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僕の性日記  作者: 水野 流
経験
32/85

謝りに行った日


僕は、その日寝床に入るまで、ずっと気分が晴れず、いつものようにはしゃぐ気分にはなれなかったが、その分、姉の方がテンション高めで振舞っていた。

僕のせいで家全体が暗くなるのが嫌だったのだと思う。



次の日、目が覚めても、やはり気分は晴れず憂鬱なままだった。

そして、この憂鬱な気分を晴らすには、おばさんに謝りに行くしかないと思った。


僕は、朝ご飯を食べ終わると、勇気を出してリョウちゃんの家に行くことにした。


「ちょっと、出かけてくる」そう言って玄関に行っていると、母が「もうケンカはしたらいけんよ」と言った。

やはり、母は、その時も、僕が友達とケンカをして元気がないのだと思っているようだった。僕はその母の言葉を聞いて「うん。分かっとる」と言って家を出た。



リョウちゃんの家の前まで来ると、急に先ほどまでの「謝らなければ」という気持ちがしぼみ、

「おばさんは、まだ怒っているだろう・・・?」

「やっぱり、このまま放っておいて、時が解決してくれるのを待とうか・・・?」

・・・などという、逃げの心が芽生えてきた。


そんな感じで、なかなかリョウちゃんの家の戸を開けることができず、玄関先でまごまごしていると、突然「ガラガラ」と玄関の開き戸が開いた。



おばさんが、玄関をホウキで掃いて掃除をしていたのだ。


「あら、ケンちゃん・・・来てたん?・・・」とおばさんは、昨日のことなどなかったようにいつもの口調で言った。


「今日は、リョウタおらんよ・・・あの後、おばあちゃんとこ行きたい言うて、夕べから泊りに行ったんよ・・・夕方には帰って来るわ」と普段どおりに言ってくれた。


しかし、僕は突然おばさんが出てきたことで動揺し、しばらく下を向いたまま無言で突っ立っていた。


そんな僕の様子を見て、おばさんは「どしたん?・・・リョウタおらんけど家入る?」と言ってくれた。



僕は、やっと勇気を出して昨日のことを謝った。

「おばさん、昨日はごめんなさい・・・あの事、みんなに言うちゃるって言ったけど、誰にも言いません。本当にごめんなさい・・・」


そこまで言うと、こらえていた涙が一気にあふれてきて、それ以上は何も言えなくなった。


そんな、僕の謝罪をおばさんは黙って聞いていた。



しばらく、沈黙が続いた。



その沈黙を破ったのはおばさんだった。


「分かっとる・・・おばさん、ケンちゃんがそんな約束破る子やなんて思ってないよ・・・」



「おばさんも、悪かったんよ。ケンちゃん、今、思春期で異性に興味がわいとるときやのに『一緒にお風呂入ろ』なんて言うてしもうて・・・そやのに、その後は、大人の常識で 『ダメ!』『ダメ!』ばっかり言うて・・・」


その言葉を聞いて、ふとおばさんの方に目を向けると、おばさんの瞳も潤んでいた。



「ケンちゃん、謝りに来てくれて、ありがとね・・・リョウタおらんけど、中入って・・・」


僕は、おばさんが「ありがとう」と言ってくれたことで、「やっぱり謝りに来てよかった」と、うれしくなった。


僕は、さっきまでとは一転、喜び勇んで「お邪魔します」と言うと、いつもの部屋に入って畳の上に座った。


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