寒空の下の二人
長い時間、そんな風に二人黙ってベンチに腰かけていたと思う。
おばさんは、僕の肩に頭をもたせたまま目を瞑り、眠っているようにも思えた。
そんな、おばさんの顔をじっと見ていると、とても愛おしくなり、僕はそっと、おばさんの顔に自分の顔を近づけ、口づけをした。
おばさんは、そんな突然の僕の行為に驚き、すぐに目を開けたが、僕の顔を見ると、再び安心したように目を閉じた。
しばらく、そんな風に二人はお互いの唇を通じて一つになっていた。
12月の夜風が僕たちの身体を容赦なく冷やしていった。
「寒うなったね・・・場所を変えよう・・・」
僕はおばさんの唇から僕の唇を離し、そう言った。
「ずっとこうしていたい・・・・・・」おばさんは、女児のようにダダをこねた。
「身体、こんなに冷とうなって・・・暖かい場所で、また、こうしたらいいから・・・」
僕は、暗におばさんをホテルに誘った。
「暖かい場所って・・・?」おばさんが僕に小さな声で尋ねた。
僕は黙って入り江を挟んで対岸に見えるネオンの煌びやかなホテルに顔を向けた。
おばさんは、そんな僕の目線を追って、そのホテルを見つけた。
「ダメよ・・・私、ホテルに荷物置いてるし・・・帰らなきゃ・・・・・・」
「そんなん、明日の朝、取りに行ったらいい・・・」
「そんなんだったら、私が泊ってるホテルにケンジさんも来たらいいわ」
「せっかくだから、行こうよ・・・・・・」
僕は、おばさんをしつこく目の前のラブホテルに誘った。
おばさんは、そんな僕の懇願に最終的には黙ってうなずいた。
僕たちは、その寒々とした空気の中にあるベンチから腰を上げ、対岸に向かって歩き出した。




