海の公園
おばさんが自分の腕時計を見て「・・・もうこんな時間・・・そろそろホテルに戻らんと・・・」と言うまで、僕たちは時のたつのも忘れ話し続けていた。
お勘定は、「どうしても・・・」と言って、おばさんが済ませてくれた。
僕は先ほどのこともあり、あまりそのことを拒まず、「どうもすみません・・・ごちそう様・・・」と言って店を出た。
おばさんは、顔がほのかにピンクで、眼がうつろになっており、足も少しフラフラしていて、酔ってる僕が見ても、明らかに酔っていた。
店を出た僕たちは、12月の寒空の下、港の見える道を肩を寄せ合って、フラフラ歩きながら、港の公園のベンチにたどり着いた。
クリスマスに向けて街路樹に飾りつけられたイルミネーションは、否が応でも僕たちのような男女のカップルの心を盛り上げた。
さらに、真っ暗な海に、灯台の明かりや、ホテルのネオンなどたくさんの色の光が映り、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
おばさんは、そんな海を眺めながら、そっと僕の肩に頭をもたせかけてきた。
僕は、少し驚き、おばさんの方に顔を向けたが、そのまま黙っておばさんの肩を静かに抱き寄せた。
「もっと、若いときに、今のケンジさんに出会いたかったな・・・・・・」小さな声で、おばさんが言った。
僕が聞こえなかった振りで黙っていると、「でも、ケンジさんが相手にしてくれないか・・・・・・」自分自身につぶやくように、おばさんは、さらに小さな声で言った。
「そんなことないよ・・・和子さんみたいな女性、ほっとく男なんかいる訳ないやん・・・」
僕がそう言うと、おばさんは僕の肩にもたせていた頭を上げ、少し笑いながら「ケンジさんて、昔から口が上手やね・・・・・・」と言った。
「でも、ありがとう・・・嘘でもうれしいわ・・・」とおばさんは言った。
「ウソじゃない・・・僕の本心だ・・・」
・・・そう言いたかったが、なぜかその時は、そんなことを言うこと自体が白々しく思え、僕は黙って肩に回していた手に力を入れて、おばさんを自分の方に抱き寄せただけだった。




