おばさんの家へ
その当時、四国には本州への橋は架かっておらず本州へ車で渡るには連絡フェリーに乗るしかなかった。
僕は予約していた朝の早い便に車を乗せ、2等船室で横になった。
船室の白い天井を眺めながら、『果たしておばさんは僕のプロポーズを受け入れてくれるだろうか・・・?』とか考えていた。
『どう切り出そうか・・・・・・?』『そもそも、おばさんは今日家にいるだろうか・・・?』そんなことも考えているうちに、早起きの眠気につられ、知らぬ間に眠っていた。
「あと10分ほどで、到着いたします。お手回り品のお忘れ物がありませんように・・・」という船内放送で目が覚め、おもむろに身を起こした。
港には着いたものの、そこからおばさんの家まではまだまだ距離があり、どちらに車を走らせればよいかさえも分からなかったが、とりあえず、案内の看板と他の車に従って、国道に出た。
道路標識を見たり、路肩に車を停めて、購入したての道路地図を広げたりしながら、何とかおばさんの家のある市内に入ることができた。
そこから、おばさんの家にたどり着くまでは、それこそ道路地図とにらめっこをしながら、行ったり戻ったりを繰り返し、ようやく近くと思われる場所にまで到達した。
そこからは、住宅街の狭い道になったため、少し広い場所があると、車を停め、車から降りて徒歩で探したりした。ところどころ電柱や個人宅の外壁に貼ってある地番を書いた小さなプレートを見ながら探し回った。
うろうろと歩き回っていると、小さな公園の外に団地内の住宅地図が掲示されているのを見つけた。
その中から『小川』という文字を探し当てた時は、飛び上がるほどうれしかった。
これこそ、神様のおぼしめしと思い、僕が今日おばさんにプロポーズをするということが、すでに決まっていたことのように思えた。
僕は急いで停めていた車に戻り、『小川』さんの家の方へ車を走らせた。
『小川』さんの家を通り過ぎたところの道路が少し広くなっていたので、とりあえず僕はその場所に車を停めて『小川』さん宅を訪ねた。
『小川』さん違いではいけないと思い、僕は門柱の横にある郵便受けに書かれていた名前を確認した。
そこには、間違いなくリョウちゃんのお父さんと思われる男の人の名前と『和子』、『涼太』と書かれていた。
僕は、おばさんが留守でないことを願いながら、玄関の呼び鈴のボタンを押した。
中から「は~い」という女性の声が聞こえた。その声は、間違いなく、あの優しいおばさんの声だった。「いた」・・・・・・「いないかも?」という僕の不安がおばさんに会える喜びに変わった。
僕は、ドキドキする胸を押さえながら、おばさんが玄関のドアを開けるのを待った。
『ガチャ』・・・ドアが開いた。
僕の顔を見るなり、おばさんは一瞬何が起こったのか分からないといった驚いた表情を見せた。
「・・・ケンちゃん・・・・・・いったいどうしたん・・・?」おばさんは驚いた表情のまま僕にそう聞いた。
僕は、そのおばさんの驚いた表情に、少し照れながら「来ちゃいました・・・」と言った。
「来ちゃったって・・・いったいどうやって?」
おばさんは、突然のことで、今の状況が全く呑み込めていない様子だった。
「・・・ま~、寒いから、とにかく中に入って・・・」と僕を家の中に招いた。




