EP.1-0 その評価は、静かに下される
初めまして、Time Bombです。
2026年1月1日にプロローグを投稿させていただきました。
少しでも Abyss Trigger の世界観を感じていただけたら幸いです。
今回はエピソード1の導入にあたるお話となっております。
そのため表記は EP.1-0 とさせていただきました。
完結までは長い物語になりますが、
不定期ながらも少しずつ投稿していく予定です。
物語の行く先を、ゆっくり見届けていただけたら嬉しいです。
黒崎「ご苦労様。美神くんのチームを見せてもらったよ」
柚木「ありがとうございます」
そう声をかけた男は、黒崎瑛一。
SECRET Xの中枢に名を連ねる人物でありながら、その全貌を知る者はごくわずかだ。
柚木自身もまた、立場の関係上、組織の体制すべてを把握しているわけではない。
黒崎「今回は野畑――瑞葵くんが危ない場面もあったが、
結果としてはターゲットの確保に成功している」
柚木「はい。しかし、あのような状況では……」
黒崎「美神くん」
黒崎は穏やかな声で、しかし確かな重みを持って言った。
黒崎「まずは“確保できた”という事実を、きちんと褒めてあげよう」
柚木「……いいえ。これは遊びではありません。
今回はあくまで練習に近い形で、組織の方々に協力していただいただけです。
実際の現場は、あのような“ぬるま湯”ではありません」
黒崎「そうだね。君の考えはよく分かる」
一拍、間を置く。
黒崎「だが――たまには褒めることも必要だ。
君のチームは、全員が心に傷を負ってここに来ている。
評価される経験は、生きる力になる」
柚木「……はい。
だからこそ、この組織に一刻も早く認めてもらう必要があります。
それが、私の役目です」
黒崎「相変わらず、ブレないね」
小さく笑い、黒崎は続けた。
黒崎「今回は“ミッション成功”だ。
おめでとうを送っておこう。
今後も、君たちのレベルに合わせて依頼を回す」
柚木「ありがとうございます」
それだけを告げ、柚木は一礼すると会議室を後にした。
扉が閉まる。
黒崎「……まったく」
誰もいなくなった室内で、黒崎は小さく息をついた。
黒崎「君は、あの子たちに甘いのか……それとも、誰よりも厳しいのか」
美神柚木。
彼女もまた、心に深い傷を負い、この組織に身を置くことになった一人だった。
瑞葵たちにとって、柚木は冷たい存在に映っているだろう。
だが――
黒崎は知っている。
彼女なりに、不器用なやり方で、
あの子たちを守ろうとしていることを。
そして、それを誰よりも理解しているのは、
この組織の中で、黒崎ただ一人だった。
次回予告
初めての任務を終え、
瑞葵は自分の“弱さ”と向き合うことになる。
評価されることの重さ。
ここに残るために必要な覚悟。
――怯えないこと。
それは、生き残るための第一歩だった。




