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EP.3-15 新しい季節

皆さん、こんにちは!Time Bombです!


本日で、ついにEP.3の本編が終了となります。


ここまで夏月の過去や葛藤、そして彼女自身の成長を描いてきました。


夏月がこれまで歩んできた道のり、そして彼女が最後に辿り着いた答えが、読者の皆様にも届けば嬉しいです。


ぜひ、最後まで見届けてください。

 自宅へ戻ると、翼と悠喜、そして晴翔が出迎えてくれた。


翼 「いやあ、これまた随分派手にやられたな」


 稔におんぶされたボロボロの瑞葵を見て、翼はぽつりとそう漏らした。


 けれど、その口調に呆れた色はない。

 無茶をしたのだと分かっていて、それでも今は責めるつもりがないのだと伝わってくる。


稔 「上がらせてもらうよ。晴翔、救急箱頼む」


晴翔「はい」


翼 「夏月」


夏月「うん?」


翼 「お疲れ様」


 翼はそれだけ言って、稔の後について行った。


 たぶん、察しているのだと思う。

 瑞葵の怪我だけじゃない。

 夏月の表情からも、何かあったのだと気づいているのだろう。


 それでも今は、それを深く聞くべきタイミングじゃない。

 そう判断したのが分かった。


 相変わらず、翼のそういう鋭さには敵わない。

 そう思うと、心のどこかが小さく痛んだ。


悠喜「大丈夫だったのか?」


 そんな翼と違って、悠喜は真っ直ぐな目で夏月に訊いてくる。


夏月「うん……なんとか任務も成功したしね」


 今日だけは、強がらせてほしい。


 それが夏月の中に出た答えだった。


ーーーーー


 その後、瑞葵の手当ては晴翔に任せて、夏月は柚木の部屋を訪れていた。


 部屋の中では、柚木と稔がすでにデータを確認していた。

 薄暗い照明の中、ノートパソコンの画面だけが白く光っている。


稔 「大方予想通りな人選だな」


柚木「警察が動けないとなると、国家が絡んでくるのはマストだからね」


 淡々と交わされる会話は重い。

 夏月はその中身を全部追う余裕はなかった。

 ただ、今回持ち帰ったものが想像以上に大きな証拠なのだということだけは分かる。


 コンコン、とドアをノックする音が部屋に響いた。


柚木「どうぞ」


夏月「すみません。あ、今大丈夫ですか?」


柚木「ええ、問題ないわ」


稔 「俺は瑞葵の様子を見てくるわ」


夏月「いえ、ここにいてください」


 思ったより強く言葉が出た。


 稔は少しだけ眉を上げたが、それ以上は何も言わず椅子へ腰を戻した。


稔 「そうか」


柚木「どうしたの? 改まって」


 夏月は柚木と稔の前まで進むと、深く頭を下げた。


夏月「すみませんでした」


 その一言だけで、部屋の空気が少し変わる。


夏月「今回の任務で、私はファイルのデータを確認する際に父の会社の名前を見つけました……それで……」


 喉が渇く。

 言葉にするたび、自分が何をしたのかをもう一度なぞらされるようだった。


夏月「仲間を………裏切ろうとしました」


夏月「本当にすみませんでした」


 頭を下げたまま、重い沈黙がのしかかる。


 怒られるかもしれない。

 当然だと思った。


 夏月自身、あれは言い訳のできないことだったと分かっている。


 データ改竄まではしなかった。

 でも、私情を優先しようとした。

 仲間より父を選びかけた。


 その事実は消えない。


柚木「胸元のカメラで、夏月ちゃんがお父さんの会社のファイルを確認しているところは見ていたわ」


 柚木の声は静かだった。


 責めるようなトーンではない。

 けれど、その静けさが逆に重い。


柚木「でも、夏月ちゃんはそのデータを改竄したのかしら?」


夏月「いえ……父の名前はなかったので、それは何もしてないです」


柚木「事実として、夏月ちゃんは改竄しなかった」


柚木「そこは大きな違いよ」


夏月「え?……でも……」


 そんなふうに言ってもらえるとは思っていなかった。


 けれど、それで自分のしたことが軽くなるわけじゃないと、夏月はすぐに思い直す。


柚木「確かに、夏月ちゃんのしたことはいけないこと」


柚木「夏月ちゃんも言った通り、これは仲間を裏切る行為と同等ね」


 その言葉に、胸が少しだけ縮こまる。


 けれど柚木は、そこで言葉を切らなかった。


柚木「でも、夏月ちゃんは結局改竄しなかった」


柚木「そして、その行為をちゃんと自分で間違いだと分かっている」


柚木「だから、私からはこれ以上何も言うことはないわ」


夏月「すみません……」


 謝罪しか出てこない。


 夏月は頭を上げたまま、それでも視線は下へ落ちたままだった。


柚木「それに、今回の夏月ちゃんの行動で分かったこともあるんじゃないかしら」


夏月「分かったこと……」


柚木「今回の夏月ちゃんの行動で、頑張ってくれた人がいるように」


柚木「もし逆の立場になったその時は、今度は夏月ちゃんが支えてあげて」


 夏月は少しだけ目を見開く。


 その言葉の先にいるのが誰なのか、考えるまでもなかった。


 瑞葵だ。


 今日、自分が私情に引きずられていた間、時間を稼いでくれた人。

 無茶をして、ボロボロになって、それでも立っていた人。


 柚木は、今回のことをただ“反省して終わる失敗”にするなと言っているのだ。


 次に返せ、と。

 次は支える側に回れ、と。


柚木「それを約束してくれれば、私からは何も言うことないわ」


 しばらく、夏月は声が出なかった。


 優しいのに、甘くない。

 それが柚木らしいと思う。


稔 「素直じゃないな」


 横で腕を組んでいた稔が、ふっと鼻で笑った。


稔 「まあ要するに、怒ってはない。 でもその分、今回の貸しはどこかで返せよってことだ」


 夏月はそこでようやく、ほんの少しだけ肩の力を抜くことができた。


夏月「わ、分かりました」


 その返事には、さっきまでの震えが少しだけ混じっていた。


柚木「夏月ちゃん」


夏月「はい?」


柚木「任務、ありがとね。 今日はゆっくり休んでね」


 その言葉に、夏月は一瞬だけ息を止めた。


 責められる覚悟はしていた。

 けれど、“ありがとう”を向けられるとは思っていなかった。


夏月「はい……分かりました」


 それだけ返すので精一杯だった。


 部屋を出る直前、夏月は一度だけ振り返りそうになった。

 でも結局振り返らず、そのまま静かにドアを閉めた。


稔 「はあ……それにしてもよ」


柚木「何?」


稔 「流石に意地悪じゃないか?」


柚木「何のことかしら」


稔 「しらばっくれるな。 任務の日だ」


稔 「なんで今日にしたんだ。 昨日は例の日だったんだろ」


柚木「………」


稔 「お前がただ意地悪で今日にした訳ではないのは分かってる」


稔 「でも、夏月はまだ中学生だ」


稔 「今回は未遂で終わったが、もし犯行って形になってたら危なかったぜ」


柚木「それは私も反省してる。まさかデータの中に夏月ちゃんのお父さんの会社が入ってるとは思わなかったから」


稔 「ちなみに俺を呼んでどうするつもりだったんだ?」


稔 「俺ならなんとかしてくれると思ってたなら筋違いだぜ。 流石の俺も映像編集は苦手分野だからな」


柚木「稔を呼んだのはそれじゃない」


柚木「夏月ちゃんの様子がおかしくなってしまった時の、万が一のためよ」


稔 「俺なら最悪、罪を被ってやってもいいけどな」


柚木「人の心配をする前に自分の心配をしてください」


稔 「まあ、冗談は置いといて」


稔 「あの子たちはまだ大人になりきれてない。 むしろ大人の皮を被ろうと必死だ。 だからこそ危ない」


柚木「夏月ちゃんは特にね」


柚木「ただ、あの子にも分かってほしかったことがあったから」


稔 「?」


柚木「夏月ちゃんはまだお父さんに執着してる。認めてほしいと」


柚木「お父さんに認めてもらいたいなら、まず自分が変わらないといけないことを分かってほしかった」


柚木「今の瑞葵くんは、夏月ちゃんと同じ立ち位置だと思うから」


稔 「はあ……全く……」


柚木「タイミング的にはベストだったと思う」


柚木「それに、夏月ちゃん自身にもここにいなくてはいけない存在だと、自信をつけてほしかったからね」


稔 「相変わらず周りくどいな。 帰りも道が混んでると嘘もついて」


柚木「ある意味、あの時間があったから夏月ちゃんも心の整理はついたと思うわ」


稔 「まあ、今回は結果が良かっただけだ。 それは……」


柚木「私はあの子たちが強くて弱いのも知ってる」


 柚木は相変わらずの無表情で稔の言葉を遮る。けれど、そこには自信があった。


稔 「分かったよ。 また何かあれば呼んでくれ」


稔 「だけど、オフの時間帯はできるだけ避けてくれよ」


柚木「ごめんなさい。 デートの邪魔しちゃって」


稔 「お前、相変わらず俺のことイジってくるな」


柚木「ふふ」


 きっと晴翔や翼には、いつも通りの無表情にしか見えないのだろう。

 けれど稔には、ほんの少しだけ口元が緩んだように見えた。


ーーーーー


 7月1日。


 6月21日以降、父からの連絡はない。

 きっと仕事が忙しいから、母の墓参りを後回しにしているのだろう。


夏月 (それはそれでムカつくけど)


 夏月はいつもより早く起きてしまい、洗面所で顔を洗っていた。


柚木「夏月ちゃん、おはよう」


夏月「柚木さん、おはようございます」


 まだ朝早いというのに、相変わらず柚木はすでに普段着に着替えて髪も束ねていた。


柚木「夏月ちゃん、今日は夕食リクエストある?」


夏月「え? 夕食ですか?」


柚木「そう。 朝食でも何か食べたいのがあれば作るけど」


夏月「あ!」


 柚木の言葉で思い出した。

 今日は7月1日だ。


夏月「えっと……」


柚木「食べたいのが出たらまた教えて」


柚木「私は朝食の準備始めるから」


夏月「あの!」


柚木「うん?」


夏月「じゃあ……グラタンが食べたいです……」


夏月「それと……朝食は……またホットサンド食べたいです」


柚木「分かったわ。 それじゃあ今日はリクエストに答えて、朝はホットサンドにするね」


柚木「また食べたいものが思い浮かんだら教えて」


 それだけ言って、柚木はリビングの方へ向かった。


 柚木はどこにいても表情を変えない。

 父と違って、良く見せようとする人でもない。


 だけど、その冷たい表情とは裏腹に、柚木は温かい。


瑞葵「あ、お、おはよう」


夏月「おはよう。 もうやる?」


瑞葵「いや、あとは前だけだし」


夏月「いいから」


 あのコロシアムでの任務でできた痣が、まだ僅かに残っている。

 あれ以降、夏月は瑞葵のために朝早く起きて傷隠しのメイクを手伝っている。


 不器用な瑞葵と違って、夏月はメイクが非常にうまい。

 瑞葵自身もどこに痣があったのか分からないくらい綺麗に仕上げる。


 ただ、当初はまだ痛む箇所を遠慮なく触ってくるため、瑞葵は痛みに耐えるのに必死だった。


夏月「だいぶ痣も消えたね」


瑞葵「夏月のおかげだよ」


夏月「はいはい。 でも、うちの学校プールなくてほんと良かったわ」


瑞葵「え? でも、特殊な素材でできてるから、水だけだと簡単に落ちないんでしょ?」


夏月「メイクにも限度あるでしょ? まったく、無茶する人はもう少し学校生活のことも考えてよね」


瑞葵「す、すみません」


 7月に入って、また毎年のように“冬川照子”から“福本夏月”へ徐々に戻っていく。


「福本さん、おはよう」


夏月「おはよう」


 夏月たちが通っている中学校も、変わらず毎日を送っている。


 夏月がいつも一緒にいるグループは、親が芸能界の仕事をしている子たちだ。

 そして、そのグループの中心にいる『真野千里』の親は、あのコロシアムのデータに名前が載っていた人物の一人だった。


 きっと今はまだ調査中だから、同級生たちは何も知らないのだろう。


 もしこれが公になったら、周りの人たちはどうするのだろう。

 きっと“親が芸能人”というだけで距離を取るのだと思う。


 それは自分がいじめられないためでもあり、親の仕事を守るためでもある。

 仕方のないことなのかもしれない。


 ――だけど。


真野「福本さんだけに教えたいことがあるんだけど」


夏月「え? なに?」


真野「今度、お父さん映画の主演決まってね」


夏月「え? それって今言っていいの?」


真野「福本さんだけね。なんか福本さんって周りの子と違うじゃん」


夏月「どこが?」


真野「なんか、福本さんは私を有名俳優の娘って感じで見てなくて、普通に友達として接してくれてるじゃん」


夏月「それはみんな一緒だと思うよ」


真野「残念だけど違うの。まあ、だからこのことは内緒にしてね」


真野「それと、今度撮影現場の視察で東京スカイツリー行くんだけど、福本さんもどう?」


真野「一般の人は絶対入れないところあるらしいんだけど、友達一人くらいなら連れてきてもいいって言ってたから」


 彼女の父は、それ以外にもたくさんのコマーシャルに出演している。

 きっと、この事実はいずれ世間に知られてしまうだろう。


 テレビでもイメージの良い人なだけに、その反動は計り知れない。

 違約金だって相当な額になるはずだ。


 ――でも。


 真野は少なくとも、夏月を友達だと思ってくれている。


 きっと真野は、クラスメイトの中で唯一そう言ってくれる存在だ。

 父や兄からの扱いに比べたら、同級生からのいじめなんて惨めにしか思えない。


 もし彼女の父がしたことが世間に知られて、この学校にいられなくなったとしても、夏月は友達でいたいと思った。


ーーーーー


「誕生日おめでとう!」


 翼たちの声がリビングに響く。


 今日はトレーニングはオフにしてくれて、誕生日会を開いてくれた。


 夏月がリクエストしたグラタンをはじめ、オムライスにシチューなど、柚木がバイキング形式で料理を作ってくれている。


夏月「みんな、今日は本当にありがとうございます!」


 心の底からそう思えた。


 6月21日は、一番に言ってほしかった父から「おめでとう」の言葉がもらえなかった。


 そして戸籍上、6月21日が誕生日のままになっている夏月にとって、7月1日は今この場にいる翼、悠喜、瑞葵、柚木、晴翔、そして仕事で少し遅れてくる稔しか知らない、特別な誕生日だった。


悠喜「夏月、ほら!」


夏月「ありがとう!」


 照れ隠しのせいか、少し雑なプレゼントの渡し方をしてきた悠喜。

 けれど中身を見れば、ちゃんと考えてくれたのだとすぐ分かった。


夏月「かわいい、ポーチ!」


 しろくまデザインで、背中側にチャックがついている可愛らしい形。

 店員にプレゼント用でと照れながら頼む悠喜の姿が、なんとなく想像できた。


夏月「めっちゃ考えてくれたんだ」


悠喜「茶化すな」


夏月「ごめんごめん。でも、ありがとう! 大切に使うね」


悠喜「おう!」


翼「それじゃあ次は俺だな」


 そう言うと、翼はかわいくラッピングされた包みを渡してきた。


翼「俺からな」


夏月「え?」


翼「なんで驚いてんの? まさかプレゼントないと思ってたの」


夏月「まさか!」


 夏月はてっきり、瑞葵と翼の二人からまとめて一つだと思っていた。


 以前は、翼や悠喜の誕生日プレゼントを買う時はお金を出し合って一つのものを渡していた。

 けれど夏月が翼を好きになってからは、悠喜が気を利かせてくれた。


 柚木や晴翔、悠喜の誕生日は今まで通り三人で出し合う。

 でも翼と夏月の時だけは別々に渡そう、と。


 今年は瑞葵も加わったから、てっきり翼も誰かと相談して決めるものだと思っていた。


夏月「ありがとう」


 翼の隣を歩くには、彼みたいにもっと大人として立ち振る舞わないといけない。そう分かっている。


 それでも誕生日の日に、夏月が一番喜ぶ形を優先してくれたことがすごく嬉しかった。


 包みを開けると、中には胸元に誕生日の日付が書かれたネックレスをつけた、小さな熊のぬいぐるみが入っていた。


 ラッピングも凝っていて、とにかくかわいい。


夏月「嬉しい。ありがとう」


 どの誕生日プレゼントも本当に嬉しかった。


 柚木からはクリアバッグに入った最新トレンドのコスメ七点セット。

 晴翔からは夏月の好きなキャラデザが使われた文具セット。


 どれもちゃんと考えてくれたのが伝わる。

 でも、好きな人からもらえる誕生日プレゼントはやっぱり特別で、夏月はただ「ありがとう」としか言えなかった。


 それでも、翼なら分かってくれるはずだと思った。


翼「それともう一つ!」


夏月「え?」


翼「じゃーん! 動物園のチケット!」


夏月「これってどうしたの?」


翼「同級生からもらったんだ。お父さんの会社でタダでもらえるからって、二枚もらったんだよ」


翼「今月はオフ日2回あるからどれか一緒に行こう。」


夏月「それって私以外の人と行ってこいって意味なんじゃないの?」


翼「まあ……」


夏月「今度は誰と噂になってるの?」


翼「隣のクラスの、話したことのない女子と……」


 翼が女子とあと少しで恋人寸前、という噂はよく流れる。


 翼は誰にでも優しい上に、勉強もスポーツもできて、おまけに顔もかっこいい。

 そのせいで誰にでも向ける優しさを勘違いしてしまう女子も多いし、噂好きが根も葉もない話を流すことも珍しくなかった。


夏月「まったく、翼は優しいんだから気をつけてよね」


翼「分かったって。で、どうする?」


夏月「もちろん一緒に行こう!」


 翼が自分のために時間を作ってくれるだけでも最高のプレゼントなのに、きっとこのチケットまで用意してくれたのだと思うと、胸の奥がじんわり熱くなった。


 まだ父からの連絡は来ていない。

 それが気がかりじゃないと言えば嘘になる。


 それでも、翼と二人で動物園に行けるのは最高に楽しみだった。


 まだ、母のお墓参りは終わっていない。

 今年はまだ、照子に戻らないといけない日がある。


 ――それでも。


 今の自分には翼と悠喜、柚木に晴翔がいる。

 困った時は声をかけてくれて、誕生日の日には当たり前みたいに「おめでとう」と言ってくれる。


夏月(ここが私の家族なんだもんね)


 きっと、また来年も冬川照子に戻る日が近づけば、自分を見失うのだろう。


 だけど今は、夏月の周りには翼と悠喜がいてくれる。

 その幸せを噛みしめたい。


瑞葵「な、夏月」


 そして、もう一人。


瑞葵「誕生日おめでとう」


夏月「ありがとう、瑞葵」


 夏月に、また新しい仲間が加わったのだ。


夏月「な、なにこれ?」


 かわいい包装紙の中に入っていたのは、肛門から出てくるあの茶色いデザインに目と鼻と口がついた、かわいいとは程遠い気持ち悪い見た目のものだった。


 しかも、その気持ち悪さとは正反対に、触り心地は無駄に良かった。


瑞葵「今、女子中学生で流行ってるって聞いたんだ」


瑞葵「イライラした時に揉むと、イライラが収まるって」


夏月「誰が言ってたの?」


瑞葵「友達」


夏月「ちなみに店員さんはなんか言ってなかったの?」


瑞葵「まあ、プレゼント用でって言ったら、本当にこれでいいんですかとは」


夏月「で?」


瑞葵「でも、友達がこれ絶対喜ぶって言ったから」


 瑞葵らしい。


 素直で優しい性格ゆえに、きっとその友達のことをそのまま信じたのだろう。


 野畑瑞葵。

 戦闘もまだイマイチで、危なっかしい場面もそこそこある。


 だけど、夏月にとってまた大切な仲間が一人増えたことに変わりはなかった。


 そして夏月は、ようやくこの季節を越えられた気がした。


夏月「すごい嬉しいよ。ありがとう、瑞葵」

以上をもちまして、EP.3の本編終了となります。


改めまして、ここまで瑞葵たちの物語を見届けてくださっている読者の皆様、本当にありがとうございます。


EP.3は執筆を始める前からある程度の構成を想像していたこともあり、比較的順調に書き進めることができたエピソードでした。


その一方で、西横での任務やEP.3終盤の構成など、当初の予定から大幅に変更した部分もあります。


それでも、任務の中で不器用ながらも瑞葵らしい形で夏月を支え、二人の関係を一歩前へ進めることができたので、僕自身とても満足のいく仕上がりになったと思っています。


まだまだ書きたいことはたくさんあります。


そして、読者の皆様も薄々お気づきかもしれませんが――


EP.3は、もう少しだけ続きます。


今回もEP.2と同様に、特別編をお送りします!


EP.3終盤の構成を練り直している中で、どうしても書きたいエピソードが生まれましたので、次回からEP.3-EXとして更新していきたいと思います。


次回の更新は、10月4日(日)18時頃を予定しています。


今回は2週にわたって特別編をお送りします!


どんな物語になるのかは、更新までのお楽しみということで……。


ぜひ、楽しみにしていただけると嬉しいです!


改めまして、EP.3本編を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


今後とも『Abyss Trigger ーーSecret Xーー』をよろしくお願いします!

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