か。」
監査役。
「はい。」
その時。
商人が前に出た。本河内家の使い。
「殿。」
龍重。
「何じゃ。」
商人。
「我らは盗んでおりません。」
沈黙。
「銀は動いただけ。」
少し間。
「日野と本河内。」
「銭を握りすぎた。」
ざわめき。
「商人には、商人の世界があります。」
沈黙。
「釘を刺しました。」
空海が笑った。
「なるほど。」
龍重を見る。
「殿。」
「経済戦です。」
龍重は頷いた。
龍重は民を見る。
そして言う。
「銀は消えておらぬ。」
沈黙。
「信用が縮んだだけじゃ。」
空海。
「では犯人は。」
龍重は空を見る。
「制度じゃ。」
沈黙。
「儂が作った制度じゃ。」
群衆の後ろ。一人の男が詮議を見ていた。商人風。
だが目は鋭い。男は呟く。
「……馬鹿な。」
沈黙。
「領主が。」
少し間。
「自分を裁かせるのか。」
男は言う。
「この国は。」
風が吹く。
「おかしい。」
夜、神浦城。
龍重が庭を見る。
空海。
「殿。」
龍重。
「何じゃ。」
空海。
「銀は戻ります。」
龍重。
「そうじゃな。」
空海。
「だが。」
沈黙。
「信用は戻りません。」
龍重は笑った。
「戻させる。」
少し間。
「それが。」
風が吹く。
「国を作るということじゃ。」
銀は盗まれていなかった。
だがこの事件で日野家は思い知った。銀より恐ろしいもの。
それは信用。
そして戦より恐ろしいもの。
それは……制度。
公開詮議は翌日も続いた。
帳簿、倉記録、商人手形、港税。
全てが調べられた。
そして最後に監査役が静かに言った。
「結論を申し上げます。」
沈黙。
「弥兵衛の横領。」
少し間。
「これは事実です。しかし銀消失とは別の事件です。」
人々がざわめく。
龍重は目を閉じた。
「やはりか。」
監査役は続ける。
「ただし。」
沈黙。
「銀流通は極めて不明瞭でした。」
星奈が帳簿を指す。
「倉銀。」
「商人手形。」
「信用銀。」
「三つの流れが混在しています。」
空海が低く言う。
「つまり。」
監査役。
「金の流れが見えない。」
沈黙。
龍重は静かに言った。
「弥兵衛は罪人じゃ。」
少し間。
「だが、儂らが作ってきた制度もまた罪。」
誰も反論しなかった。
評定の間。
星奈が帳簿を広げている。
「殿。」
龍重。
「何じゃ。」
「このままでは同じことが起きます。」
空海が笑う。
「当然です。」
沈黙。
「銀が見えませんからな。」
龍重は腕を組む。
「ならば。」
少し間。
「見えるようにする。」
数日後。
長崎港。商人連合が呼び出された。
港顔役本河内家、長崎商人、博多商人も呼ばれている。
龍重が言う。
「金の流れを整える。」
沈黙。
「商人皆様方、お主らにお任せ申す。」
ざわめき。商人が言う。
「……我らがですか。」
龍重。
「そうじゃ。」
沈黙。
空海が笑う。
「自分たちの金を正しく見張る、何か異議でも?」
商人たちは顔を見合わせた。彼らは気づいた。これは報復。
商人たちは日野と本河内に釘を刺した。
その結果、今度は自分たちが制度の鎖を作ることになる。
商人が苦笑した。
「殿。」
「商いが難しくなります。」
龍重は笑う。
「今まで通り、誠実な商いならだ~れも困らぬ。」
沈黙。
商人は深く頭を下げた。
「……承知いたしました。」
こうして新しい制度が生まれた。
港銀制度。倉銀、商人手形、信用銀、すべてを記録する。
銀は流れる。だが、見える銀になる。
その夜。神浦城。
空海が酒を飲んでいた。
龍重が来る。
「まだ起きておるのか。」
空海。
「仕事です。」
机の上には書状。
龍重が聞く。
「誰じゃ。」
空海は笑う。
「博多。」
そして言った。
「天野庄左エ門。」
龍重。
「商人か。」
空海。
「金融屋です。」
沈黙。
「今回の信用騒ぎ。」
少し間。
「戦に使えます。」
龍重が眉を上げる。
「どう使う。」
空海は酒を飲んだ。
「殿。」
沈黙。
「龍造寺は。」
少し間。
「銀を借りています。」
龍重。
「ほう。」
空海。
「信用が揺れれば。」
沈黙。
「借金は燃えます。」
龍重は笑った。
「火を付ける気か。」
空海。
「既に火種はあります。」
机の書状を叩く。
「博多、堺、長崎。」
沈黙。
「信用は伝染します。」
龍重は空を見る。
「……なるほど。」
少し間。
「転んでもただでは起きぬ。」
空海は笑った。
「殿。」
「これが商いの戦です。」
龍重。
「戦より怖いの。」
空海。
「ええ。」
少し間。
「血が流れませんから。」
遠く、佐賀平野。
龍造寺の城下町。
商人が帳簿を閉じた。
「……まずい。」
沈黙。
「信用が落ちている。」
別の商人が言う。
「長崎の騒ぎか。」
沈黙。
「銀が動かん。」
城の奥。
家臣が隆信に報告する。
「殿。」
「金の流れが止まりました。」
沈黙。
隆信は帳簿を見ない男だった。だが戦の匂いは嗅ぎ分ける。
隆信がゆっくり顔を上げる。
「……また日野か。」
誰も答えない。
だが、既に火は付いていた。
現代経済が難しくなっているのは、手元の金銭と、銀行上の金銭と、クレジットカード等その他の金銭が見えにくくなっている点。戦国時代でも商業を重視すると、金の回りを早くするために現金でないものでの商取引が行われる。こういうことが起きるのでは、を基に書いてみた章です。知識が間違っていたら、「こいつ勉強不足やなぁ。」と思ってやってください。




