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不倫されて捨てられたサレ妻、コーラで酔った勢いでVTuberデビューしたら、有能な編集者に一生甘やかされることになりました  作者: 寝不足魔王


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第23話:泥に咲く花、闇に沈む影

 嵐が過ぎ去った後の空気は、驚くほど透き通っていた。

 あの日、アパートの玄関先で放った「うせぇ! バーカ!」という言葉。

 それは、私の二十七年間の人生で、最も自分らしく、最も自由な叫びだった。


 数日後。私は瀬戸さんに付き添われ、とある法律事務所の応接室にいた。

 正面に座っているのは、瀬戸さんが「私の友人の中でも最も冷徹で有能な男です」と紹介してくれた弁護士さん。

 そしてその隣には、見る影もなくやつれ、警察に付き添われて現れた健二の姿があった。


「……山咲健二さん。いえ、今はもう他人でしたね」


 弁護士さんが淡々と書類を並べる。

 不法侵入、ストーカー行為、名誉毀損。そして、婚姻期間中に行われていた不倫の再調査結果。

 瀬戸さんが独自に集めていた証拠は完璧だった。健二が隠していた借金の履歴や、勤務先での公金横領に近い経費の私的流用まで、すべてが白日の下に晒されていた。


「これらすべての事案を鑑み、我々は一切の妥協をいたしません。慰謝料の増額、損害賠償、そして――今後、あなたが山咲ちあきさんに一メートルでも近づいた場合、即座に刑務所へ行くことになる合意書です。……署名を」


「……あ、ああ……」


 健二は震える手でペンを握り、自分の破滅を認めるサインをした。

 彼は職を失い、莫大な賠償金を抱え、エリートとしてのプライドも、人生の足場も、すべてを失った。

 かつて私に「無能」と吐き捨てた男が、今、社会的に「無能」の烙印を押され、泥の中に沈んでいく。


 私は、そんな彼の姿を見ても、喜びすら湧かなかった。

 ただ、「ああ、この人は本当に、私の人生にはもう必要のない人なんだ」という、乾いた納得感があるだけだった。


 ◇


 一方で、健二を捨てて逃げ出した不倫相手――結衣の末路も、耳に届いていた。

 

 彼女は健二の僅かな貯金を持って別の男に乗り換えたが、その男は彼女を遥かに上回る詐欺師だった。

 金も、ブランド品も、そして彼女が唯一の武器だと思っていた「若さと美貌」も、ストレスと困窮の中で急速に失われていったという。


 ある日、彼女は街角の巨大な街頭ビジョンで、銀髪の美少女Vチューバー『琥珀ねね』の大々的な広告を目にすることになる。

 そこに映るのは、かつて自分が「捨てられた女」と嘲笑っていた、ちあきの栄光。

 自分が手に入れようとして失敗した「富」と「愛」を、ちあきが当たり前のように手にしている現実。


 自分の人生が、あの日ちあきを追い出した瞬間から、完全な敗北へと向かっていた。

 その事実を突きつけられた結衣は、絶望の闇の中で、二度と浮き上がることのできない泥沼へと沈んでいったのだ。


 ◇


 その日の夜。

 私は、綺麗に片付いた自分の部屋で、いつも通りの定期配信を行っていた。

 

「……みんな、聞いてくれてありがとう。……色々あったけど、私、今日で本当の意味で、過去を卒業できました」


 私は、震える声を抑えながら、カメラの向こう側にいる数十万人のリスナーに伝えた。

 「うせぇ! バーカ!」配信がバズり、リスナーの数は以前の数倍に膨れ上がっていた。けれど、そこに流れるコメントは、どれも私の心に寄り添う温かいものばかりだった。


『ねね様、本当におめでとう!』

『過去のゴミは全部捨てて、これから幸せになろうぜ!』

『ねね様を泣かせる奴は、リスナー全員が許さないから!』

『瀬戸さんと結婚しろ! 俺たちがご祝儀スパチャ投げるから!』


「えへへ……みんな、ありがとう。……だらしない私を、ここまで連れてきてくれたのは、みんなと……。そして、一番近くで私を『価値がある』って言い続けてくれた、あの人のおかげです」


 私は、モニターの横で腕を組んで立っている瀬戸さんを見た。

 彼は「配信に集中してください」といういつもの冷徹な指示を出す代わりに、優しく、静かに、私に向かって頷いてくれた。


 ◇


 配信を終え、機材の電源を落とす。

 静かになった部屋に、瀬戸さんの温かいお茶の香りが漂った。


「山咲さん。……本当にお疲れ様でした。……これで、君の足枷はすべて外れました」


「はい。……瀬戸さん、私……。今、本当に体が軽いです。空も飛べちゃいそう!」


 私はソファに深く腰掛け、大きく深呼吸をした。

 

「瀬戸さん。約束、覚えてますか? 事件が解決したら、私の好きなものを何でも食べさせてくれるって」


「……ええ。覚えていますよ。……それで、何がいいんですか。最高級のステーキですか? それともフランス料理?」


「ううん。……瀬戸さんが一生、私の横でご飯を食べてくれる権利が欲しいです。……今日のご褒美、それでいいですか?」


 私は、瀬戸さんのシャツの裾をギュッと握り、彼を真っ直ぐに見つめた。

 

 瀬戸さんは、眼鏡の奥で目を丸くし、それから……。

 これまでで一番、耳まで真っ赤に染まりながら、ふい、と視線を逸らした。


『………………。……それは、今日のデザートを食べ終えるまでに、私が君の『だらしなさ』をどこまで許容できるか再評価した上で、結論を出します』


「ええっ、まだ審査中なんですか!? もういいじゃないですか、合格で!」


『……甘えないでください。……さあ、コートを着なさい。外は冷えますから』


 瀬戸さんはぶっきらぼうに私のコートを差し出した。

 けれど、その手は微かに震えていて。

 

 清算された過去。

 そして、新しく始まる、二人だけの「審査中」の甘い時間。

 

 私たちは、アパートのドアを開け、冬の澄んだ夜空の下へと歩み出した。

 隣を歩く瀬戸さんの体温を感じながら、私は、これから始まる「最高のフィナーレ」を確信していた。


第23話をお読みいただき、ありがとうございます!

ついに、ついに……! 健二と結衣への完全な清算が行われました。

法的な追い詰め、そして自分たちが捨てたものの大きさを思い知らされる精神的な「ざまぁ」……スカッとしていただけましたでしょうか!


そして、瀬戸さんの「再評価(という名のデレ)」発言。

もう事実上の「一生一緒にいる」宣言に聞こえてしまいますね。

二人の距離は、もはや「仕事」という言葉では説明できないところまで来ています。


「健二たちの末路、最高!」「瀬戸さん、もう合格出してあげて!w」と思ってくださいましたら、

ぜひ下の【評価(★★★★★)】やブックマークで応援をお願いします!

皆様の星の数が、いよいよ始まる最終章……幸せなプロポーズ編への力強い後押しになります!

よろしくお願いいたします!


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