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不倫されて捨てられたサレ妻、コーラで酔った勢いでVTuberデビューしたら、有能な編集者に一生甘やかされることになりました  作者: 寝不足魔王


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第24話:新しい家族の形

 すべてが片付いた後の夜は、驚くほど静かで、そして温かかった。

 瀬戸さんに連れられてやってきたのは、街の喧騒から少し離れた、落ち着いた雰囲気のレストランだった。

 窓の外には、かつて私を絶望させた街の灯りが、今は宝石を散りばめたようにキラキラと輝いている。


「……山咲さん。そんなに背筋を伸ばさなくていいですよ。君らしくありません」


 向かい合わせに座る瀬戸さんが、少しだけ苦笑して言った。

 今日の彼は、いつもの仕事モードのシャツではなく、少し柔らかな素材のジャケットを羽織っている。眼鏡の奥の瞳には、かつての冷徹な「管理」の厳しさはなく、穏やかな、深い海のような色が宿っていた。


「だって、瀬戸さんとこんな素敵なところに来るなんて……。私、また炭酸なしで酔っちゃいそうです」


「……君は、本当に放っておくと何をしでかすか分からない人ですね」


 瀬戸さんは、そっと私に温かい紅茶を勧めてくれた。

 私たちは、これまでの激動の日々を振り返った。

 あの雨の夜。一・五リットルのコーラを抱えて泣き叫んでいた私を見つけた、瀬戸さんのこと。

 「だらしなさは価値だ」と言ってくれた、あの言葉。

 

「……瀬戸さん。私、瀬戸さんに出会えて、本当によかったです。……不倫されて捨てられたときは、もう人生が終わったんだって思ってました。でも、瀬戸さんが私の隣にいてくれたから、私は私のままで、こんなに幸せになれました」


 私が真っ直ぐに彼を見つめて伝えると、瀬戸さんは一口、紅茶を飲み。

 そして、静かに、けれど決意を秘めた動作で、ジャケットのポケットから小さな箱を取り出した。


 ◇


「……山咲ちあきさん」


 瀬戸さんが、私の名を呼んだ。

 事務的な「管理対象」としてではなく。仕事の「パートナー」としてでもなく。

 一人の、愛おしい女性に向けるための声で。


「私は、効率的で完璧なものが正義だと思って生きてきました。……ですが、君と出会って、君の支離滅裂でだらしない日常を管理するうちに。……気づけば、私の世界は、君という不完全な光で満たされていました」


 箱が開かれる。

 そこには、窓の外の夜景よりもずっと美しく輝く、一粒のダイヤが並んでいた。


「……これからも、君を管理させてくれませんか。……仕事としてではなく、君を一生愛する夫として。……だらしない君を、私に一生背負わせてくれませんか?」


 視界が、瞬く間に涙で滲んだ。

 かつての私を否定した「お前は無能だ」という言葉を、この人は今、最高の「愛の言葉」で塗りつぶしてくれた。

 だらしない私。

 掃除もできない、コーラが大好きな私。

 そんな私を、「一生背負いたい」と言ってくれた。


「……はい! ……はいっ、喜んで!! 瀬戸さん、私、一生瀬戸さんに甘やかされて、管理されます! 一生、瀬戸さんの隣を離れませんからね!」


 私はレストランであることも忘れ、瀬戸さんの胸に飛び込んだ。

 瀬戸さんは、一瞬だけ驚いて硬直したけれど。

 すぐに、これまでで一番温かい力で、私を優しく、強く、抱きしめ返してくれた。


「……はいはい。……ただし、結婚したからといって、コーラは一日一本までですよ」


「ええっ!? そこは二本に負けてくださいよぉ!」


「……却下です。……健康管理も、夫の役目ですからね」


 瀬戸さんは、耳まで真っ赤にしながら、私の髪を愛おしそうに撫でた。

 

 ◇


 数ヶ月後。

 私たちの新しい生活は、以前よりも少し広い、陽当たりの良い新居で始まっていた。

 

 私は相変わらず『琥珀ねね』として、毎晩のように数万人のリスナーに「生きてるだけで偉い!」とコーラ片手に叫んでいる。

 配信が終わると、そこには必ず、エプロン姿の瀬戸さんが待ち構えている。


「……ちあき。また機材の横に、飲みかけのグラスを置いていますね。……何度言えば分かるんですか」


「あはは、ごめんなさーい! 瀬戸さぁーん、大好き!」


 私が抱きつくと、瀬戸さんは「……全く」と呆れたように溜息をつく。

 けれど、その腕はしっかりと私を抱き寄せ、私の額に優しいキスを落としてくれるのだ。


「……私も、愛していますよ、ちあき」


 だらしなくて、完璧じゃない、私たちの日常。

 けれど、ここには何よりも代えがたい「本物の愛」と、笑い声が溢れている。

 

 サレ妻としての絶望から始まった私の物語は。

 最高の旦那様による、永久的な「甘々管理生活」という名の、終わりのないハッピーエンドへと辿り着いた。


 山咲ちあき、二十七歳。

 私は、今日も瀬戸さんの隣で、最高に幸せな「だらしなさ」を謳歌している。


(完)


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

「サレ妻」というどん底の設定から始まった物語ですが、最後は瀬戸さんという最高のパートナーに「一生背負われる」という、この上ないハッピーエンドで締めくくらせていただきました。


だらしない部分を「価値」だと認め、叱りながらも全力で甘やかしてくれる。

そんな二人の「じれ甘」な関係性が、皆様の癒やしになっていれば幸いです。


ちあきと瀬戸さんの新しい門出を祝ってくださる方は、

ぜひ最後に【評価(★★★★★)】やブックマーク、感想などをいただけると執筆者冥利に尽きます!


皆様の温かい応援のおかげで、最後まで執筆することができました。

本当に、ありがとうございました!


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