おばさんの住所
「でも、今日こうしてケンちゃんが僕に会いに来てくれて、本当にうれしかったです」
リョウちゃんは、先ほどの話から話題を昔の楽しかった日々に変えてくれた。
僕たちは、そのまま昔話に花を咲かせ、リョウちゃんがずっと疑問に思い続けてきていた事柄への回答は終了した。
その時、僕は、今日、リョウちゃんに会いに来た最大の目的を思い出した。初めの、リョウちゃんの先制攻撃で動揺し、危うく忘れてしまうところだった。
「そういえば、リョウちゃんの家って、今どこにあるの?」
リョウちゃんは、飯を食いながら目をこちらに向け、「僕の下宿ですか?」と聞いた。
「イヤ・・・下宿の住所は、さっき学務係で聞いたから知ってるんで、実家の住所を教えて欲しいんや・・・」と僕は言った。
「別にいいですけど、なんで・・・?」と、質問好きのリョウちゃんは聞いてきた。
「いや、もうすぐ正月やから、年賀状出そうと思って・・・どうせ、正月は実家に帰っとるやろ?」と、もっともらしい理由を述べた。
この、実家の住所を教えてもらう理由については、冒頭の予期せぬ質問への回答とは違い、ちゃんと用意してきていた。
「年賀状か・・・もうそんな時期なんですね・・・下宿に出してもらってもいいけど・・・・・・今の実家の住所は●●●●●です。」と答えてくれた。
僕は、喫茶店の娘さんに紙と鉛筆を借りてその住所を書き留めた。
「ケンちゃんが年賀状くれるんなら、僕も出すんで、ケンちゃんの住所も教えて下さい」
僕たちは、お互いの住所交換をした。
その後、昔話や近況をあれこれ話しながら、定食を食べ終え、「また、近いうちに飲みに行こう」と言って別れた。
僕は、一番の目的だったおばさんの住所が聞けたので、それがどの辺なのか調べるため、道路地図を購入しに大学の近くにある書店に急いだ。




