おばさんの死因
僕は、リョウちゃんから声を掛けられ、我に返って、おばさんの亡くなった原因を訊ねた。
「乳癌だったんです。5年位前に自分で見つけて、病院に行ったんだけど、その時には、ずいぶん進行していたみたいで・・・医者からは全摘を勧められたんだけど、母は拒絶して・・・『乳房が無くなってしまうのは絶対に嫌や』言うて、もう、歳やから誰に見せるでもないのに・・・『これは、女の命なんや、男の人には分からんことや・・・』言うて・・・それで、乳房を温存した手術したんだけど、やっぱり全部取り切れてなかったんでしょうね。今年の6月に再発して入院したら、そのまま退院はできんかったです」
その話を聞いて、僕は『もしかすると、僕がいつも吸い付いていた乳首を命を懸けて残してくれたのか・・・?』と、勝手に考えて、申し訳なく思った。
その後、僕はおばさんの妊娠のことについても訊ねた。それは、大学の時におばさんからも聞いた話ではあったが、やはり赤ん坊のことが気になりリョウちゃんにも再度確認したのだ。
「そういえば、引っ越しするとき、おばさん、妊娠してたじゃない。あの時のお子さんはどこにおられるん?」
「ああ、あの時妊娠していた子は、死産でした」
僕は「えっ!」と、おばさんから聞いた話と違うリョウちゃんの答えに耳を疑った。
「死産・・・?」
「ええ、引っ越しした時の無理がたたったのか、母の体調が悪くなって、意識なくして二階の階段から落ちたんですよ。その時、お腹を強く打って、破水して・・・一時は、『二人とも助からん』て言われたんやけど、お腹の子供は亡くなったけど、何とか母は命だけは助かって・・・ただ、その時、子宮はダメになったみたいだったですけどね」
「意識が戻った時の母は、それこそ大変で・・・毎日泣いて『ごめん、ごめん』言うて・・・亡くなった赤ん坊に謝ってたんだろうけど、誰に謝ってるのかも分からんようなくらいで・・・・・・」
「亡くなった子は女の子だったんで『アキ』って名前、自分で勝手につけて、出産予定日だった6月には誕生日もしてましたよ。ケーキとおもちゃ買ってきて、仏壇に供えてました。2歳の誕生日までだったですけどね。なぜか、母は3ていう数字が嫌いだったみたいで・・・・・・」
僕はその時初めて、あの時妊娠していた子の出産予定日が、秋ではなく6月であったことを知った。しかも、元気で生まれてその後亡くなったのではなく、死産であったことも・・・・・・
僕は、おばさんがなぜあの時、赤ん坊のことで僕に嘘の作り話をしたのかを不思議に感じながら「6月が出産予定日だったのなら、もしかすると・・・・・・?」とも思ったが、亡くなった人たちを冒涜するような気がして、それ以上は考えないことにした。




