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僕の性日記  作者: 水野 流
再会
59/85

おばさんの贖罪


「アキはね・・・元気に生まれるには生まれたんやけど・・・・・・その後、小児がんになって・・・2歳の誕生日を迎えた後に亡くなってしもうた・・・・・・」


おばさんは、ますます悲しそうに、そう言った。


僕が暗くなった場を明るくしようと出した話題がさらにその場を暗くした。

立て続けの悲しい話にそれ以上のことは聞くことができなくなった。



だが、おばさんは、その後口ごもってしまった僕の本心を見抜いたように、

「でも、安心して・・・アキちゃんは、お父さんとの子供だから・・・・・・アキは秋に産まれたから、アキ・・・単純でしょ・・・?」おばさんは、力なく笑った。笑いながらおばさんの目には光るものがあった。


「ケンジさんも、トツキトウカって聞いたことあるでしょ・・・?」

「あの時の子供だったら、春に生まれるはずだもん・・・」

おばさんは、理論的に僕がずっと気にしてきた心配事を打ち消した。


僕は、その時、おばさんが引っ越しの挨拶時に「秋ごろ産まれる」と母に言っていたのをおぼろげに思い出していた。



その後、僕はやはり次の会話が思いつかず、二人ともがまたしても沈黙している時だった。


おばさんは、急に真剣な顔をしてこう言った。


「ケンジさん・・・何も言わんと、これ受け取って・・・・・・」

そう言うと、ハンドバックの中から、分厚い封筒を取り出して僕に渡した。


僕は「何ですか・・・?」と言って、その封筒を受け取り中を見た。


中を見ると、一万円札が何枚も入っていた。


僕はそのたくさんのお札を見て急に酔いがさめ、慌てて「これ何なん・・・?」とおばさんに尋ねた。



「私、あの時のことを、本当に後悔してるんよ・・・本当にバカやったと・・・・・・」


僕には、初めおばさんが何のことを言っているのか分からなかったが、すぐに、「あの日のことか・・・?」と思った。


「あの時は、私、自分のことしか考えられんようになってて・・・ケンジさんの気持ちなんか、何も考えてなかった・・・」

「本当にごめんなさい・・・・・・」


そう言うと、おばさんはうつむいて涙を流した。


僕は、そんな話を聞いても、こんな大金を受け取ることはできないと思い「いけんよ・・・こんな大金受け取ることはできん」と言って、その封筒をそのままおばさんに突き返した。


おばさんは、「そんなこと言わんと・・・・・・私の気持ちが晴れんから・・・・・・」と言いながら、僕の突き返した封筒をさらに突き戻してきた。


お互いに「イヤイヤ・・・・・・」と言いながら、その封筒を押したり引いたりしていると、注文していた料理を持ってウェーターがやって来て、とりあえず、その時、封筒を持っていたおばさんが、その封筒を自分のところに納めた。


「本当に、そんなお金はもらえんから、そのまましまっとって」僕はそう言って、話題をまたリョウちゃんのことに戻した。



「へぇ~、リョウちゃんが俺の後輩になったとはね・・・・・・」僕はわざとに大きな声で笑った。


おばさんは、その僕の言葉に「これからも、昔のように、仲ようしてやってね」と言ってほほ笑んだ。


そのまま、先ほどの封筒の件は忘れ去られた・・・・・・と思った。


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