おばさんとの晩御飯
「おなかすいたね・・・晩ご飯何がいい・・・?」とおばさんが聞いてきたので、僕は大好きな「カレーライス」と答えた。
「カレーか・・・今から煮込めるかな・・・?」とおばさんが言ったので、僕は、二番目に好きな「ハンバーグでもいいよ」と言った。
「それなら、ちょうどひき肉もあったし、すぐに作れるわ・・・本当にハンバーグでいい?」とおばさんは、飯台に手をついて立ち上がった。
その時、部屋に散らかっているたくさんのティッシュペーパーの塊がおばさんの目に入った。
おばさんは、それを見て、また少し涙目になった。
「ケンちゃん、おばさんハンバーグ作るから、悪いけどお風呂沸かしてきてくれん?」
そう言って、僕をその部屋から追い出した。
僕は、部屋を出るときおばさんが、また泣きながらいくつもあるティッシュの塊を拾い集めているのを見た。
その時、僕は本気であのゴロツキ三人組を殺してやりたいと思った。
風呂に火をつけ、どうすれば、警察に捕まらずあの三人をうまく殺せるか、あれこれ知恵を巡らせた。
そんなことをずっと考えていたので、風呂を沸かしに行ってからずいぶん時間がたってしまった。
おばさんが、そんな僕を「ケンちゃん、ご飯できたよ・・・」とわざわざ庭に降りて呼びに来てくれた。
時間がかかった方が、おばさんも、しばらく一人で泣くことができて良かったかもしれないと思いながら、飯台の部屋に戻ろうとすると、おばさんが「今日は二人やし、台所のテーブルで食べよう」と言って、台所の方に僕を招いた。
もしかすると、お昼嫌なことのあったあの部屋では食事がしたくなかったのかもしれない。
台所に行くと、おいしそうなハンバーグと茶碗に盛られたご飯が湯気を上げながらテーブルに置かれていた。
僕とおばさんは、その小さなテーブルに向かい合って座り、「いただきます」と言って手を合わせてから食事をした。
その時には、おばさんはいつもの明るいおばさんに戻っており、初めてお父さんに作った料理がハンバーグだったとか、新婚の頃を思い出すとか、いろいろな昔話を僕に聞かせてくれた。
僕も、その時には、あの嫌な三人組を殺すという頭はなくなっていた。
ただ、おばさんは自分の食事に一口も口を付けず、ただ、僕が食べ終わるのを待っているだけだった。
それに気づいた僕は、「どしたん・・・?食べんの・・・?」と聞いた。
おばさんは「・・・今まだお腹すいてないけん・・・ケンちゃん、よかったら、これも食べる・・・?」と聞いてきた。
僕は、おばさんの作ったハンバーグがとてもおいしかったので「かまんの・・・?」と聞いて、遠慮せず、おばさんの分も平らげた。
おばさんは、そんな僕をニコニコしながら・・・それでも時折悲しそうな顔をして、見ていた。
食事が済むと、おばさんは「ケンちゃん、先にお風呂済ませて・・・」と言った。
僕は、本当はまたおばさんと一緒にお風呂に入りたかったが、今日の出来事で、そんなことをおねだりできる状況でないことが十分にわかっていた。
再び、あの三人組を殺してやりたいと思った。
僕がお風呂から上がると、部屋には、もう布団が二つ並べて敷いてあった。
僕の布団は、きれいなお客さん布団であった。
「それじゃ、おばさんもお風呂入って来るから・・・眠かったら先に寝ててもいいよ・・・」
「寝ててもいい」と言われても、まだ8時過ぎで、とても中学生が眠る時間ではなかった。
僕は、「テレビ付けてもいい?」と聞いてテレビの電源を入れた。
おばさんは、お風呂に行ってから、なかなか戻ってこなかった。
僕は急に不安になり、お風呂に行って、外からおばさんに声をかけた。
「おばさん・・・大丈夫?・・・」
その声を聞いて、我に返ったように「・・・うん・・・大丈夫よ・・・・・・」と言う、少し涙声のおばさんの返事が返って来た。
お風呂の中でも、昼間の嫌な出来事が思い返され、また一人で泣いていたのかもしれないと、僕は思った。




