おばさんとの再会
僕は、ホテルに着くとフロントで自分の名前とおばさんの泊っている部屋番号を言い、呼び出してもらった。
ドキドキしながらホールのソファーに座って待っていると、やがて、美しい女性がエレベーターで下りてきて、フロントで何か聞いていた。
僕は絶対にそれがおばさんだと思ったが、なにぶん10年近く会っていないので、もし間違えていたらいけないと思い、そのままソファーに座って新聞を読んでいた。
フロントは、僕の方を指さしながらその女性に何か話していた。
「やはりあの、美しい女性がおばさんだ・・・・・・」僕は確信した。
その、美しい女性は、ゆっくりと僕の方へやって来た。
そして、僕の目の前に来ると「ケンちゃん・・・?」と声をかけてきた。
僕は、久しぶりの恥ずかしさから、気付いていなかったふりをして、ゆっくりと新聞を下げて「そうです」と言った。
おばさんは、びっくりしたように喜び「まあ!ケンちゃん・・・立派になって・・・」と言った。
そして「小川和子です・・・リョウタの母親の・・・」と言って頭を下げた。
僕は、新聞を持ったままソファーから立ち上がり、「お久しぶりです」と言った。
おばさんは、昔アップにするために長くストレートだった髪を少し短くして、裾の方にパーマをかけていた。
当時よりも、ますます美しく、若返ったよう見えた。
おばさんは、僕の前のソファーに腰かけ、「突然ゴメンね」と言った。
「ゴメンね」というセリフは、子供の頃、おばさんから一番聞いたセリフだったかもしれない。
僕は「謝ることなんかないですよ・・・おばさんに再会できるなんて、本当にうれしいです」と答えた。
おばさんは、そんな僕の言葉を聞いて「ありがとう」と言ってほほ笑んだ。
「この後、何か用事ある?」と聞いてきたので、「何も予定はないです」と答えた。
その僕の返答を聞いて、おばさんは「それなら、一緒に晩御飯でもどう?」と言ってきた。
もちろん、僕もそのつもりだった。
「特に予定もないし・・・別にイイですよ」僕はもったいつけた返答をした。
「わぁ~うれしい・・・どこ行こうか?」と聞いてきたので、僕はそのホテルから歩いて行ける、港のそばにある、それまでにも何度か行ったことのあるパブに行こうと言った。
「おばさん、ここら辺のこと、よう分からんから、ケンちゃんにまかせるわ」と言って、おばさんは僕の意見に同意した。




