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みいつけた  作者: 紙とペン


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12/16

十二

 床下へ入るのは、二度目のはずだった。

 それなのに、透には初めて入る場所のように思えた。

 さっき通ったはずの土の匂いや古い木材の湿った匂い、低い天井も、柱の列も、真壁の懐中電灯が照らす細い光も。どれも同じはずなのに、何かが違っていた。

 今度は逃げない。悟を見つけて連れて帰る。

 そう思うだけで、床下の闇は形を変えた。

 後ろでは、力が赤い紐の端を握っている。外に残った力は、何もできない自分を責めているかもしれない。だが、透には分かっていた。紐を持っていてくれる誰かがいる。それは思っている以上に心強い。

 赤い紐は、透の手首から後ろへ伸びている。

 命綱。

 現実へ戻るための線。

 名前の代わりに、自分をここにつなぎとめてくれるもの。

 透はそれを一度だけ握った。

 前には、赤いビー玉の列が続いていた。

 

 一つ。

 また一つ。

 

 土の上に置かれた小さな赤い光が、床下の奥へ誘っている。

 案内なのか。罠なのか。

 もう、それを考えても仕方がなかった。

 先頭は真壁だった。

 その後ろに透、笑、柳田。

 真壁の鈴が、ときおり小さく鳴った。

 

 ちりん。

 

 その音は、先ほどより弱く聞こえた。

「鈴、効いてるんですか」

 透が小声で訊いた。

 真壁は前を向いたまま答えた。

「分かりません」

「分からへん?」

「昔は、効いていました」

「昔ってどういうことですか?」

「この館で怪異が起こり始めた頃、地元の神社の宮司に相談しました。そのときに、この鈴と護符を用意していただいたのです」

「じゃあ、本物のお守りなんですね」

「本物かどうかは、分かりません」

 真壁の声は、いつものように静かだった。

「ただ、人は何かを信じなければ、恐ろしいものの前に立てません。鈴や護符は、そのためのものでもあります」

「気休めってことですか」

「そうかもしれません。しかし、人は気休めでかろうじて立っていられることがあります」

 透は何も言えなかった。

 それは、真壁自身のことのように聞こえた。

 鈴。

 護符。

 久遠館を守るという名目。

 町のためという言葉。

 そういうものすべてが、真壁にとって気休めだったのかもしれない。

 悠真を見つけられなかった自分が、それでも生きていくための。

 床下を進むにつれて、空気がさらに冷えていった。

 前回見つけた隠し部屋は、もうすぐのはずだった。

 だが、なかなか着かない。

 柱の列が続く。

 赤いビー玉の列も続く。

 同じ景色が何度も繰り返されているようだった。

「さっきより、遠くない?」

 笑が言った。

「私もそう思います」

 柳田が答えた。

「この床下は、こんなに広くありません」

「迷わされてる?」

 透が訊いた。

 真壁が鈴を鳴らした。

 

 ちりん。

 

 赤いビー玉の列が、わずかに揺れた。

 まるで水面に映った灯りのように。

「悠真くん」

 真壁が言った。

 その声に、透は驚いた。

「真壁さん、名前を呼んじゃ…」

「私が呼ぶべきなのです」

 真壁は暗闇に向かって続けた。

「悠真くん、私は来ました」

 床下が静まり返った。

 土の匂い。

 木の匂い。

 遠くで水の流れるような音。

 そのすべてが一瞬止まったように感じた。

 すると、暗闇の奥から声がした。


「おそい」


 子どもの声だった。

 悠真の声。


「おじいちゃん、おそいよ」


 真壁の肩が小さく揺れた。

「そうですね」


「ぼく、ずーっとまってたよ」


「はい」


「おとうさんも、おかあさんも、くろせのおじさんも、みんなこなかった」


「はい」


「おじいちゃんも、こなかった」


 真壁の足が止まった。

 その背中が、急に小さく見えた。

「申し訳ありません」

 真壁は頭を下げた。

 床下の狭い空間で、膝をつき、深く頭を下げた。

「私が、あなたを見つけなければなりませんでした」


「でも、みつけてくれなかった」


「はい」


「ぼく、ここにいたのに」


 透は息を飲んだ。

 ここにいた。

 悠真は、あの夜、床下にいた。

 黒瀬に追われ、隠れ、声を失い、それでもここにいた。

 だが、見つけてもらえなかった。

「私は、館の外ばかり探していました」

 真壁は言った。

「山、川、道路、空き家。あなたが外へ出たと思っていた。久遠館へ来たとしても、黒瀬氏が中には入れてくれなかった。だから私は、そこで諦めた」


「しらべなかったんだね」


「はい」


「おとうさんのへやのした、しらべなかった」


「はい」


「ぼく、びーだま、いっぱいならべたのに」


 透は赤いビー玉の列を見た。

 これは今だけのものではない。

 あの夜も、悠真はビー玉を並べたのかもしれない。

 助けを求めるために。

 道しるべとして。

 自分を見つけてもらうために。

 けれど、大人たちは気づかなかった。

「申し訳ありません」

 真壁の声は震えていた。

「私は、あなたのことを知っているつもりでした。あなたが寂しがりで、遊びたがりで、かくれんぼが好きな子だと知っていた。だから、あなたが本当に助けを求めているときも、私はそれをただの遊びだと思ってしまった」

 暗闇の奥で、ころん、とビー玉が鳴った。


「おじいちゃん」


 悠真の声がした。


「ぼく、わるいこ?」


 真壁が顔を上げた。

「いいえ」


「みんなこわがる」


「それは」


「ぼくが、わるいこだから?」


「違います」

 真壁は強く言った。

「あなたは悪い子ではありません」


「じゃあ、なんで」


 悠真の声が幼く震えた。


「なんで、みんな、ぼくをおいていくの」


 その問いは、床下の闇全体から聞こえた。

 父親。

 母親。

 黒瀬。

 真壁。

 柳田。

 大人たち。

 みんな、それぞれ理由があった。

 仕事があった。

 苦しみがあった。

 罪があった。

 恐れがあった。

 けれど悠真から見れば、ただ一つだった。


 みんな、いなくなった。

 みんな、自分を置いていった。


 柳田が声を出した。

「悠真坊ちゃん」

 その呼び方に、闇がわずかに揺れた。


「やなぎださん、ひさしぶり」


 透は思わず彼女を見た。

 柳田は涙をこぼしていた。

「坊ちゃん、申し訳ありませんでした」

 柳田は床に両手をついた。

「私は、あなたのお母様を助けられませんでした。あなたが厨房で笑っているのを見て、かわいらしいと思いながら、そのあなたが家でどれだけ怖い思いをしているか、見ようとしませんでした」

 床下の奥で、子どもの息遣いが聞こえた。

「美沙さんが泣いているのを知っていました。宗一郎様が怒鳴る声も聞いていました。それでも私は、働き口を失うのが怖かった。自分の生活を守ることを選んでしまいました」

 柳田の声は震えていたが、逃げようとはしていなかった。

「大人だったのに。あなたよりずっと大人だったのに。何もできませんでした」

 透は柳田を見ていた。

 この人もまた、久遠館に囚われていたのだ。

 幽霊ではない。

 けれど、過去から出られないという意味では、同じだった。


「ぼく」


 悠真の声がした。


「おかあさん、たすけたかった」


「はい」

 柳田が答えた。


「ぼく、ちいさかった」


「はい」


「でも、たすけたかった」


「知っています」

 柳田は泣きながら言った。

「美沙さんは、坊ちゃんが背中を撫でてくれたことを何度も話していました。『あの子に慰められてしまった』と。『本当は私が守らなければならないのに』と」

 暗闇の奥で、小さな嗚咽が聞こえた。

 それは子どものものだった。

 悠真が泣いている。

 そう思った瞬間、透の中で恐怖が少しだけ形を変えた。

 怖い。

 でも、それだけではない。

 悲しい。

 悔しい。

 あまりにも、ひどい。

 透は前に出た。

「悠真くん」

 真壁が止めようとした。

 だが、透は続けた。

「僕たちは、君を置いていかない」

 暗闇が沈黙した。

「でも、悟を返してほしい」

 返事はない。

「力も、笑も、僕も、みんな君のことが怖い。でも、知りたいねん」

 透が言った。

「悠真くんが何を見たのか。何をされたのか。どうしてここにいるのか。ちゃんと知りたい」

 暗闇がわずかにゆらめいた。

「だから、悟を返してほしい。一緒に見つけるから」

 床下の奥で、何かが動いた。

 赤いビー玉の列が、ひとつずつ光り始める。

 暗闇の中に、細い道が浮かび上がった。

 その先に、隠し部屋が見えた。

 前に悟を見つけた場所。

 だが、今度はその奥に、さらに低い隙間が見えた。

 床下のさらに奥に、人一人がようやく通れるかどうかの狭い空間があった。

 そこから、悟の声が聞こえた。


「透、こっちや」


 真壁が低く言った。

「慎重に」

 四人は進んだ。

 赤いビー玉の道をたどり、隠し部屋に入る。

 そこには、先ほど見つけた木箱が開いたまま置かれていた。日記の破片はもうない。透が持っている。かわりに、箱の中には赤いビー玉が一つだけ残っていた。

 真壁が懐中電灯を奥へ向けた。

 低い隙間に湿った土が盛ってあり、そこに何かがあった。

 最初は布切れに見えたが、次第にそれが白い寝巻きのようなものであるとわかった。

 そして透は、それが小さな骨であることに気づいた。

 笑が短く息を吸った。

 柳田が口を押さえた。

 真壁は動けなかった。

 木材の陰になっており、大人が普通に探しただけでは見逃してしまうような狭い場所に小さな骨があった。

 そのそばに、赤いビー玉がいくつも並べられている。

 まるで、誰かを待ちながら遊んでいた子どもが、最後まで手放さなかった玩具のように。

「悠真くん……」

 笑が泣いた。

 今度は、真壁も止めなかった。

 透は目を逸らさなかった。

 見つけた。

 とうとう見つけた。

 何十年も見つけられなかった子を。

 誰にも見つけてもらえなかった子を。

 今、見つけた。

 暗闇の奥から声がした。


「みつけた?」


 透は答えた。

「見つけたで」


「ほんとう?」


「うん」


「ぼく、いた?」


「いたよ」


「おじいちゃん」

 

真壁が肩を震わせた。

「はい」


「ぼく、ここにいたよ」


「はい」

 真壁は土の上に額をつけた。

「見つけられなくて、申し訳ありませんでした」

 その声は、もう旅館の主の声ではなかった。

 施設長でも、罪を背負った老人でもなかった。

 ただ、ひとりの子どもを見つけられなかった大人の声だった。

「悠真くん。私はあなたを守れませんでした。あなたが待っていることを、助けを求めていることを、分かってあげられませんでした」

 真壁は静かに泣いていた。

 何十年分も、押し殺していたものが崩れるように涙が両頬を濡らしていた。

「私は、あなたに謝るために久遠館に来たのではありません。守っているふりをして、自分がここから逃げられなかっただけです。あなたのためだと言いながら、本当は自分を罰したかっただけです」

 床下に、真壁の声が響いた。

「それでも、今言わせてください。悠真くん。あなたは悪くありません。あなたは、見つけてもらうべき子でした」

 暗闇が揺れた。

 赤いビー玉が、ひとつ、ころんと動いた。

 その音は、返事のようだった。

 そのとき、隠し部屋の奥から悟の声がした。

「……透」

 透は顔を上げた。低い隙間の反対側の柱の陰に、悟が倒れていた。

 今度は、はっきりと見えた。

 悟だった。

 顔色は悪い。

 だが、目は開いている。

「悟!」

 力が外から叫んだ。

 声が床下に響く。

 真壁が止めるより早く、透は悟の方へ這っていった。

「帰ろう」

 透は言った。

「みんな待ってる」

 悟はぼんやりと透を見た。

「……俺、何かしたか?」

「あとで話す」

「何か、夢見てたわ」

「うん」

「小さい子がいた」

 悟の目から涙が落ちた。

 悟自身も驚いた顔をした。

「なんで俺、泣いてるんやろ」

「分からんくてええ」

 透は言った。

「今は帰ろう」

 悟は小さくうなずいた。

 透は手を伸ばした。

 今度は迷わなかった。

 悟の手を掴む。

 冷たいが、間違いなく生きている手だった。

 その瞬間、床下全体が揺れた。

 ごう、と低い音がした。

 赤いビー玉が一斉に転がり始める。

 悠真の声が響いた。


「だめ」


 透は悟の手を強く握った。

 暗闇の中で、子どもの声が泣いている。


「だめ。かえらないで」


 床下の柱が軋む。

 土が崩れる音。

 笑が叫んだ。

「透、早く!」

 真壁が鈴を鳴らす。

 

 ちりん。

 ちりん。

 

 だが音は闇に吸い込まれていく。

 悠真の声が近づいてくる。


「みつけたのに」


 透は悟を引っ張った。

 悟はふらつきながら這う。

 笑が手を伸ばし、悟の反対側の腕を掴んだ。

「帰るで!」

 笑の声は震えていたが、強かった。

「みんなで帰る!」


「みんな?」


 悠真の声がした。


「ぼくは?」


 透は止まった。

 笑も、悟も、顔を上げた。

 暗闇の中に、悠真が立っていた。

 白い寝巻き。

 裸足。

 小さな手に、赤いビー玉。

 その顔は、初めてはっきり見えた。

 写真の中よりも青白く、泣き腫らしたような目をしている。

 怖くはなかった。

 ただ、寂しそうだった。


「ぼくは、かえれないの?」

 

 透は何も言えなかった。

 悠真は続けた。


「おとうさん、みつけてくれるっていった」


「悠真くん…」


「おかあさん、ぼくをおいていった」


「…」


「おじいちゃん、みつけてくれなかった。くろせのおじさんは、ぼくをかくした」


「そうやな…」


「じゃあ、ぼくは、どこにかえればいいの」

 その問いは、あまりにも幼かった。

 そして、あまりにも重かった。

 透には答えられなかった。

 代わりに、真壁が顔を上げた。

「悠真くん」

 悠真が真壁を見た。

「あなたを、お父さんのところへ連れて行きます」


「おとうさん?」


「はい」


「おとうさん、いるの?」


「います」

 真壁の声は震えていた。

「宗一郎氏の遺書があります。あなたへの言葉があります。あなたを見つけると、そう書いてありました」

 悠真の目が揺れた。


「うそだ」


「嘘ではありません」


「おとうさん、ぼくとあそばなかったよ」


「はい」


「あとでっていって、こなかった」


「確かにそうでした」


「でも」


 悠真の声がかすれた。


「ほんとうに、みつけてくれる?」


 真壁は答えなかった。

 答えられなかった。

 宗一郎はもういない。

 悠真を本当に見つけることはできなかった。

 遺書にそう書いていたとしても、それは生きているうちには果たされなかった。

 そのとき、透は胸元の遺書を思い出した。

 透は片手で悟を支えながら、もう片方の手で遺書を取り出した。

「これ」

 透は言った。

「お父さんの言葉だよ」

 悠真は遺書を見た。

 近づこうとはしなかった。

 怖がっているようだった。

 父親に拒絶されることを、まだ恐れているのかもしれない。

 透は言った。

「読むよ」

 床下が静まった。

 透は暗闇の中で、もう一度宗一郎の言葉を読んだ。

「悠真へ。お父さんは、おまえと一度だけでも遊べばよかった。池のそばでビー玉を転がすだけでもよかった。かくれんぼで、おまえを見つけるだけでもよかった。おまえが笑う顔を、もっと見ればよかった」

 悠真は動かなかった。

 ただ、ビー玉を握る手が震えていた。

「もし次に会えるなら、そのときは、必ず見つける」

 透が読み終えると、床下に小さな嗚咽が響いた。

 悠真が泣いていた。


「おとうさん」


 その声は、何度も聞いた声だった。

 だが、今までとは違った。

 脅す声でも、誘う声でもない。

 ただ、父を呼ぶ子どもの声だった。


「おとうさん、ほんとうに?」


 誰も答えなかった。

 答えられる人は、ここにはいない。

 だから透は、正直に言った。

「お父さんは、生きているときに君を見つけられなかった」

 悠真の顔が歪んだ。

「でも、君のことを忘れてなかった」

 透は続けた。

「それだけじゃ足りないかもしれない。許せないかもしれない。でも、君を見つけたいって思ってた。それは、本当やと思う」

 悠真は泣いていた。

 赤いビー玉が、小さな手から落ちた。

 ころん。

 それは土の上を転がり、透の足元で止まった。

 悠真の姿が少し薄くなる。

 けれど、完全には消えなかった。


「まだ」


 悠真は言った。


「まだ、だめ」


 真壁が顔を上げた。

「なぜですか」


「くろせのおじさん」


 その名前が出た瞬間、床下の空気が変わった。

 さっきまでの悲しみが、一気に黒く濁った。


「くろせのおじさん、まだ、あやまってない」


 悠真の目が暗くなった。


「ぼくを、かくしたのに」


 透は悟の手を握ったまま、息を飲んだ。

 そうだ。

 父の後悔。

 母の悲しみ。

 真壁の謝罪。

 柳田の告白。

 それだけでは終わらない。

 黒瀬。

 悠真をここに隠したかもしれない男。

 久遠館を奪おうとし、噂を流し、子どもの信頼を利用した男。

 その存在が、まだ残っている。

 悠真の怒りは、そこに向いている。

 そしてその怒りが、この館に染み込んでいる。

 真壁が言った。

「黒瀬氏は、もうこの町にはいません」


「いるよ」


 悠真が言った。

 全員が凍りついた。

「え?」

 笑が声を漏らした。


「いる」


 悠真は床下のさらに奥を指さした。


「ずっと、ここにいる」


 次の瞬間、赤いビー玉が一斉に奥へ向かって転がり始めた。


 ころん。

 ころん。

 ころん。


 まるで、何かの場所を示すように。

 真壁の顔色が変わった。

「まさか」

 柳田が震える声で言った。

「黒瀬は、町を出たはずでは」

 悠真は首を横に振った。


「みつけたよ」


 子どもは笑った。

 今までで一番、悲しい笑顔だった。


「ぼく、くろせのおじさんも、みつけたよ」


 床下のさらに奥から、低い音がした。

 木が軋む音と土が崩れる音に混ざって、かすかな声がした。

 大人の男の声だった。

 何十年も土の中に閉じ込められていたような、ひび割れた声。

「……出してくれ」

 真壁が息を止めた。

 柳田が口元を押さえた。

 透は悟の手を握ったまま、動けなかった。

 悠真は、ぽつりと言った。


「かくれんぼ、まだひとり、みつかってない」


 赤いビー玉の列は、さらに奥へ続いていた。

 そこには、久遠館がまだ誰にも見せていない、最後の隠し場所があるのだと、透は思った。

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