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不倫されて捨てられたサレ妻、コーラで酔った勢いでVTuberデビューしたら、有能な編集者に一生甘やかされることになりました  作者: 寝不足魔王


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第27話:瀬戸さんの嫉妬と「外の世界」

「……ええっ!? 大手飲料メーカーのアンバサダー!? 私がですか!?」


 新居のダイニングテーブルで、私は瀬戸さんの差し出したタブレットを二度見した。

 画面には、日本中誰もが知っている大手メーカーからの正式な依頼書が映し出されている。新商品の炭酸飲料――それも、私の大好きなコーラ系の新ラインナップの顔として、琥珀ねねを起用したいという内容だった。


「はい。君の『生きてるだけで偉い』というモットーと、炭酸飲料への異常なまでの愛が先方の担当者に刺さったようです。……ただし、今回は都内のスタジオで最新の3Dトラッキング機材を使った収録が必要になります。つまり――」


「外でお仕事! 本物の芸能人みたいじゃないですか! 瀬戸さん、私、一張羅のジャージで行かなきゃ!」


 私が大はしゃぎで立ち上がると、瀬戸さんは眼鏡を指で押し上げ、露骨に不機嫌そうな溜息をついた。


「……ジャージは却下です。……それから、外出、ですか。……不特定多数の目に、君のその……無防備な姿が晒されるのは、マネジメントの観点から見て、非常にリスクが高いと言わざるを得ません」


「瀬戸さん? もしかして、私が外に出るの嫌なんですか?」


「………………仕事ですから、断りはしません。……ですが、君のその……だらしなくて、放っておけない危うさを、他人に理解されるのは非常に不愉快です。……いいですか。当日は私も同行し、一分一秒たりとも君から離れませんからね」


 瀬戸さんは冷徹な言葉を選んでいたけれど、その耳の先がわずかに赤くなっているのを、私は見逃さなかった。

 新居という彼が完璧に管理した聖域から、私を外に出したくない。

 そんな子供のような独占欲が、有能な編集者という仮面の裏から漏れ出していた。


 ◇


 そして迎えた当日。玄関先で、私の「お出かけチェック」が始まった。


「瀬戸さん、これじゃあ夏でも冬服ですよぉ。……暑い!」


「却下です。そのスカートは丈が短すぎます。……階段で後ろに誰かが立ったらどうするんですか。……ほら、このロング丈のものに着替えなさい。上も、襟元が詰まっているこれです」


 瀬戸さんは、まるでお姫様を箱入りにする過保護な王様のように、私の服装を厳重に検閲した。

 結局、私が着ることになったのは、清楚で可愛らしいけれど、肌の露出が爪先までまったくない、瀬戸さんの「安心感」が凝縮されたコーディネートだった。


「……よし。これで、変な虫は寄ってこないでしょう。……ちあきさん。……スタジオでは、私の許可なく誰とも目を合わせないように。いいですね?」


「瀬戸さん、それ、ガードマンじゃなくて、もはや拉致監禁のレベルですよぉ!」


 私が笑いながら彼の腕に抱きつくと、瀬戸さんは一瞬だけ身体を硬直させたが、すぐに私の手をギュッと握り返した。


「……君を、私以外に汚されたくないだけです。……行きましょう。車を用意してあります」


 ◇


 都内の最新撮影スタジオ。

 巨大なグリーンバックと、数千万円はするであろう機材が並ぶ光景に、私は圧倒されていた。

 

「琥珀さん! お会いできて光栄です! 今日のメインスタッフを担当する佐藤です!」


 爽やかな笑顔の男性スタッフが、打ち合わせのために私に近づこうとした。

 その瞬間。

 私の横に立っていた瀬戸さんが、音もなくその間に割って入った。


「マネジメント担当の瀬戸です。打ち合わせはすべて私を通してください。……また、彼女への直接的な接触、およびプライベートな質問は一切禁じます。契約書に基づき、適切な距離を保ってください」


 瀬戸さんの声は、スタジオの冷房よりも低く冷たかった。

 知的な眼鏡の奥で、獲物を威嚇する鷹のような鋭い眼差し。その圧倒的なオーラに、スタッフの男性は「は、はい! 失礼しました!」と後退りし、二度と私に近づこうとはしなかった。


(……瀬戸さん、かっこよすぎる! 完全に私の騎士様だぁ……!)


 撮影中も、瀬戸さんはモニターの横で腕を組んだまま、私から一瞬たりとも視線を外さなかった。

 ライトを浴びる私を見守る、彼の独占欲たっぷりの視線。

 それが、どんな高価な機材よりも、私に最高の安心感と「愛されている」という全能感を与えてくれた。


 ◇


 夕方。すべての仕事を終え、私たちは新居のリビングへと戻ってきた。

 

「はぁー! 楽しかった! 瀬戸さん、スタッフさんもいい人たちでしたね! 『ねね様の実物は天使だ』って言ってくれて……」


「………………」


 私が上機嫌で語りかけた瞬間、背後から瀬戸さんの強い腕が伸びてきた。

 私はそのままソファへと押し留められ、彼の広い胸の中に閉じ込められる。


「……瀬戸さん?」


「……あんなに誰にでも愛想を振りまく必要はありません。……君のその、だらしなくて可愛い笑顔を、至近距離で見る権利があるのは私だけだ」


 瀬戸さんの低い声が、耳元で熱く響く。

 彼は私の肩に顔を埋め、深く、深く息を吐き出した。


「……疲れました。……外の世界は、敵が多すぎる。……明日は一日中、ここで君を管理します。……一歩も外へ出しませんからね」


「えへへ、瀬戸さんの『お家監禁』、喜んで受けちゃいます!」


 私は瀬戸さんの背中に手を回し、その甘い嫉妬を心ゆくまで堪能した。

 だらしない私を、世界でたった一人の宝物として守り抜く、最高のパートナー。

 

 ◇


 幸せな熱気が充満する、私たちの家。

 

 けれど、その輝かしい窓の下。

 夜の都会の片隅で、街頭ビジョンに映し出された琥珀ねねの「アンバサダー就任」の特報を、血走った目で見上げる一人の男がいた。

 

 健二だった。

 

「……琥珀、ねね。……ちあき。……あいつ、俺を差し置いて、あんなに……。……許さねえ。あの栄光も、あの金も、全部俺が手に入れるはずだったものだ……!」

 

 借金取りに追われ、爪を噛みながら闇の中に佇む男。

 彼の中に残った最後の歪んだ欲望が、幸せな二人に向けて、静かに毒を滴らせ始めていた。


第27話をお読みいただき、ありがとうございます!

ちあきの「外の世界」への進出と、それを全力で阻止したい瀬戸さんの過保護回でした。

スタジオでの「騎士ナイトモード」瀬戸さん、執筆していて自分でも惚れ惚れしてしまいました。


一方の健二側は、いよいよ街角の広告でちあきの栄光を目の当たりにし、狂気を増しています。

第28話では、そんな健二と結衣の「地獄の後日談」を詳しくお届けします!


「瀬戸さんの独占欲、もっと暴走して!」「健二の自業自得、メシウマです!」と思ってくださいましたら、

ぜひ下の【評価(★★★★★)】やブックマークで応援をお願いします!

皆様の星が、二人の愛をより深め、クズ男にトドメを刺す力になります!

よろしくお願いいたします!


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