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78/202

78,〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉。

 


 ここで王宮というと、それは王都中央の領域を示す。


 小さな町なら数個は入る規模で、この国を動かす人たちだけが、立入を許されている。私が先日行った王城は、王宮のさらに中心にあり、厳密には王がいるのはそこ。

 で、非公式な拷問機関があるのは、王宮の地下らしい。


「非公式といいますが、つまり王政府からは認可を受けている機関ですよね。すると、それもギルドですか」


「はい先生。王政府が飼っている非公式ギルドとしては、暗殺ギルドとともに歴史があるそうです」


 私は、ロクウさん、ミリカさん、サラさん、ベロニカさんと移動を開始している。


 ところで、なぜカブギルドにいたときは不在だったベロニカさんが、気づけばパーティに参加しているのか。さらにいうと、なぜ私に抱きついており、ミリカさんはいつも通り殺意を抱いているのか。つきつめて考えても仕方ないことは、多いのである。


 ところで『カブギルドは王宮内に情報網を築いている?』疑惑は当たりだったらしい。ロクウさんは地下道に入り、迷わず進んでいる。つまり拷問ギルドの本拠地を、すでに掴んでいるわけだ。私が【覇王魔窟】で500階攻略している間に、またも急速に力をつけているカブギルドさん。


 地下通路を進んでいくと、隠し扉があり、そこからさらに深くへと通路は傾斜していた。ロクウさんの説明では、この先に拷問ギルドがあるという。《小鬼ゴブリン》に擬態した『何か』が連れて行かれたのも、そこだろうと。


 私は隠し扉の入り口から、先の暗闇を眺めた。


「王政府は、もっと平和なギルドを飼うべきですね。モフモフギルドとか。モフモフしたものを愛でるギルドです。あぁ、カブギルドではなく、モフモフギルドにするべきでした。そうしていたら今頃は、もっと地方ののんびりした町で、平和な羊を飼っていたのに」


「羊ですか、先生?」


「羊の毛を、一度は刈ってみたいんですよ。モフモフでしょう」


「モフモフですな、先生」


 私はロクウさんを見やり、それからベロニカさんを見た。


「なぁに、ダーリン?」


 ダーリン呼びを地味に定着させてきたベロニカさん。

 ベロニカさんは強化武器である大鎌(デスサイズ)〈死神のそよ風〉を装備していた。武装Lv.は126。ロクウさんの強化武器である刀〈時雨晩〉の武装Lv.は187。

 私は最後にミリカさんへと視線を戻す。


「アリアさん、私の顔に何かついているのだろうか?」


 このメンバーだと、非戦闘員のサラさんを除けば、ミリカさんだけが〈開華のタネ〉によるスキルツリー覚醒者。つまりLv.上限は99か。正直なところ、3桁にいっていないのならば、ここから先に連れていきたくない。


「いえ、ミリカさんの意志の強さを考えると、ここで残るように言っても拒否するでしょうね?」


「当然だ、アリアさん」


「う~~~~ん、ごめんなさいっミリカさんっっ!!!」


 魔改造(くわ)〈スーパーコンボ〉を軽く振って、ミリカさんに直撃。吹っ飛んだミリカさんは、すっかり気絶していた。


「サラさん。ミリカさんをカブギルド本拠地まで運んでください。それとギルドメンバーに、緊急事態だと宣言し、備えさせてください。何に備えるのかは、私もまだよく分からないですが。このサブイベント、ろくなことにならない予感がします」


「わ、分かりましたっ!」


 サラさんが、気絶中のミリカさんを抱き上げて、来た道を戻っていった。

 それを見届けてから、ベロニカさんが珍しく真剣な表情で、


「アリアがここまでするなん、よっぽどね」


「先に言っておきますけど、最悪のシナリオとして《小鬼ゴブリン》に擬態した『何か』が〈攻略不可能体〉だった場合、私たちは全滅しますからね」


「〈悪鬼羅刹ザ・ボーイ〉とかいうのにボコられた身だから、覚悟はあるよ。けど、それならミリカも連れて行ってあげたら良かったんじゃない?」


「いえ、そこは〈攻略不可能体〉でなかった場合にも、強敵であることは間違いはない。その場合、最低ラインとして、武装Lv.3桁は欲しいというわけです」


 それにミリカさんは、次期領主さんなので、こんなところで死なせてはダメだ。私、ベロニカさん、ロクウさんは──正直、ここで死んでも、さほど世の中的には困らないので。


「では、先に進みましょう」


 ロクウさんが先導して、地下通路を進む。ふむ。実にダンジョンっぽい。そして拷問ギルド本拠地に到着。そこでは、変てこな光景。巨大なネズミが、20体ほど。食べ物をあさったり、交尾したりしている。


 ベロニカさんが顔をしかめた。


「うー、ドブネズミ、嫌い。可愛くない」


 ロクウさん、抜刀。


「こんなところにも魔物が?」


「魔物──なんですかねぇ? 確かに、こんな巨大ネズミ、通常の生態系では生まれませんが」


 近くにいた巨大ネズミを眺めていると、半分裂けた衣服がまとわりついているのに気づいた。どうやら、他の巨大ネズミたちも、同じように身体には半分裂けた衣服。つまり、衣服を着ている状態で、身体が膨張した──よって結論としては。


「この巨大ネズミさんたちは、もとは拷問ギルドの人たちだったようですね」


「なんですと!?」

「えぇ、うっそ! 最低ね、それは」


 と、ロクウさんとベロニカさんが驚愕中。

 私は視線を動かして、片隅の暗闇を眺めた。《小鬼ゴブリン》が一体、愉しそうに巨大ネズミたちを眺めている。


 私はまず巨大ネズミの一体を抱き上げてから、《小鬼ゴブリン》に歩いていき、挨拶。


「はじめまして。アリアです」


小鬼ゴブリン》に擬態している『何か』さんは、私を見やって、ゴブリンにしては親しみやすい表情をした。


「オイラは〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉。よろしく、なっ」


「よろしくです──何階の方ですか?」


「うーん、995階だけどー」


 すると、やはり〈攻略不可能体〉だよね。

 私は、抱きかかえていた巨大ネズミをさらに高く持ち上げて、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉さんに見せた。


「この巨大ネズミさんを、もとの人間に戻してくれませんか?」


擬態幻魔ミミクリーデビル〉さんは、ニヤニヤ笑うだけである。


 さて──私は、いま抱えている巨大ネズミを、『仲間』と認識する。その『仲間』が巨大ネズミに変えられており、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉は元に戻すつもりはない。

 これを、『私の仲間が攻撃を受けている』と解釈するならば──

 すでに『私は〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉とのバトルに突入している』と解釈できないか?


 その解釈が受け入れられるならば、《耕作:熟練者》の発動条件は、この段階で満たされる。

 いけるか、この理屈で?


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― 新着の感想 ―
[良い点] この流れは、おもむろに地面を耕し始めるヤツかっ!?そんでもってミミクリーデビルさんがメッチャ警戒するヤツ。 ミミクリーデビルさんは995階の方なんですねぇ。っていうか1人称がオイラな…
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