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不倫されて捨てられたサレ妻、コーラで酔った勢いでVTuberデビューしたら、有能な編集者に一生甘やかされることになりました  作者: 寝不足魔王


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第18話:健二の執念と調査

「……はぁ。瀬戸さん、私、もう一歩も動けません」


 配信機材のセッティングを終えた私は、新しく買い替えたばかりの座り心地の良いゲーミングチェアに深く沈み込んだ。

 かつてのボロアパートは、瀬戸さんの献身的な「管理」によって、今や最新鋭の配信スタジオと化している。

 空気清浄機が静かに回り、足元にはゴミ一つ落ちていない。


『……甘えないでください。まだマイクのノイズテストが残っています。……ほら、シャキッとしてください』


 瀬戸さんはそう言いながら、私の背後に立ってモニターをチェックしている。

 ふわりと、彼の石鹸のような清潔な香りが鼻を掠めた。

 画面越しでは分からなかった、彼の指先の綺麗さや、仕事モードの時の厳しい、けれど真摯な瞳。

 それらがすぐ近くにあるというだけで、私の心臓はコーラの泡以上に激しく跳ねてしまう。


「瀬戸さん……。そんなに近くにいたら、私の心臓の音がマイクに乗っちゃいますよぉ。責任取ってくれますか?」


『………………っ。ノイズキャンセリングの設定を強化しておきます。……さあ、テストを始めますよ。……「あー」と言ってみてください』


「あー……瀬戸さん大好きー!」


『……テストになりません。真面目にやってください』


 瀬戸さんは冷たく突き放すようなことを言うけれど、その耳の先が真っ赤になっているのを、私はモニターの反射でバッチリ確認していた。

 あんなに有能なのに、私の直球すぎる言葉にはいつまで経っても慣れてくれない。

 その「じれったさ」が、私にはたまらなく愛おしかった。


 ◇


 一方で。

 私がかつて「地獄」と呼んでいた場所でも、また別の意味で温度が上がっていた。


「……金だ! 金はどこへやったんだよ!」


 健二の怒声が、薄暗い賃貸マンションのリビングに響いた。

 かつての分譲マンションは、結衣の浪費によるローン滞納で手放さざるを得なくなり、今は築古の狭い部屋に身を寄せている。

 部屋には脱ぎ散らかされたブランド品の空き箱と、数日前のデリバリーの容器が散乱していた。


「知らないわよ! 健二さんの稼ぎが少ないから、私が補填してあげてるんでしょ!? ちあきさんの時はもっと貯金があったんじゃないの? どうせどこかに隠してるんでしょ!」


「アイツにそんなもんあるわけないだろ! ……クソッ、ちあきなら文句も言わずに俺を敬って、家の中も完璧に整えてたんだ。……お前は顔がいいだけで、中身は空っぽじゃないか!」


「なんですって!? 自分から誘っておいて、今更何よ! お金がない男なんて、ただのゴミよ!」


 罵声を浴びせられ、健二は逃げるように家を飛び出した。

 夜の街を歩きながら、彼は自分の選択がいかに間違っていたかを痛感していた。

 だが、それはちあきへの謝罪ではない。

「自分を全肯定し、無償で尽くしてくれた便利な道具(妻)」を失ったことへの、身勝手な後悔だった。


(……アイツなら、俺が『悪かった、戻ってこい』と言えば、泣いて喜んで戻ってくるはずだ。……あんな無能な女、俺がいなきゃ生きていけるわけがないんだからな……)


 健二は、ちあきの実家に何度も電話をかけ、時には待ち伏せすらした。

 だが、瀬戸さんの事前の根回しによって、両親は「娘の居場所は知らない」と一点張り。

 

「……チッ。実家の連中まで俺を馬鹿にしやがって。……だが、見つけたんだ。あのアパートをな……」


 健二は、以前偶然見かけたあのアパートの光景を思い出し、卑屈な笑みを浮かべた。

 あんなボロアパートに住んでいるのだ。きっと金に困り、惨めな生活を送っているに違いない。

 俺が救いの手を差し伸べてやれば、また元のように俺のために働いてくれるはずだ。

 

 健二は、自らの破滅を食い止める「唯一のカード」として、ちあきを回収することを固く決意していた。


 ◇


 深夜。瀬戸さんは、ちあきの配信が無事に終わるのを見届け、アパートの一階へと降りてきた。

 冷たい夜風が吹き抜ける中、彼はふと、駐輪場の隅に目を留める。


「…………これは」


 瀬戸さんは眉をひそめ、そこに落ちていた「何か」を拾い上げた。

 それは、踏みつけられて潰れた煙草の吸殻。

 ちあきは吸わないし、瀬戸さんも吸わない。

 そしてその銘柄は、以前ちあきから聞いた、元夫・健二が愛用していたものと一致していた。


 瀬戸さんは、静かに周囲を見渡した。

 暗がりの向こうに、誰かが潜んでいるような、粘着質な視線を感じる。

 

「……やはり、嗅ぎつけてきましたか。……クズというのは、鼻だけは利くようですね」


 瀬戸さんの瞳から、温度が消える。

 彼は、二階にあるちあきの部屋の明かりを見上げた。

 あそこで今、のんきにコーラを飲んで笑っているであろう、だらしなくて愛おしい「私の大切な人」。


「……君のその笑顔を、あんな汚らわしい男に一瞬でも曇らせるわけにはいかない」


 瀬戸さんは、手に持っていた吸殻を握りつぶし、決意を固める。

 彼女を守るためなら、もはや「仕事上のパートナー」という建前は必要ない。


 翌朝、瀬戸さんがちあきに告げることになる「ある提案」。

 それが、二人の関係を物理的にも精神的にも、後戻りできない場所へと押し流していくことになる。


第18話をお読みいただき、ありがとうございます!

ちあきと瀬戸さんの「じれ甘」なやり取りの裏で、健二の醜い執着が物理的な距離を詰めてきました。

瀬戸さんが見つけた「吸殻」という小さな証拠……。ここから瀬戸さんの「騎士ナイトモード」が発動します!


「瀬戸さん、ちあきを守って!」「健二、早く消えて!」と思ってくださいましたら、

ぜひ下の【評価(★★★★★)】やブックマークで応援をお願いします!

皆様の星の数が、瀬戸さんの決断を後押しし、ちあきの幸せを盤石なものにします!

よろしくお願いいたします!


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