その後
僕たちは、しばらく、そのままの状態で抱き合っていた。
何時間もそうしていたようにも感じたが、実際には数分間のことだったように思う。
僕は、静かにおばさんの中から僕の分身を抜き取った。
今度は、おばさんも「ダメ」とは言わなかった。
僕は、自分の身体についた精液をふき取ると、先ほどおばさんに脱がされたパンツと短パンをはいて、飯台のところに座った。
おばさんは、しばらく眠ったように静かに横になっていたが、やがて、ヨロヨロッと上半身を起こすと、僕と同じようにティッシュでまだまだ流れ出る僕の精液をふき取り、そこに脱ぎ散らかされていた自分の下着を身に着けた。
そうして「ケンちゃん・・・ゴメンね・・・」と力なく言った。
その言葉に僕は「何があったん・・・?」と再度訊ねた。
でも、おばさんは下を向いたまま「今は何も聞かんとって・・・」と言って黙った。
「今日、朝、部活行くとき、目つきの悪い三人組に合うたんやけど、そいつらが関係しとる・・・?」僕は、勇気を出して僕の想像している最悪のシナリオを、おばさんの願いを無視して訊ねた。
おばさんは、僕の「目つきの悪い三人組」という言葉を聞いて、驚いたように、下を向いていた顔をこちらに向けた。
僕は、そのおばさんの反応に、「やっぱりか・・・?」と嫌な予想が的中したことを感じた。
おばさんは、「何も聞かんとってって言ったやん・・・」と小さな娘のように叫ぶと、両手で顔を覆い泣き出してしまった。
僕は、びっくりして、もうそれ以上おばさんに問うことができず、じっと黙って、そんなおばさんの様子を見ていた。
手で顔を隠し、泣き続けるおばさんを見ながら僕がどうすればよいか迷っていると、おばさんが小さな声でぽつりと言った。
「ウチ、死んでしまいたい・・・」
あまりの声の小ささと、その内容に僕は思わず「えっ・・・?」と問い直した。
「ウチ、もう死んでしまいたいんよ・・・」
今度は、僕にもはっきりと聞こえるように、大きな声で言った。
いつも僕の前では自分のことを「おばさん」と言っていたのに、「ウチ」と言うのはその時が初めてで、それだけ、本心からの言葉のように聞こえた。
僕は恐る恐る「なんで・・・死ぬん・・・?」と小さな声で聞いた。
おばさんは、その問いには答えず、また両手で顔を覆った。
「あいつらに、手籠めにされたん・・・?」
僕は、さらに僕が想像していた最悪のシナリオを確認した。
「手籠め」とは、その当時テレビで放送されていた人気時代劇の中で、町娘が男らに乱暴されるときに出てくる言葉であった。
おばさんは、「手籠め」という言葉を聞いて、再びドキッとした顔をしてこちらを見た。
「見たん・・・?」
僕が前に白石のおっちゃんとの行為をのぞき見したことを思い出したのかもしれない。
僕は頭を横に振った。
「見とらんけど・・・なんとなくそんな気が・・・・・・」
おばさんは、しばらく僕を見つめたまま黙っていたが、やがて、その重い口を開いた。
それはそれは小さな、それこそ蚊の鳴くような声で「・・・・・そう・・・おばさん、あの男らに乱暴されたんよ・・・・・・」
「何回も・・・何回も・・・」
「イヤや・・・言うたのに・・・」
そこまで言うと、おばさんは、また両手で顔を覆った。




