表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不倫されて捨てられたサレ妻、コーラで酔った勢いでVTuberデビューしたら、有能な編集者に一生甘やかされることになりました  作者: 寝不足魔王


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/33

第22話:深夜の配信、そして沈黙を破る声

「……ちあき、やっぱりお前は優しいな。分かってくれると思ったよ」


 床に這いつくばったまま、健二は醜く顔を歪ませて笑った。

 私が前に出たことを「復縁の兆し」だとでも思ったのだろう。その瞳には、浅ましい期待と、相変わらず私を見下す色が混ざり合っている。


「いいか、ちあき。俺があの女(結衣)に騙されたのは、お前がだらしなくて、俺を寂しくさせたからなんだ。でも、お前がその金で俺の借金を清算して、また俺の世話を焼くって言うなら……特別に許してやる。また、俺の妻にしてやるからな」


 耳を疑うような言葉だった。

 この男は、自分が何を言っているのか分かっているのだろうか。

 隣で私の肩を抱いている瀬戸さんの身体が、怒りで微かに震えるのが分かった。瀬戸さんが口を開こうとした瞬間、私は彼のシャツの袖をそっと掴んで制した。


「……ねえ、健二」


 私の声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。


「本気で言ってるの? それ。……あなたがいなきゃ私は何もできないんじゃない。あなたという重荷がいたから、私は何もできなかったのよ」


「……あ? 何言って……」


「あなたが私を無能だと罵っている間に、私は私を認めてくれる人に出会った。あなたがゴミ溜めの中で不満を言っている間に、私は私のままで、あなたの年収の何倍も稼げるようになった」


 私は、一歩だけ健二の方へ踏み出した。

 瀬戸さんの温かい腕から離れるのは少し怖かったけれど、今の私には、この男を完膚なきまでに叩き伏せる「実績」と「幸せ」がある。


「だらしなくて、掃除もできなくて、コーラばっかり飲んでる私を、この人は『価値がある』って言ってくれた。……あなたは私の欠点だけを見て私を捨てた。でも、この人は私の欠点ごと私を愛してくれたの」


「ふ、ふざけるな! そんな男に騙されてるだけだ! お前みたいな出来損ないを本気で愛する奴なんて……っ」


「……黙りなさい」


 瀬戸さんの氷のような声が、健二の言葉を叩き斬った。

 瀬戸さんは私を再び力強く引き寄せ、健二を射殺さんばかりの鋭い視線で睨みつけた。


「彼女の価値を理解できず、その才能を踏みにじり続けた無能なあなたに、彼女を語る資格はない。……これ以上、私の大切な人にその汚らわしい言葉を向けないでいただきたい」


 瀬戸さんの「私の大切な人」という言葉。

 その響きが、私の心に最後の勇気を与えてくれた。

 健二は顔を真っ赤にして逆上し、「俺が捨てた女のくせに!」と、獣のような声を上げて私に掴みかかろうとした。


 だが、その瞬間。

 瀬戸さんの手が、電光石火の速さで健二の腕を捻り上げ、そのまま壁へと押し付けた。

 

「が、がはっ……!? なんだ、お前、離せ……っ!」


 私は、惨めに喚き散らす健二の目を、真っ直ぐに見据えた。

 あの日、深夜のファミレスで離婚届を突きつけられた時、何も言えなかった私。

 あの日、ボロアパートでコーラを飲みながら、独りで泣いていた私。

 そのすべての悲しみと、今の最高の幸せを、この一言に込めて。


「――うせぇ! バーカ!……ぐだぐだうるさいんだよ!」


 お腹の底から、今までで一番晴れやかな声で叫んだ。

 

 その瞬間。

 机の上に置いてあった、瀬戸さんが設定したばかりの最新機材――配信のミュートスイッチが、瀬戸さんの激しい動きの拍子に「オン」に切り替わっていた。


 ◇


『え……!? 今の、ねね様の声!?』

『うせぇバーカきたあああああ!!wwww』

『今の男の叫び声、不倫クズ夫か!?』

『ねね様最高! スカッとした! マジでカッコいい!』


 モニターの中で、配信コメント欄がかつてない速度で爆発した。

 

 健二は、何が起きたか分からず呆然としている。

 瀬戸さんは、冷静にスマートフォンで通報を終えると、健二をゴミのように玄関の外へと押し出した。


「……警察が来ます。あなたの人生がこれからどうなるか、私は一切関心ありませんが……二度と、私のちあきさんに触れないでください」


 瀬戸さんの「私のちあきさん」という、トドメの独占宣言。

 

 閉ざされたドアの向こうで、健二の情けない泣き声が遠ざかっていく。

 

「……はぁ。……言っちゃった。言っちゃいましたよ、瀬戸さん!」


 私は、自分の叫んだ言葉の余韻に浸りながら、瀬戸さんを振り返った。

 すると、瀬戸さんは健二を追い払った時の鋭さはどこへやら、眼鏡の奥で目に見えて耳まで真っ赤に染まっていた。


「……瀬戸さん? あ、もしかして今、『私のちあきさん』って言ったの、照れてるんですか!?」


『……し、仕事の延長……いえ、今の状況下では致し方ない表現で……っ。だいたい、君も! 配信が入っていることに気づきなさい! 全世界に「バーカ」なんて放送されましたよ!』


「いいんです、私だらしないのが売りなんですから! ……それより瀬戸さん、もう一回言ってください! 『私のちあきさん』って!」


『……絶対に言いません! さあ、リスナーへのフォローを! ほら!』


 顔を真っ赤にして指示を出す瀬戸さんと、それを見て悶絶する私。

 

 過去の呪縛は、私の叫び声と、瀬戸さんの甘い独占欲によって、跡形もなく粉砕された。

 サレ妻としての物語は、今、最高の「ざまぁ」を経て、本当の意味での幸せへと踏み出したのだ。


第22話をお読みいただき、ありがとうございます!

魂の「うせぇ!バーカ!」が炸裂しました。

健二の泣き落としを跳ね除け、瀬戸さんの腕の中で勝利を宣言するちあき……。

執筆していて、これ以上ないほどスカッとしました!


そして、瀬戸さんの「私のちあきさん」発言。

本人は仕事だと言い張っていますが、もう独占欲が隠しきれていませんね。

このアクシデント配信によって、リスナー公認の「てぇてぇ」関係が確定してしまいました!


「ねね様のバーカ最高!」「瀬戸さんの独占欲、ごちそうさまです!」と思ってくださいましたら、

ぜひ下の【評価(★★★★★)】やブックマークで応援をお願いします!

皆様の評価が、健二へのさらなる追い打ち(法的措置)と、二人の結婚へのスピードを加速させます!

よろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ