リョウちゃんとの再会
僕は、急いで大学に戻り、学務係を訪ねた。
そうして、自分の名前とリョウちゃんの名前、学部を告げて「幼馴染なので、住所を教えて欲しい」と言った。
その当時は、個人情報の管理が今ほど厳しくはなく、本人の素性が明らかで正当な理由さえあれば、住所を聞き出す程度のことは容易いことであった。
僕も同じ大学の学生だったので、なおさら、学生証を見せただけで、難なく、係の女性職員は僕のところに学生名簿を持ってきてくれた。
さらに、「大学に届けられてる住所はここにあるとおりだけど、法学部の1回生なら、ちょうど今時間は、大講義室で日本国憲法の講義受けてるんじゃない?」と教えてくれた。
僕は、ペンを借りて、先ほどおばさんが残していった走り書きのメモ用紙の裏にリョウちゃんの住所を書くと「ありがとうございます。大講義室も覗いてみます」と言って学務係のある棟の隣にある大講義室に向かった。
大講義室の後ろのドアを開けて、中に入り一番後ろの席に腰掛けた。
講義は、もうすぐ終わる時間であった。
講義が終わり、後ろの出入り口に向かってきた学生の一人をつかまえ、「小川涼太君て、どの子か知ってる?」と聞いた。その学生は、頭をかしげ「知らないです」と答えた。
大講義室での授業なので、聴講していた学生は法学部の1回生だけではなかったようであった。
しかし、そんなやり取りを後ろで聞いていた女学生が「小川君なら、あそこで、今カバンにノート入れてる、あの子です」と前の方を指さして教えてくれた。
僕は「ありがとう」と、その女学生にお礼を言うと、人流に逆らい、急いでその男子学生のところに行った。
「リョウちゃん、久しぶり」僕がその男子学生の前でお辞儀をすると、その男子学生は初め怪訝そうな顔で、僕の顔を見ながら「どなたですか?」と聞いてきた。
僕が「ケンジだよ・・・ヒカル ケンジ・・・」と答えると、リョウちゃんは少しだけ間をおいてから「・・・えぇー、ケンちゃん・・・・・・うわ、本当にケンちゃん・・・懐かしい・・・・・・うわぁ・・・そういえば、なんとなく面影あるわ・・・」と驚きながら喜んでくれた。
リョウちゃんはメガネをかけていたが、やはりリョウちゃんも当時の面影が残っていた。
「ほんと、久しぶりだね・・・」僕は右手を差し出し、握手を求めた。それを見て、リョウちゃんもすぐに両手で僕の手を握り返してくれた。
二人で大声を出して盛り上がり、握りしめた手と手を大きく上下させて再会を喜んだ。
それを横で見ていたリョウちゃんの同級生たちが「俺たち、先、学食行っとくぞ」と言って講義室を出て行った。
「おう、悪い悪い、先行っといて」そう言って、リョウちゃんは同級生たちに謝った。
「ゴメンね、友達に悪いことしたね」
僕は、そう言ってリョウちゃんにわびた。
「別に、気にすることないですよ。あいつらとは、毎日メシ食ってるんだから・・・」そう言ってリョウちゃんは笑った。
「ケンちゃんも、昼メシこれからでしょ?一緒に学食でいいですか?いろいろ、懐かしい話もしたいし・・・」
「いや、そこの『学生街』に行こうよ」
僕は、落ち着いて話がしたかったので、大学のすぐ近くにあった喫茶店にリョウちゃんを誘った。
「いいですけど、ちょっと学食寄って、あいつらに断ってから行きます。ケンちゃん、先行っといて下さい」
リョウちゃんは、そう言うと学食に走って行った。
僕は、一旦リョウちゃんと別れ、一人で『喫茶 学生街』に入った。




