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EP.3-8 帰る場所

皆さん、こんにちは!Time Bombです!


Xと活動報告でもご報告させていただきましたが、『Abyss Trigger ーーSecret Xーー』が文芸ジャンルのランキングにランクインすることができました!


読者の皆様をはじめ、Xでの宣伝や投稿のお知らせに反応してくださる皆様、本当にありがとうございます!


昨日は嬉しすぎて、スマホを開いては自分の作品がランキングに載っているところを何度も眺めてました(笑)


こうして目に見える形で結果が出たこと、本当に嬉しく思っています。


また皆様に嬉しいお知らせができるよう、これからも瑞葵たちの物語を大切に書いていきますので、引き続きよろしくお願いいたします!


そして合わせまして、このあと20時からは『Summer Friend』第8話を更新します!


本日で本編最終回となります。


陸と和也の夏がどのような結末を迎えるのか――。


ぜひ、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!

父「照子、今日はご苦労だった」


 父からの突然の言葉に、夏月は少しだけ目を見開いた。


夏月「え? いえ、まだこれからお母様のお墓参りに行かれるんですよね?」


風間「旦那様はこれから取引先と商談がありますので、本日はこれでお開きとなります」


夏月「え………」


 ――それなら、なぜ。


 喉まで出かかった言葉は、すぐには形にならなかった。


夏月「それじゃあ……お墓参りは……」


父「後日連絡する」


風間「苳也様、照子様、ご自宅に到着いたしました。 松戸は照子様をご自宅まで送りなさい」


松戸「かしこまりました」


 淡々と進む会話に、夏月はその言葉の意味をうまく飲み込めず、しばらく動けなかった。

 だが苳也は何も言わずに車から降り、そのまま室内へ入っていく。


父「照子、商談に遅れる。 早く降りなさい」


夏月「………はい」


 夏月は父の方を振り向くことなく、そのまま車から降りた。

 背後で再び車が発車する音が聞こえたが、振り向く気にはなれなかった。

 別れを惜しいとも思わない。


 惜しむようなものなんて、最初から何もなかった。


 リビングに向かったが、苳也の姿はなかった。

 自室に戻って勉強でもしているのだろう。

 最近は空いている時間のほとんどを勉強に費やしているらしい。


 吹き抜けのリビングに、午後の光がやわらかく差し込んでいる。

 窓の向こうには手入れの行き届いた庭と噴水。

 きっとクラスメイトがこの家を見たら羨ましがるのだろう。


 ――だけど。


夏月(なんて虚しいんだろう……)


 広くて、綺麗で、何不自由なさそうに見える家。

 その中にいる自分は、どこにも居場所がない。


 夏月は身体から力を抜き、ほとんど倒れ込むようにソファへダイブした。


 今着ているワンピースはきっと高い。

 こんなふうに寝転がれば皺ができてしまうだろう。

 けれど、そんなことはどうでもよかった。


松戸「夏月様……」


夏月「う〜ん……ほっといて〜……」


松戸「………」


 松戸はそれ以上何も言わない。

 無理に起こそうとも、励まそうともせず、少しだけ距離を置いて立っている。


 その沈黙が逆にありがたかった。


 夏月はクッションを抱きしめながら、ゆっくり松戸の方へ身体を向ける。


夏月「ねえ……」


松戸「はい……」


夏月「ありえなくない?」


松戸「……はい?」


夏月「お母さんの命日なのにさ……お墓参りじゃなくて、自分の好感度上げを優先するの」


 言葉にした瞬間、胸の中に溜まっていた黒いものが少しだけ外へ出た気がした。


 病院で感謝を演じて、食事会で“良い家族”を演じて、そのあと商談へ向かう。


 それが父にとっての6月21日なのだ。


松戸「申し訳ございません……」


夏月「分かってる。 松戸の立場では、お父さんに歯向かえないの」


松戸「……お嬢様……」


夏月「…………」


 声を出さずに、大きくため息を吐いた。


 怒っているのか、呆れているのか、自分でもよく分からなかった。ただ、どうしようもなく空しかった。


夏月「それとさ……」


松戸「はい」


夏月「今年も、着なかった服は自由に持って帰っていいんでしょ?」


松戸「はい……」


 今日のために用意された衣装のうち、実際に着なかったものは毎年そのまま夏月が引き取っている。


 父から「いらないから持っていけ」と、毎回当然のように言われる。

 照れ隠しでも何でもない。ただ本心から“不要品”として渡されているのだと分かるからこそ、胸がちくりと痛んだ。


夏月「松戸さん、今年は今着てるワンピース以外はいらないです。 全部処分してください」


松戸「………かしこまりました」


夏月「フン……」


 鼻を鳴らすように言って、夏月は勢いよく身体を起こした。


 このまま寝転がっていたら、どんどん気持ちが沈んでいく。

 だったら動いていた方がましだった。


 夏月はそのまま冷蔵庫とキッチン周りを漁り始める。


夏月「ねえ、松戸さん。 契約会社からのプレゼントってどこにまとめてある?」


松戸「隣の部屋です」


 夏月は隣の部屋へ移動すると、食品の贈り物を片っ端から見ていった。


 高級なお米、缶詰の詰め合わせ、焼き菓子の箱、肉や海鮮のセット。

 どれも“冬川家宛て”として送られてきたものだ。


 けれど今日は、そんなものを遠慮する気にはなれなかった。


夏月「お米はもらっていいですよね?」


松戸「はい」


夏月「この缶詰のセット、おにぎりの具に使えそう。 瑞葵も味変すれば少しは食べやすくなるか」


 口にしてから、自分で少しだけ苦笑いした。


 こんな時まで、無意識に瑞葵のことを考えている。


夏月「クッキーとマドレーヌは翼だね。 悠喜も好きだから、多めにもらっとくか」


夏月「そうだ、お肉もいいのもらってますよね? クーラーボックスに入れて持って帰りたいです」


松戸「かしこまりました」


夏月「あと、海鮮系もあれば。 悠喜はご飯のおかずになるものは何でも好きだもんね」


 夏月は三人が好きそうなものを手当たり次第選んで松戸へ渡し、松戸はそれを丁寧に箱へ詰めていく。


 さらに、それだけでは終わらなかった。


夏月「このダシの素セットと醤油の詰め合わせ、柚木さん喜びそう!」


夏月「スキンケアセットもいいね。 柚木さんもだけど、晴翔さんも隠れて顔パックやってるし!」


 言いながら、少しずつ息が楽になっていくのを感じる。


 これはたぶん、夏月なりの反抗だった。

 父がどうでもいいと思っているものを、自分にとって大事な人たちのために持って帰る。

 冬川家のものを、翼たちのいる家へ持ち出す。


 それだけで少しだけ気が晴れた。


 そんな夏月を見て、松戸は少し安心したような表情を浮かべた。


ーーーーー


 父が帰ってくる前に、夏月は松戸にお願いして車を出してもらい、自宅へ戻ることになった。


夏月「もらいすぎたけど、いいよね。 貴重な時間を作ってあげてたんだから」


 後部座席には、たくさんの缶詰やお菓子の詰め合わせが置かれている。

 クーラーボックスの中には肉や海鮮も入っている。

 ちょっとした引っ越しみたいな量だ。


松戸「ええ。 よろしいかと」


夏月「すみません、色々わがままを言ってしまいまして」


松戸「私は、久々に夏月様が戻ってきた感じで嬉しかったですよ」


夏月「どういうこと?」


松戸「今日の夏月様は、おしとやかな女性でした」


夏月「なにそれ」


松戸「以前は私に色々とわがままをおっしゃっていましたから。

   その頃を思い出して、私は少し寂しかったもので」


夏月「大袈裟ですよ……」


 そう返しながらも、少しだけ照れくさい。


 松戸の前では、昔はもっと素直だったのだろうか。

 今となっては自分でも曖昧だ。

 ただ、照子として扱われる場が増えるほど、こうして無防備に不満を言える相手も減っていったのは確かだった。


松戸「私の前ではわがままになってください。 今日は大変お疲れでしたでしょう」


夏月「じゃあ遠慮なく!」


夏月「すごい疲れた」


 力なく笑いながら言う。


 その一言に、今日一日の全部が詰まっていた。

 病院も、食事会も、父も、兄も、藤田も、全部。


松戸「お疲れ様でした」


 静かな声だった。

 慰めでも同情でもなく、ただその疲れを認めてくれる声だった。


夏月「お兄ちゃん、大学に行ってないんだ」


松戸「……ええ」


夏月「プライドの高いお兄ちゃんには、きっとこの現状を受け入れることができなかったんだね」


夏月「毎年、部活の大会やテストの成績でマウント取ってくるお兄ちゃんが、今日は無言だったからね」


 思い返せば妙だった。

 苳也はいつもなら何かしら言う。

 見下すようなことでも、自慢でも、とにかく自分の優位を示すようなことを口にする。

 なのに今日は、それがなかった。


松戸「苳也様にとって、初めての挫折でした」


夏月「大丈夫そうなの?」


松戸「私の口からは何とも……」


夏月「松戸も大変だね。

   いっそ、他のところに引き取ってもらいなよ。

   給与も職場の雰囲気も今よりいいところ、たくさんあると思うよ」


松戸「ですが、私は毎年……」


 ちょうどその時、信号が赤に変わった。

 車内が夕陽でオレンジ色に染まる。


 その柔らかい光の中で、松戸は少しだけ目を細める。


松戸「一年に一度、夏月様に会えるのは楽しみですよ」


 その言葉が本心だと分かる。

 父にはない温かさが、松戸にはある。


夏月「ありがとう……」


 6月21日が終わっていく。


 地獄みたいな一日が終わるのは嬉しい。

 けれど、今年はそれで全部終わりではない。

 明日は任務がある。

 今日の重さを引きずったまま、また別のことに向き合わなければならない。


松戸「夏月様、お墓参りに関しては無理なさらないでください。

   奥様は、夏月様が元気でいてくれればそれでいいと思いますので」


夏月「ありがとう……」


 松戸がいてくれて良かった、と心の底から思えた。


 自宅まであと少し。

 6月21日が終わるのは嬉しいが、松戸との別れは少し寂しくもある。


松戸「夏月様は、今一緒にいる方々のことをとても大切に思っていらっしゃるのですね」


夏月「え?」


松戸「今、夏月様と一緒に暮らしている方々へのお土産を選んでいる時の表情は、とても楽しそうでしたので」


夏月「………」


松戸「大事にしてくださいね」


 松戸の言葉が、胸の奥へ静かに沈む。


 翼。悠喜。瑞葵。柚木。晴翔。


 あの家に帰るのが楽しみで、みんなの顔を思い浮かべながら贈り物を選んでいた。

 そんな自分に、言われて初めて気づく。


夏月「ねえ、少し遠回りしてもらうできる?」


松戸「かしこまりました」


 夕陽の光が、鬱陶しいくらい眩しい。


 松戸は何も言わない。

 きっと、夏月が自分の好きなタイミングで話し出すのを待ってくれているのだろう。


 松戸は柚木と年齢が近いというのに、ずいぶんできた人間だ。


夏月「あのさ……」


松戸「はい」


夏月「……今ね、新しく入ってきた新人の子がいるって話したでしょ?」


松戸「はい」


夏月「瑞葵って言うんだけどさ、瑞葵が入ってきてから、色々な感情が出てきて」


夏月「瑞葵はね、正直危なっかしくて。

   最初は受け入れてたんだけどさ……段々と怖くなっちゃって」


松戸「怖い……ですか?」


夏月「瑞葵が任務中に怪我をしてね。

   そのさ……死ぬ……んじゃないかと……色々と」


 言葉がうまくまとまらない。


 怖かったのは瑞葵が危ないからだけじゃない。

 あの場で何もできない自分も、全部が崩れてしまいそうな感覚も、怖かった。


松戸「そうなんですね」


 松戸は急かさない。

 ただ受け止めるように相槌を打つ。


夏月「それとね、今まで三人チームとして頑張ってきたの。

   チームワークも良くなってきてさ、期待してたの」


夏月「あと少しで、お父さんが認めてくれるんじゃないかって」


 口にした瞬間、その期待がどれだけ自分を縛っていたのかが分かってしまう。


夏月「だからさ、瑞葵が来て、それが遠くなっちゃった感じがして……」


夏月「それとさ……お父さんがいなくても翼や悠喜がいればと思ってたのに………私、まだ………お父さんのこと好きなんだと思って……」


 車内に重い沈黙が落ちる。


 けれど、その沈黙は嫌なものではなかった。整理できていない本音でも、そのまま置いておける沈黙だった。


夏月「それとさ……前に翼のこと話したんだけど覚えてる?」


松戸「ええ、リーダーの子ですね」


夏月「うん……。 私ね、翼のこと好きなの。

   そのさ……以前は私のこと、すごく気にかけてくれたの。

   もちろん今もなんだけどさ……」


夏月「その……最近はずっと瑞葵に付きっきりなの。

   それが悔しいというか……いて欲しい時にいなかったりさ……」


夏月「あと……その優しさは私だけのものじゃなかったんだって、妬いちゃって」


夏月「子どもだよね」


松戸「私はいいと思いますよ。

   きっと今いる環境だからこそ、夏月様も年相応になれているのだと思います」


夏月「年相応……」


松戸「苳也様で心配していることは、旦那様の前ということもあり、一度も年相応の言動を見たことがないことです」


松戸「ですので、心配なんです。

   苳也様にとって、かなりのストレスだと思うんです。

   そのストレスが限界を迎えてしまわないか……」


 夏月自身も、今日一日の出来事で薄々気づいていた。

 苳也もまた、父によって追い詰められているのだと。

 毎日そばにいる松戸なら、なおさらそう感じるのだろう。


松戸「夏月様は、きっと今、色々な感情が溢れていて制御できていないのですね」


夏月「そうかもね」


松戸「それでしたら、まずは一つのことに集中してみるのはいかがでしょうか?」


夏月「一つのこと?」


松戸「ええ。 夏月様の場合は、瑞葵様を受け入れる心の準備をしてみるのはいかがですか?」


夏月「一応……してるつもりだけど……」


松戸「それでも、今は旦那様や翼様のことで色々と考えてしまってる状態なんだと思います」


松戸「ですので、まずは受け入れることだけに集中してみるのはいかがでしょうか?」


夏月「受け入れるね……」


松戸「夏月様ならできますよ。 瑞葵様を思っての拒否をされているなら、逆も然りです」


夏月「難しいよ……」


 そう言いながらも、知らない間に心は少し穏やかになっていた。


 6月21日を迎えるまで、松戸の言うように感情が溢れすぎて心が疲れてしまっていたのかもしれない。


 終わったわけではない。

 でも、夏月にとって松戸との再会は、素の自分を出せた貴重な時間になった。


-----


 翼たちが待つマンションに到着する頃には、既に日が沈んだ後だった。


夏月「今日はありがとうございました。ゆっくりしすぎちゃいましたね」


松戸「夏月様、またおしとやかに戻ってますよ」


夏月「私は元々、おしとやかなの!」


松戸「それを聞いて安心しました」


晴翔「夏月!」


 マンションのエントランスに、晴翔と悠喜が迎えに来てくれていた。


夏月「晴翔さん! 悠喜もありがとう!」


悠喜「それにしても、想像以上の土産だな」


夏月「ちゃんとメッセージしたでしょ? 一人じゃ持ち切れないから何人かで来てって」


松戸「千田晴翔様ですね」


晴翔「あ、はい……。えっと……」


松戸「執事の松戸と申します。いつも夏月様をありがとうございます」


晴翔「い、いえいえ……こちらこそ……」


 夏月と悠喜のやり取りを見て安心した表情を浮かべた松戸は、夏月に一言挨拶をしてその場を後にした。


松戸「それでは夏月様、また何かありましたらご連絡ください」


夏月「松戸さん、今日はありがとう。 また日程決まったら連絡ください」


 悠喜は「重っ」と文句を垂らしながらも、夏月の表情を見て少し安心していた。


 部屋に戻ると、残りの三人の姿はどこにもなかった。


夏月「翼たちは?」


悠喜「明日は任務だからって、瑞葵がお願いしてきてな」


夏月「瑞葵が?」


悠喜「今日はトレーニングの予定入れてないからって理由で、稔さんは空いてないし、翼が練習相手。

   柚木さんが別メニュー考えてくれてる」


夏月「そっか……」


悠喜「悪かったな、翼じゃなくて」


夏月「妬いてるの?」


 夏月はにやっと意地悪な表情を見せる。


 悠喜は「妬くほどかわいければ良かったんだけどな」と軽くあしらい、次の瞬間、夏月から脛を蹴られた。


悠喜「いっっっっっったああああ!」


夏月「言っとくけどね! 私は顔はいい方だから!」


悠喜「だから脛はやめろって言ってんだろ!」


晴翔「夏月!」


夏月「はい?」


 痛がる悠喜を無視して、夏月は晴翔の方へ向かった。


晴翔「柚木さんから伝言。

   トレーニングから帰ってきたら、明日の任務について話したいことがあるから待っててほしいって」


夏月「そうですか」


晴翔「それと、今日はお疲れ様。 ゆっくり休んでくれ、だってさ」


夏月「分かりました……。 でも……」


 そこで一瞬迷う。


 今日一日の疲れはたしかに大きい。

 けれど、このまま部屋で休んでしまったら、また父の顔や病院のことばかり思い出してしまいそうだった。


夏月「やっぱり私もトレーニングさせてください!」


晴翔「え? でも……」


夏月「なんか、ここ最近、今日のことでトレーニングに集中できなかったんで」


晴翔「それじゃあ、柚木さんに聞いてみるか。ただし、今日はアップ程度にしとけよな」


夏月「分かりました」


 夏月は大きく深呼吸をして、松戸の言葉を胸に刻む。


松戸『一つのことに集中してみるのはいかがでしょうか?』


松戸『瑞葵様を受け入れる心の準備をしてみるのはいかがですか?』


夏月(意外と気づかなかったのかも……。 大事なこと……)


悠喜「トレーニング行くんだろ?」


夏月「悠喜はどうするの?」


悠喜「行くに決まってんだろ!」


夏月「悠喜はほんとに優しいよね」


悠喜「は? なんだよ、急に」


夏月「なんとなく……」


夏月「でも、本当にありがとう。 色々と相談乗ってくれて」


悠喜「はあ……いいから、とっとと行くぞ」


夏月(照れてるんだ。かわいいとこあるじゃん)


 まだ全てが終わったわけではない。


 それでも、6月21日が終わると自然と心が晴れていくのが分かる。


 そして、夏月には仲間がいる。


 それが夏月にとって大きな支えになっていた。


 いつもなら、マウントを取ってくる兄にイライラしながらも、翼と悠喜が仲間なのが唯一勝てる点だと心の中で兄に挑発するところだ。


 でも今年は違った。


 少しだけ兄のことが心配だ。

 けれど、それに気を取られてはいけない。


 明日は任務――。


 晴翔にトレーニングルームのある場所まで送ってもらいながら、夏月は「大丈夫」と自分に言い聞かせた。


 そうしてトレーニングルームに入った、その瞬間だった。


夏月「え?」


 トレーニングルームの端で休憩を取っていた翼の隣にいたのは、同い年くらいの髪の長い見たことのない女子だった。

次回予告


夏月「というより、なんで瑞葵が女装してるの!」


6月21日を終え、ようやくいつもの日常へ戻ってきた夏月。


しかし、トレーニングルームで待っていたのは――

翼の隣にいる、見知らぬ女の子!?


そして明かされる、夏月と瑞葵に託された次なる任務。


柚木「今回、調査するコロシアムは女性専用なの」


再び向かうことになった西横。


初めて夏月がメインを任される任務。

そして、その隣に立つのは翼ではなく――瑞葵。


父に認めてもらいたい。


任務で結果を残したい。


そして――瑞葵を受け入れたい。


様々な感情を胸に、夏月は新たな一歩を踏み出す。


いよいよ二人だけの任務が、始まる。

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