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第7話:観測者、鏡の舞踏(ミラーボール)を観測



平日の夜。始まりの町「エウレカ」。


仕事終わりのサラリーマンや学生たちでごった返す噴水広場で、僕たち4人は集合していた。


「….ねえ、これ見て」


集合するなり、シロロが不満げに空中ウィンドウを僕たちに見せてきた。


表示されているのは、冒険者端末かれ見れる『アルケ掲示板』の雑談スレッドだ。


【スレッド:変人目撃情報 Part3】

1: 名無しの冒険者:2026/02/XX(金)18:30:00 ID:moba_01

なんかキラキラ光ってるアイテム?を蹴ってる3人組を発見したんだが。

第2エリアの奥地で、霧の中をサッカーみたいに蹴り進んでた。


2:名無しの冒険者:ID:vet_05

それあいつだろ、エウレカ草原で噂になってたやつ。

「蹴り変人」とその取り巻きじゃね?


3: 名無しの冒険者:ID:new_03

なにどゆこと

PK集団?


4: 名無しの冒険者:ID:moba_01

よくわからんけど、真核蹴ってるらしい……??

あと、なんか光るフード被った男が「俺は灯台だ!」って叫んでたとかいう目撃情報も…..

あれマジで何かの儀式か? ホラーなんだが。


「…..これを見て。この変な3人組って…..」


シロロがジト目で僕、フゥ、そしてドドンパを指差した。


「君たち……よね?」


僕、ドドンパ、フゥの3人は、それぞれ別の方を向いて誤魔化そうとしたが、誤魔化しきれてはいなかった。


「…..ふむ。次の第3エリアは『火山』と『浅瀬』だ。水の需要が爆発する。今のうちに市場の『ただの水』を買い占めておくか……」


僕はブツブツと独り言を言いながら、バザーの相場をチェックして視線を逸らす。


「…..ふふ。今日も可愛いわね、私の霧石ミスト・ストーン…..。この螺旋の削り出し、何度見ても飽きないわ……」


フゥはニヤニヤしながら、手元の無骨なドリル『霧穿ち掘削』を愛でて現実逃避している。


そして、ドドンパは。


「へっ、掲示板でも話題かよ。…..『蹴り変人とその取り巻き』、ねぇ…..」


彼は新しい指揮棒『風導戦術タクト』を見つめ、深々と溜息をついた。


「…..遂に俺も『変人』の仲間入りか…….

まともな戦術士ゲーマーで売ってたはずなんだがな。

あ……」


「事実だろ。諦める」


僕が淡々と告げると、彼はガックリと項垂れた。


「…..まぁ、そうか。あの濃霧の中、必死に真核蹴っ飛ばして走り回ったんだ。…..否定はできねぇよな」


それを見たシロロの堪忍袋の緒が切れた。


「ええええ!!

何それズルい!

私がいない間にそんな可愛くて(?)強いの作ってたの!?

仲間はずれ反対ー!!」


シロロの絶叫が広場に響く。


「フゥちゃんも!ドドンパさんも!

私だけ初期装備なんて許さないからね!

なんで誘ってくれなかったの!?」


「….騒がしいな。お前が勝手に寝たんだろう」


僕はウィンドウを閉じる。


「だが、ちょうどいい。新武器の試運転テストドライブだ。

行くぞ、第2エリアボス『ミストエンシェント』へ」


「ボス!? いきなり!?」


「ああ。第3エリア『ラーヴァシャロー』はまだ運営のロックが掛かっていて入れないが、入場に必要な『称号』は今のうちに取っておく。……解禁ダッシュを決めるぞ」



第2エリア最奥。ボスゲート。


転送された先は、視界もままならないほどの濃霧に包まれた広大な森だった。


ズズズズズ……!


地鳴りと共に、霧が集束する。


現れたのは、霧で構成された巨大な古木『ミストエンシェント』。


無数の根と、霧の幻影を操る第2エリアの支配者だ。


「シャァァァ……!」


ボスが咆哮すると、霧が一気に濃くなり、ボスの姿がかき消えた。


さらに、周囲に5体、10体とボスの分身が出現する。


「うわっ、どれが本物だ!? 全部同じに見えるぞ!」


ドドンパがタクトを構える。


霧による視界不良と、分身による幻惑。

これがこのボスの厄介なところだ。普通なら長期戦は免れない。


だが――


「……ふん。可愛くない」


不満げな声が響いた。


シロロだ。彼女はボスではなく、この「映えない」空間そのものを睨みつけていた。


「こんなジメジメした真っ白な霧とか、全然テンション上がらないし!

敵が見えないとか卑怯だし!」


彼女はポーチからキラキラした粉(装飾用パウダー)を取り出すと、杖を派手に振り回した。


「もっと可愛くしてあげるー!

スキル『装飾デコレート』・スプリンクルッ!!」


キラキラキラキラ……!


彼女が放ったのは攻撃魔法ではない。

ただの「演出用エフェクト」だ。


だが、それが霧に混ざった瞬間、僕の『観測眼』にはハッキリと**【状態異常:視覚マーキング】**のログが見えた。


「なっ……!?」


真っ白だった霧が、毒々しいほどのショッキングピンクとラメ色に染まり、キラキラと輝き始めた。


「ギャッ!?」


隠れていたはずのボスの本体、そして分身たちが、ピンク色の粒子を浴びてくっきりと浮き上がる。


「霧を……デコったのか!?」


「今だ! 視界は確保された!」


僕は叫ぶ。


「フゥ、足止めだ!」


「はい……! 大地よ、逃がさない!」


フゥがドリルを地面に突き刺す。


ズガガガガッ!


『霧石壁』が隆起し、ボスの根を分断。逃げ場を塞ぐ。


お膳立ては整った。


僕は隣の相棒を見る。

指示はいらない。戦場の「見え方」が変わった瞬間、彼の『戦術士タクティシャン』としてのスイッチは既に入っていた。


「……へッ。なるほどな」


ドドンパはニヤリと笑い、タクトを掲げた。


「シロロのラメで視界確保、フゥの壁で退路封鎖。

……だったら仕上げは、この俺が『光』になるのが一番効率的スマートだろ!」


彼はタクトの隠し効果**『灯台の輝き(ライト・ビーコン)』**を発動。強烈な光が溢れ出す。


「イオリ! 射線ラインの計算は頼んだぞ!

……総員、俺の輝きに続けェェェッ!」


ギュンギュンギュンギュン!!


ドドンパが猛烈な勢いで回転を始める。


僕は杖を構え、空間の反射率を瞬時に計算する。


角度アングル修正、右3度!

シロロのラメを中継点ハブにしろ!」


「応よォォォォ!」


タクトの光がシロロのデコラメに反射し、全方位にレーザーのような光を撒き散らす。


「な、何これ!?

ドドンパさん、めっちゃ綺麗! ……っていうか、これじゃまるで……」


シロロが呆気にとられる。


「俺は……今の俺は……

ミラーボールだァァァァァ!!」


自虐的な絶叫と共に、光の弾丸となったドドンパが突っ込む。


分身たちが光の乱反射に焼かれ、最後に残ったピンク色の本体に、回転するタクトが突き刺さる。


ズドォォォォン!!


ド派手な爆発と共に、ミストエンシェントが砕け散った。


『Victory』


ファンファーレが鳴り響く中、目を回したドドンパが地面に大の字になっている。


「……目が……回る……

クソッ、これが戦術士の仕事かよ……」


「やったー! 倒したー!

最後めっちゃキラキラしてて可愛かったよー!」


シロロが無邪気に駆け寄る。


「……ふぅ。石と霧、そして光……。

計算外の現象バグだったけど、美しい破壊だったわ」


フゥも満足げにドリルを撫でている。


僕は地面に落ちた報酬を拾い上げる。


『称号:霧を裂く者』

『ミストエンシェントの樹皮』


「……また真核は落ちなかったか。

だが、これで第3エリアへの『鍵』は手に入れた」


僕はシステムログを確認する。


『第3エリア:ラーヴァシャローへの通行権限が付与されました』


「よし。これでいつ運営がエリアを開放しても、スタートダッシュが切れる」


僕は3人を振り返る。


光る回転体ミラーボール、デコ職人、石マニア。

どいつもこいつも異常だが……結果ログだけは最強だ。


「行くぞ。次は『熱』との戦いだ。

……シロロ、お前のその『デコ』、次のエリアでも過労死するほど使ってもらうぞ」


「えっ? ……なんか嫌な予感するんだけど!?」


新たなエリアへの扉が開くのを待ちながら。

僕たちの「狂気」の準備は整った。


「俺は……今の俺は……

ミラーボールだァァァァァ!!」


最高の名言が生まれました。


僕、「ゑルマ」は同時に「『Legacy online 』君が愛したのは、死んだ僕だった」と言う作品も書いております。 よろしければそちらも読んでいただけると喜びます ブクマもしてやってもいいと思っていただけるだけでもありがたいです。

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