一九四五年の任務 ――第二期第二回陝甘寧辺区参議会における演説――(一九四四年十二月一五日)
「一九四五年の任務(十二月十五日在辺区参議会演説)」 『解放日報』一九四四年一二月一六日刊(一ページ)
〔註注〕 陜甘寧辺区第二期第二回参議会(資料28〔註注〕参照)での提案。解放区の拡大に始まる一五項目の解放区人民の任務を提起しただけでなく、日本軍占領区の工作を解放区工作と同等の重要な地位にまで引き上げなければならない点でも注目される。二月一九日の『過去二・二次参議会関於徐府工作布告的決議』(二月二三日付『解放日報』)で本提案の批准が決定された。
一九四四年はずぐ終わる。われわれの一九四五年ににおける任務は何か? われわれには、来年とくに注意して行なわなければならないどんな工作があるのか? 反ファッショ戦争全体に巨大な勝利があり、ヒトラーの打倒は来年は実現できるであろう、われわれの唯一の任務は、連合国に協力して、日本の侵略者を打倒することである。現在、アメリカはすでにレイテ島に上陸したし、また中国上陸も可能になっている。同時に、日本侵略者はすでに東邦からシンガポールまでの大陸交通線を切り開いたし、中国の被占領地区はより一層拡大した。敵がその進攻を停止することがありうるだろうか? 私の見るところでは、まだ停止することはあるまい、彼らには、まだわが国の四南部および西北部に進攻する可能性がある。この期間には、日本侵略者はきっと計略を許し、中国の投降主義者を通じて、中国政府に投降するよう誘いをかけるであろう。中国内部は依然として不団結の状態で、国共党間の交渉にはなんの成果もみられず、中国人民の抗日勢力は中国反動派の手によって、人為的に分裂させもれているであろう。
正面戦場での戦いは次から次に敗北するが、国民党当局は依然として、全国人民から不満に思われている一党独裁およびその敗北主義的政策を固執しつづけ、抗戦・団結および民主に有利なすべての提案を拒絶しつづけるであろう。苦労して建設された広大な中国解放区のが、孫中山先生の革命的三民主義、すなわち新民主主義を実行し、各界人民を結集し、勇敢な軍隊を樹立し、すべての敵の進攻を粉砕するとともに、攻勢に転じ、奪われた広大な土地を奪回しうるであろう。こうした状況のもとで、われわれは何をなすべきであろうか?
全国の人民に次のことを理解させなければならない。すなわち、人民の力によって、国民党・共産党その他の抗日諸党派および無党派の人びとが、民主主義を基礎として、国事会議を召然し、連合政府を組織しなければならず、そうしてこそはじめて、中国のすべての抗日勢力を統一し、日本侵略者の進攻に反対するとともに、連合諸国に協力して、日本侵略者を中国から駆逐することができるということを理解させなければならない。われわれは、林祖同同志を通じて、かつて国民参政会にとりくんだし、のちにまた、国民党当局にも書面で提起した。最近では、周恩来同志がまたとくに関重に交渉に出かけた。だが、依然としてなんの結果も得られない。今では、たんに交渉するだけでは成功し得ないことはきわめて明瞭であり、全国人民が一致して起ち上がり、大声疾呼し、国民党当局に現行政策を改めてすみやかに民主的な連合政府を横立することを、要求するよう希望したい。これは全国人民的全般的任務であり、中国人民は、大後方にあろうが、被占領地区にあろうが、解放区にあろうが、みなこの目標のために闘わなければならない。中国に、真に民主政策を実行する、中国のすべての抗日勢力を動員し統一させることのできる連合した中央政府が出現さえすれば、中国の抗日戦争の勝利と中国人民の解放は、もう間近であろう。この目的のために、みんなが多くの方法を考え出すべきである。
大後方では、われわれは反動当局に抑圧されている民主愛国運動をたすけなければならず、すべての力を動員して敵の進攻に抵抗しなければならず、投降主義者が民族を裏切り、敵に投降する陰謀活動を警戒しなければならない。青年およびその他の各界では、大勢で敵の占領地区に出かけて、游撃戦争を行なうべきだし、広範な大衆は、敵がやってくる可能性のあるすべての地方で、実地に抵抗の用意をすべきである。同時に、解放区では、自己の勇敢な作戦行動および新しい地区での游撃戦争の展開によって、大後方を力強く援けるべきである。大後方のすべての人民、すべての愛国諸党派には、みな民主的な連合政府を倒立するために努力する責任がある。大後方では、すでに多くの諸党派、多くの実業家・教授・学生たちばかりか、多くの国民党員までが連合政府をつくれという主張に賛成し、これが当面の抗日救国の唯一の正しい道であると考えている。だが、いまの力ではなお不十分であり、広範な人民が起ち上がって、このために奮闘するよう、呼びかけるべきである。
被占領地区では、広範な人民は敵の苛烈な抑圧をこうむっており、解放されることを渇望している。われわれは、彼らを組織し、解放されることを渇望している。われわれは、彼らを組織化するのを授け、時機が成熟した場合に武装蜂起を決行し、軍隊の進行に平応して、内外から日本侵略者を駆逐し、わが兄弟姉妹たちを解放するよう手筈をととのえるべきである。この任務は、いまでは解放区工作と同等の重要な地位にまで引き上げなければならない。これは非常に差し迫った工作であり、いかなる困難をもかえりずにやりとげなければならない。この工作では、フランス共産党とフランス人民が光栄ある模範を示しており、われわれはフランスの経験を学ぶべきである。被占領地区人民の間では、民主的な連合政府の必要を説明し、この政府が出現さえすれば、被占領地区人民の解放もまじかいことを彼らに知らせ、彼らが起ち上がって、この目標のために闘うよう呼びかけるべきである。
解放区についていえば、ことはいまやすでに抗日救国の中枢となっている。「一九四四年十一月現在、ここには八路軍・新四軍およびその他の人民抗日軍部隊六五万人、民兵二〇〇余万人、解放された人民九〇〇〇万人がいる。一九四四年一年間に、われわれは軍事・政治・文化のいずれの面でも、きわめて大きな成果をおさめた。ところで、われわれは一九四五年には、とくに指摘しなければならないどんな工作があるだろうか?
私の考えでは、一九四五年には、中国解放区は次のような諸点に注意すべきである。
(一) 解放区を拡大すること。どの解放区でも、その付近またはそれからやや遠いところには、いずれも敵に占領されてはいるが、正た守備が手薄な地方も多数にある。われわれの軍隊はこれらの地方に進攻し、敵軍・傀儡軍を消滅して、解放区をひろげ、被占領地区を縮めるべきである。われわれは、守備が手薄で、われわれの現存諸条件のもとで攻略することができるすべての被占領地区を全部、解放区に変え、敵が極度に狭い都市や交通の要衝にしかいられないようにし、彼らをわれわれの包囲のなかでしっかりとしめつけ、あらゆる条件が成熟するのを待って、敵を完全に駆逐するようにしなければならない。こうした進攻はまったく必要であり、また可能である。われわれの軍隊はすでにこのような攻撃を数多く行なってきたし、とくに今年は非常に大きな成果をおさめた。来年はさらにこれをつづけるべきである。故に新たに占領され、まだ解放区が建設されていない地方、たとえば河南省などでは、人民に呼びかけて、武装部隊を組織して、侵略者と闘い、新しい解放区を建設しなければならない。数年来の経験が証明しているように、十分に訓練を経た、軍事や政治の諸方面の任務の遂行にたくみな多数の「武装工作隊」を組織し、敵の背後のさらに背後にまで浸透して、敵軍・傀儡軍を襲撃させ、また人民を組織して、解放区の正面戦線に呼応して戦わせるのは、極度大きな効果があり、各地ともこのようにすべきである。
(二) 敵の進攻(掃蕩)がやむことはあるまいから、われわれはつねに警戒すべきであり、いつでも反「掃蕩」によって敵の進攻を粉砕する用意がなければならず、こうした警戒を怠ることは正しくない。われわれが強くなり敵が弱くなり、敵と同分との力関係はいまではすでに変わったと考えてはならず、敵はやはリ強いのであり、敵はけっしてわれわれに対する進攻を忘れはしないということを知らなければならない。われわれはやはり敵より弱いのであり、われわれなお多大の努力をはらうとともに、正しい軍事政策およびその他の政策をとらなければならず、そうしてはじめて、この形勢をかえることができるのである。そして、われわれが優勢をしめるにいたった場合にはじめて、敵の進攻というものが不可能になるのである。
(三) 現存の自衛軍と民兵を整頓し、訓練して、彼らの戦闘力を増強すること。自衛軍と民兵の数はなお不十分であり、個々のいくつかの地方で、これ以上拡大できないのを除いて、各地方ともできるだけ拡大すべきである。〔解放区〕九〇〇〇万人民のうち、老人・幼児および病人を除いて、その他のすべての男女公民はすべて自衛軍に組織し、生産から離れないことを原則として、輪番で、郷土の防衛と軍隊への協力・援助の任務を担当すべきである。自衛軍のなかから優秀な分子を選抜して、民兵または基幹自衛軍を組織し、「戦闘と生産の結合」を原則として、軍隊と協力して戦わせるか、または独立自主で戦わせるべきである。九〇〇〇万人民のうち、少なくともその五パーセントの四五〇万人は民兵とすべきである。つまり、現存の民兵の数を二倍に拡大すべきである。一部の地方では、この工作はまだ十分重視されていない。それらの地方では、民兵の数が大変少なく、しかも整頓と訓練がかけており、質も高くはない。一九四五年には、こうした状況を改めなければならない。自衛軍と民兵は、いずれも農作業の時期をたがえず、仕事のおくれを減らし、生産を妨げないようにしなければならない。この場合、変工〔労働互助の一形態――訳注〕の方法が必要であり、戦う民兵組織と生産上の変工組織は、しばしば相互に結合しあうことができるであろう。自衛軍と民兵との指導機関は民主的に選挙されたものでなければならない。このようにしてこそ、自衛軍と民兵を拡大することができ、戦闘力を高めることができるであろう。民兵の重要な戦闘方法は地雷で爆破することであり、地雷運動はこれをすべての郷や村に普及させるべきである。ひろく、どこでも、各種の地雷を製造するとともに、爆破技術を訓練することが大いに必要になってくる。
(四) 正規軍と遊撃隊の整頓・訓練。一九四五年には、全軍隊が一回ずつ輪番で整頓・訓練が受けられるようにすべきである。新しい方法にしたがって整頓・訓練し、大衆的な練兵運動を行なうべきである。
(五) 旧解放区で、もとからある軍隊の兵員消耗数を補充すること、新たに発展していった〔解放〕区では、経済条件がゆるす場合には、軍隊を拡大すべきである。軍隊の補充にしろ、軍隊の拡大にしろ、ともに人民の財政的負担を重くしないことを条件とし、この点をしっかりと銘記していなければならない。もしもこの点に背くならば、われわれは敗北することになるであろう。
(六) 軍隊内の団結は非常に重要である。われわれ八路軍・新四軍は、これまで将兵の一致を掲げ出ところにして、光栄ある勝利を獲得してきた。だが、中国の軍閥部隊の軍閥主義的な習慣のわが軍隊内における影響は、なお依然として存在している。一部の部隊内では、こうした習慣はなおきわめて重大である。一九四五年には、広範な工作をすすめて、軍隊の将長関係におけるすべてのよからぬ現象、たとえば、殴打・罵詈、兵士の給養・疾病およびその他の困難に対する無関心、兵士の誤りや欠点について、辛抱強く教育・説得しないで、軽々しく処罰し、また逃亡兵を侮辱したり、銃殺したりすることなどの劣悪な習慣および誤った方針を根本的に棄て去るべきである。幾多の部隊では、現在もなお、この工作が重視されていないが、それはこの工作が軍隊の戦闘力のもっとも重要な政治的基礎であることがわかっていないからである。いまから始まるこの一年間の整頓・訓練計画では、軍事的な整頓・訓練と政治的な整頓・訓練とはともに重視すべきであるし、またこの両者を互いに結びつけるべきであるが、整頓・訓練の当初には、やはり政治の面に重きをおき、将兵間の関係の改善、内部的団結の増強、幹部と兵士大衆の高度の積極性の発揚に重きをおくべきであり、そことそはじめて、軍事的な整頓・訓練の実施が容易になり、それだけ効果があるのである。この工作の実行については、各部隊の内部で、将幹愛兵(兵士は幹部を護擁し、幹部は兵士を愛護するよう呼びかけ、同時に兵士に幹部を愛護するよう呼びかけ、相互の欠陥と誤りは公然とこれを究明し、迅速に是正するようにすべきであり、このようにしてこそ、立派な内部的団結の強化という目的を達成することができるのである。
(七) 擁政愛民〔軍隊は政府を擁護し、人民を愛護する――訳注〕工作と揮軍優抗〔人民・政府は軍隊を擁護し、抗日軍人家族を優待する――訳注〕工作を強化して、軍民関係をもっと改善すること。われわれ八路軍・新四軍とわが解放区人民との間の関係は、従来は良好だった。だからわれわれは、敵にうちかち、解放区を頑固にし、発展させることができた。だが、旧軍隊の習慣も同様にわれわれに伝染することがありうるわけで、軍民関係におけるよからぬ現象、たとえば、軍隊の態度が横暴なこと、人民の利益をそこなうこと、規律がよくないこと、政府を尊重しないことなどが、やはり時々発生する。同時に、地方「地方」とは、しばしば軍隊に対するものとして、党・政府機関を含む解放区の一般社会を総称して用いられている――訳注〕の軍隊に対する援助も不十分で、抗日軍人家属優待工作がよく行なわれないなどの現象も存在している。かつて一九四四年に、われわれはこの工作の重要性を指摘したのであるが、まだ多くの地方で、これが重視されていない。一九四五年の旧暦の正月には、すべての解放区で、普遍的に、擁政愛民運動と擁軍優抗運動を行ない、かならずいちじるしい成果をあげるようにすべきである。すでに成果があがっているところでも、ひきつづきこれを行なわなければならず、この二つの工作の結果は点検されなければならない。われわれの全軍隊で、上下の将長が一致団結し、政治の面から戦術的訓練とが加わり、さらにこれに軍事技術の向上となれば、中国人民の抗日救国事業は堅強な保障を与えられたことになる。
(八) 民族統一戦線は、中国人民の抗日救国の根本路線であり、解放区では、それはさず第一に、各階級・各政党政派の協力でできた三三制政府〔樹立〕工作に現われている。各地でのこの面での工作には立派に行なわれているものもあり、幾分劣っているものもあるが、各地ともその経験の総括を行なうべきである。共産党員は他の政党政派および無党派の人びとと頻繁に相談あい、懇談をし、会議を開くようにし、つとめて相互間のへだたりをなくし、誤解をなくし、相互関係における好ましからぬ現象を改めることによって、政府工作や各種の社会的事業を共同して遂行するようにしなければならない。人民代表会議(参議会)工作・政府工作および社会工作に参加するすべてのメンバーはいずれの諸党派に属しようが、無党派であットが、一律に尊重され、一律に職務や権限を与えられるべきである。
(九) 小作料の引き下げは各地とも成果があがっている。しかし、一部の地方では成果のあがりが少ない。凄向きは引き下げながら、縁では引き下げていないもの、および恩恵的とする観点がなお存在している。他方では、あまりにひどく引きすぎたり、引き下げさせただけで、残りの小作料の納付に注意を払わない現象もみられる。この二つの傾向は、どちらも豊正しなければならず、小作料引き下げてやることを原則にして、主師がその土地を回取して、みずから耕作する場合を除いて、他はみな新しい契約を結びなおせば、機民に耕作する土地を得させるべきである。旧解放区で、まだ小作料が引き下げられていないものについては、小作料引き下げ〔運動〕を起こすべきである。小作料を引き下げないのは正しくないが、引き下げ過ぎるのも正しくない。およそ地主で敵から締めつけられたか、あるいはその他の原因で生活が困難なものについては、政府は彼らをたすけて困難を解決してやり、農工商業またはその他の仕事に従事するよう便宜をはかってやるべきである。この事柄は政府工作の一つとし、これによって共同の敵と闘うよう彼らの結隼をからなければならない。われわれは現在、農村におり、土地問題の正しい解決は長期の戦争をもこたえていく重大な課題であり、みんなが十分注意するよう願いたい。
(一〇) 今年は正側的多数の地方で、生産運動が行なわれ、いちじるしい成果がおさめられた。これは非常に喜ばしいことである。しかし、まだこの生産運動が着手されなかった地方も一部にはあったし、また他の一部の地方では、成績があまり大きくなかった。さらにまた、他の一部の地方では、成績の側で「生産」成果があがったのに、人民の側で成果があらなかった。一九四五年には、絶対に例外なく、普遍的に、大規模な生産運動を行なわなければならない。すべての軍隊は、戦争と訓練のほかに、生産に従事して自給しなければならず、機関や学校もそうしなければならない。特殊な事情のあるものにだけ、生産を減らすことを許したり、免除したりすることができる。人民の自給の意志にしたがって、生産互助団体、たとえば、変工隊・互助組・換工班〔いずれも労働互助組織――訳注〕などを組織しなければならない。
われわれの地方工作員は、人民を助けて、こうした互助団体を組織させるよう最大のエネルギーを注ぎ、これによって大規模に生産の回復と発展をはからなければならない。たんに人民の表食を十分にしてやるだけでなく、さらに人民にしだいに余分の貯えができてくるようにさせなければならない。「耕三余一」〔三年間耕作して一年の分の余糧を生みだすこと――訳注〕のスローガンは、敵にひどく破壊された地方を除いて、敵後方の解放区では(一般に)実現できることである。わが解放区では、極力工業品の自給化をはかり、数年内にその全部または大部分を自給化するという目的を達成するために関わなければならない。公営・私営および合作社〔協同組合〕経営という三つの面の〔それぞれの〕努力によって、この目的を達成することは可能である。
生産を互いに助けあうものは紐約であり、できるだけ浪費を減らさなければならない。「経済を発展させ、供給を保証する」ことは、われわれの羅固不動の財政方針である。もしわれわれが根本からの経済の発展をはからず、枝葉末節的に財政問題を解決しようとするなら、それこそまちがった方針である。もしわれわれが、つとめて公私経済の発展をはかるならば、われわれはどんな長期にわたる戦争をも持ちこたえることができ、戦うエネルギーが枯渇することはないであろう。この点は非常に重要であり、すべての工作員および軍民全体に、この点をはっきりと、徹底的に認識させることによって、彼らが大規模な生産運動に従事するよう組織し、また実行すべきである。公営経済では、質に応じて等級を設けて、個人別に純益を分配する制度は、多くの部門で実行することができるし、また実行すべきことである。〔軍民兼顧〕〔軍民双方の利益を考慮する――訳注〕、「公私兼顧」〔公私双方の利益を考慮する――訳注〕の原則に背かないよう注意しなければならない。
(一一) 日本侵略者にうちかつためには、十分に軍事・政治・経済に注意するほかに、なお文教工作に注意しなければならない。われわれ解放区の知識人の圧倒的な大多数はみな立派な人であり、彼らの欠点ところか、その誤りまでが、工作を通じて改造することができるものであり、彼らは人民の事業の貴重な元手であり、彼らは重視されるべきである。彼らのうちには、軍事・政治・経済工作に従事しているものも多く、また別に、文化・教育・芸術・衛生の諸工作に従事しているものも多い。あらゆるこれらの要員にみな、重視されるべきである。今年の陝甘寧辺区文教工作会議が指摘した方向は、各地とも適用してよいものである。専制主義者は人民の愚昧さを有利とする。われわれは、すべての人民がしだいに愚昧な状態と不衛生な状態から離れることができるようにさせなければならない。各地の政府と党組織はいずれも、新聞・学校・芸術・衛生の四つの文教工作を自己の工作日程に組みこむべきである。
(一二) 軍隊のなかから、農村のなかから、工場のなかから、政府などの諸機関のなかから、大衆的・民主的な選挙方法によって、優秀な分子を選出して、戦闘英雄・労働英雄および模範工作者にあて、これを奨励したり、教育したりし、彼らを通じて、広範な大衆を鼓舞・激励し、結集することであり、こうした制度は、軍隊の戦闘力の向上、農工業の生産力の向上、政府機関およびあらゆるその他の諸機関の向上にとって、この数年来の経験がすでに証明しているように、きわめて有効であり、各地ともこの運動をひろくおしひろめるべきである。
(一三) 日本侵略者にうち勝つためには、広範な、有能な幹部が必要である。われわれの現有の幹部は、以前にくらべて大いに増大してはいるが、なお不足が感じられる。幹部の能力も高まりはしたが、なお大変不十分である。とくに下級幹部や初級幹部は、軍隊の幹部であれ、地方の幹部であれ、その教養程度、政策についてのその理解度、およびその工作技術の水準は、一般的には高くなく、一部の幹部は非常に低い。こうした状況が生まれた原因は、彼らの工作が忙しすぎること、教育をうける機会が少なすぎることにある。一九四五年の各地の幹部教育では、軍隊の訓練(連〔中隊〕から班まで)と地方(区と郷)の下級および初級幹部の訓練に重きをおくべきであり、在職幹部に対しては交代で訓練を施すやり方で、在職していない幹部に対しては学校で訓練を施すやり方で、計画的に彼らを一歩一歩引き上げるべきである。
(一四) われわれの工作上の作風にみられるきわめて大きな欠点は、一部の工作要員が独断専行を習慣としていて、人びとを啓発して批判や討論をやらせることに不慣れなこと、民主的な作風を適用することが不得意なことである。もちろん、これはわが解放区のあれやこれやの作風を比較したものであって、わが解放区のそれと国民党地区のそれとを比較したものではない。わが解放区は民主的な地方であり、国民党の方は封建的な地方であって、この二つの地方は原則的に区別される。しかし、われわれの隊列内には、たしかにまだ民主的な作風を会得していないものがたくさんおり、旧社会から伝来してきた官僚主義的な作風が依然として存在している。他のものにはちがった意見を提起させず、提起されると不機嫌になる。追従をいわれるのをよろこぶのみで、批判の言葉はききたがらない。壁にぶつかり、攻撃され、報復されるの恐れるところから、人びとは大胆に意見を出そうとはしない。これは大変よろしくない作風であり、こうした作風はわれわれの事業の進歩を妨げるし、工作要員の進歩をも妨げる。
私は、この点について、各地で教育を施し、党内でも党外でも、大いに民主主義的作風を提唱する。誰であろうと、敵対分子でないかぎり、悪意の攻撃でないかぎり、みんなに話をすることを許すことであり、まちがったことを言っても構わないのである。各級指導要員には他の人の言葉に耳をかす責任がある。次の二つの原則を実行せよ。(1) 知っていることはなんでも言い、意見は隠さず、徹底的に言うこと、(2) どんなことを言っても処罰せず、それを聞いて戒めにすることである。「どんなことを言っても処罰せず」という規定がないなら、たとえ、偽りでなく、真実であるとしても、「知っていることはなんでも言い、意見は隠さず、徹底的に言う」という効果をおさめることはできない。整風運動以来、われわれの工作上の作風はきわめて大きな進歩をとげており、これはすべての善良な人民の称讃をうけており、特大大きな光栄なことである。しかし、われわれにはなお重大な欠陥があり、われわれの間にも、なお民主的作風の欠如しているものが多数におり、われわれは、なんとしてもこの欠陥を改めなければならない。われわれのすべての工作幹部は、職責の高低をとわず、みな人民の勤務員であり、われわれの行なうすべての行動は人民のための奉仕であり、それなのに、なにが捨てきれないものがわれわれにはあるのだろうか? もしわれわれがこの欠陥を改めるなら、われわれはより一層広範な人民を結集することができ、われわれの事業はより大きく、より急速な発展をとげることができるであろう。
(一五) 上述した種々の諸点のほかに、解放区人民の前に横たわっているきわめて重要な任務は、連合政府の結成を促すことのできる種々の具体的な方法と考えだすことである。国民党およびその他の諸党派とひきつづき交渉することはその方法の一つであり、全国人民が起ち上がってその要求を訴えることもその方法の一つであり、さらにそのほかのいろいろな方法もありうる。要するに、われわれなんとしても、全民族の抗戦の要求に適合したこの民主的な連合政府をできるかぎり急速に樹立するよう、多方面にわたって努力しなければならない。
わが解放区がすでに行なったし、またこれから行なう工作としては、もちろんこのほかにもたくさんある。しかし現在、とくに指摘する必要があると私が考えたのは、上述の一五項目の事例であり、その他は省略した。各解放区の諸状況および工作の段取りは、多くの点で互いに異なっており、各地とも、自己の特徴にしたがって仕事を配置して、それぞれの任務を適当に完成するようにはかるうべきである。
一九四五年は、中国人民の抗日戦争がより大きく発展する年であるべきであり、全国人民は、わが解放区が中国を救いいうることを期待しており、われわれもまたこのような決意と勇気をもっている。私は、わが解放区の全軍民が一致して努力し、共産党員であろうが、非共産党員であろうが、みな一致団結して、解放区の抗日工作のために闘い、被占領地区人民の組織化のために闘い、大後方地区人民の援助のために闘い、民主的な連合政府の樹立のために闘わなければならないと考える。
(尾崎庄太郎訳)




