次の朝
次の日、僕は目覚まし時計の音で目を覚ました。
もう、時刻は午前9時になっていた。
僕は、僕の横におばさんのいないことに気づき、おばさんの姿を探した。
トイレにでも行ったのかと思いながら、しばらく、ボーっとした頭でベッドに横たわっていたが、おばさんが僕の横に戻ってくることはなかった。
僕は慌てて飛び起き、トイレに探しに行こうとしたとき、枕もとに一枚のメモが残されているのに気付いた。
そのメモには、走り書きでこう書かれていた。
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『ケンジさんへ
昨晩は、素敵な夜をありがとう。
昨晩の出来事は、素敵な思い出として、一生忘れずにいます。
もう少しで、大学もご卒業だと思いますが、これからも、一生懸命勉強をして、
立派な人になって下さい。
(世の中には、勉強がしたくても、いろいろな事情で、そうすることができない人
たちも沢山いるのだから、勉強ができる自分は幸せなんだと思って・・・)
ホテルの宿泊代は、もう、払ったので、二重に払わないように。
それでは、また、いつか会える日を楽しみにしています。
和子』
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僕は、そのメモを読み、おばさんを見送れなかった自分の朝寝坊の不甲斐なさを後悔した。
まだまだ、眠い目をこすりながらバスローブを脱ぎ、シャワーを浴びて、自分の服に着替えている時だった。
僕が、上着で着て来たブルゾンの内ポケットに何かが入っているのに気付いた。
何だろうと思いながら取り出すと、それは夕べのパブでおばさんが僕に差し出してきたお金の入った、あの分厚い封筒であった。
改めて中を確認すると、あの時のことを僕に詫びる手紙と一万円札が20枚入っていた。
手紙の内容を確認する間もなく、僕はすぐにおばさんを追いかけなければと思い、今いるラブホテルを飛び出し昨日のホテルに向かった。外は小雪が舞っていた。
おばさんが宿泊するはずだったホテルに走り、急いでフロントに行っておばさんがいるか尋ねたが、時すでに遅く、おばさんは僕の来るずいぶん前にチェックアウトしていた。
僕は、その時になって、おばさんの今いる家の住所や電話番号を聞いていなかったことに、初めて気づいた。
ロビーにある昨日おばさんを待ったソファーに、どうしたものかと途方に暮れながら、力なく腰を下ろした。
実家の母親なら、聞いているかもしれないとは思ったが、そんなことを聞けば、おばさんと会ったことや、何故そんなことを知りたいのか説明しなければならなくなってしまい、そもそも、それをしたところで、母親だって聞いていない可能性の方が高いと思い、その考えは、僕の中であっさりと否定されてしまった。
セックスすることだけに夢中になり、おばさんの連絡先さえ聞いていなかった自分が情けなくなって苛立った。
時を巻き戻すことのできない苛立ちだった。
その苛立ちで、自分の頭を掻きむしっている時、ふと、リョウちゃんが自分と同じ大学の法学部に入学したと、おばさんから教えられたことを思い出した。
もう、頼みの綱は、リョウちゃんだけになった。




