表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/202

77,証拠は隠滅済み。

 


「《小鬼(ゴブリン)》の大軍勢というと、5万体くらいの規模だったりしますか?」


「え? 報告では、そのくらいの規模らしいが。アリアさんも、もしや見ているとか?」


「えーと。見たことは見たんですがね」


 私の反応から何かを感じ取ったらしく、ミリカさんが恐るおそるといった様子で聞いてくる。


「ま、まさかアリアさん、その《小鬼(ゴブリン)》の大軍勢を撃破されてしまったのか?」


「そうです」


 ミリカさん、顔を輝かせる。


「さすがアリアさんだ! さっそく陛下にお伝えしよう!」


「まってください。物事は、そうすんなりはいきませんよ」


 私が幼かったころ、こんなことがあった。

 お隣のボックさんは変わり者で、ポチという名の子熊を飼っていた。人に懐いているからと、周囲の住民も受け入れていた。あるときは野犬を狩ったりして、みんなに愛された子熊のポチだった。

 ところがあるとき──近くの町から脱走した囚人が、このあたりに潜んでいるという情報が入った。そして、ある空き家に潜んでいたところ、偶然にも朝散歩中に発見したボックさん。なにを思ったか、ポチを放った。

 ポチは働いた。というより働きすぎた。

 4人いた囚人を皆殺しにしたので。

 ボックさんはポチを誇らしく思ったが、周囲の住人は、うちのいまは亡き両親も含めて、違った。

 そのとき初めて、ポチはもう子熊という大きさではないと、改めて意識されたのだ。そして、そのポチという熊は大人を4人も殺せるのだと。そんな熊が暴走したら、どうなるのかと。

 結局、反対するボックさんを説得し、ポチには眠り薬を与えてから、駆除した。


 さて、この思い出が、いまの私に伝えているものはなにか。

 王政府の立場から考えてみよう。《小鬼(ゴブリン)》の大軍勢を、単身で、しかもものの数分で全滅できる国民がいるとする。

 どう思うか? 

 私だったら、それは大いに脅威だ。もしもその者が国を転覆させようとしたら、それを防ぐ手がないことを意味しているのだから。


 私の、ひっそり生きたい、という願望が消滅しちゃうっっっ!


 という私の懸念を話す。

 ミリカさんは納得がいかぬ様子。


「だが、アリアさんは王都を救った。実際ならば、王都総出で戦勝パレードでも催すべきだ。あなたを全ての王都民が称えるだろう」


「王より人気者になることほど、面倒なことはありませんよ。ただでさえ、いまの国王は不人気さんですからね」


「だが──実際、《小鬼(ゴブリン)》の大軍勢は全滅している。もう王政府にも知らせが届いているのではないか? あれほどの規模の軍勢が滅ぼされたのだから」


「いえ、そこは問題なしです。証拠は隠滅済みですからね」


「つまり?」


「すべての《小鬼(ゴブリン)》は壊滅させましたからね。生き残りさんは、0です。また【覇王魔窟】内の魔物は、実は装備する武器さえも、撃破されると魔素に還ります。つまり『《小鬼(ゴブリン)》の大軍勢』が存在していた証拠はなくなりました。そもそも【覇王魔窟】内の魔物が外にいること自体、あり得ないことですからね。ただの幻覚だった、とかで片付けられるでしょう」


 ミリカさんは不満そうだったが、受け入れてくれた。


「アリアさんが、それを望むならば」


「信じてくださいミリカさん。必要以上に力があるのは、煙たがられるだけですよ。もちろん、この王国を乗っ取ろうというのならば、話は別ですが」


 私は冗談でそう言ったわけだ。

 しかし、ミリカさんの瞳が謎の輝きを発した。こら、そんな妖しい輝きは、やめなさい。伯爵令嬢がやると、シャレにならない瞳ですよ。

 さらに私の発言タイミングで、入室してきたロクウさんとサラさん。


 まずロクウさんが、


「国を取る! やはり先生は、そのような大いなる野望をお持ちだったのですね! 拙者、この命が尽きるまで、どこまでも付いていきますぞっ!」


「はい?」


 サラさん、持っていた書類を落として、なぜか涙ぐむ。


「ギルドマスター! あなたのビジョンは、そこまで遠くを見据えていたのですね! うう、わたしはサブマスターとして、すべてを捧げます。是非やりとげましょう、国取りを!」


「……」


 まぁ、変なテンションの人たちは忘れよう。

 確かに今となっては、『伝説のカブ』を収穫するほうが、この平凡な国を奪い取るよりも、数倍は難しいだろうけど。国というのは取るのは容易くても、維持するのが面倒なのだから。まあ、取らないけども。


「あ、それはそうと先生。《小鬼(ゴブリン)》大軍勢が謎の消滅を──」


「それは、私が壊滅させました。ここだけの話ですよ。内密にお願いします」


「おおっ! さすが先生です! ただ先生、実は一体だけ《小鬼(ゴブリン)》軍の生き残りがいたようで、王国軍が捕虜として取ったようです。一体、《小鬼(ゴブリン)》大軍勢に何が起き、どこから来たのか、それを問いただすために」


 王国軍からの極秘っぽい情報が、どうしてそう迅速に入ってきたのだろう。もしかしてカブギルドは、いまや王宮内に情報網を築いている? どうして、そんなに力をつけちゃっているのだろう。


「ふむ。《小鬼(ゴブリン)》は下層階の魔物ですからね。自我を持たないし、人間と意思疎通はできるはずもありません」


「ですが先生。どうやらその《小鬼(ゴブリン)》は、話せるらしいのです」


「話せる? 待ってください。人の言葉を話すのですか? その個体、いまはどこに?」


「なにぶん、事が事ですからね。王宮内にある非公開の拷問機関に送られたようですが。先生、どうされましたか?」


「まずい。それは《小鬼(ゴブリン)》ではないです」


 最悪のところ、その《小鬼(ゴブリン)》に擬態した者の正体は──


〈攻略不可能体〉の一体。


ブクマ登録、お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ