表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/129

第84話 似ている

時間はほんの少しだけ遡る。


カナデの姿は学院の地下にあった。



「この中にフラリーヌと言う女性は居ますか」



アルトから頼まれたフラリーヌの安全確認と保護、正直頼まれるつもりは無かったが、目の前で死なれては受けない訳には行かない。



「フラリーヌは私です」



そう言い、数人の子供に囲まれた女性が姿を見せる、見たところ無事の様だった。



「私に何かご用ですか?」



アルトの事を正直に伝えるべきなのだろうか。



「そちらのお子さんは?」



「あ……この子達は」



子供を見て少し涙ぐむ、だが必死に堪えている様だった。


何となく察しはついた……戦争で親をついさっき亡くした子、もしくは安否の分からない子達なのだろう。


彼女に本当の事を伝えるか迷った。


だが、後から知った方が辛い。



「アルトをご存知ですか?」



「あ、アルトさんに何か?」



彼女の表情は不安に染まる、アルトが嘘を言って居た線は無くなった。


そしてカナデは一呼吸置いて冷静に告げた。



「彼が死ぬ間際に貴女を守る様頼まれました」



「え?死ぬ間際?」



「はい、アルトは国を守り、最後に貴女を思って亡くなりました」



そう伝えた時、フラリーヌは力無く崩れ落ちそうになる、だが子供が手を握り締める感触に気を強く持ち直した。



「そう……ですか」



強い女性だった。



「ありがとうございます……貴方は?」



「ただの通りすがりです、この地下は安全ですし……もう直ぐ全てが終わるので、俺は行きます」



そう言いカナデは地下を後にする、彼が去った後、フラリーヌは子供達を抱きしめた。


アルトは最初はただのお客さんだった。


髪はボサボサで、気怠そうな彼はお世辞にもいい男とは言え無かった。


それこそ花屋に来る様な人には見えず、連日で来た日には私が目当てだと直ぐに分かった。


だが彼は私が花が好きと言えば必死に花の知識を覚え、本が好きと言えば本を読んで私に勧めてくれた。


その時に思った、この人は好きになった相手にちゃんと寄り添ってくれる人なんだと。


その頃から私も彼の事が気になり始めた。


そしてどれほど経ったか、彼は深刻な顔をして私にとある秘密を打ち明けてくれた。


それが転生者であり、メイガスタを暗殺するためにルデールへ来たと言う事だった。


勿論驚いた、そして彼が過去にした事も知った……だが、彼は私の前でメイガスタを暗殺する任務を放棄し、二度とこんな仕事はしないと言った。


勿論、人を殺した過去は消えないし、そんな言葉は嘘かも知れない。


だけどもう……私も、彼を好きになって居た。


そしてその後から正式に私とアルトは付き合い始めた。


彼はメイガスタにもそれを打ち明け、学院の教員としてちゃんと働き始めた。


彼との日々は楽しかった。


落ち着いたら、教員を辞めて花屋を一緒にやろうとも言ってくれた。


彼は賢者を継ぐ気は無かったらしい、そして度々口にして居た。


人を殺した自分が幸せで良いのかと……彼は本当はとても優しい人間だった。



「フラリーヌ、子供の世話変わるわよ」



先程のカナデとの会話を聞いて居た近所のおばさんがフラリーヌにそう語りかけ、子供を預かる、そして彼女は膝をついた。


声を押し殺し、彼女は静かに泣いた。



「残酷だ」



カナデは呟く。


戦争は大切な人を簡単に奪う、逆もまた然り、大切な人を簡単に奪ってしまう。


アルトは……何処か自分に似て居た。


生まれた訳ではないが、守りたい国があり、その国に大切な人が居る……正直自分に重ね、同情した。


だからフラリーヌにも会いに行った。



「カナデ先輩、暗いっすよ?」



「いつもこんなもんだろ」



ムタにそう告げるとカナデはカーニャの気配がする方に急ぐ、どうやら戦闘中の様だった。


だが、その途中で急に足を止めた。



「どうしたっす?」



「敵だ、気配感じないか?」



「へ?」



ムタはアホ面して首を傾げる、だが突然現れた影から少女が姿を現した。


赤い瞳に黒髪……その風貌に覚えがあった。



「お前はクリミナティの奴だな」



「赤髪、やっと見つけた」



そう言い剣を構える、恐らくアルト達を倒したのは彼女の筈だった。



「片凪を知って居るか?」



「片凪なら知ってるよ」



その言葉にカナデは目を見開いた。


クリミナティのメンバーが多いこの戦争で何か情報が手に入ると思い戻った……だがこうもあっさり辿り着くとは。



「あいつは何処にいる」



「なら、あんたは何で転生者を殺すの?」



「言う訳ないだろ」



「それはこっちもよ」



力尽くでと……言う訳だった。


ミソラは剣を構えて距離を詰める、彼女の能力は敵の能力の無効化、カナデも転生者……故に能力は無効化される。


だから先手を打った、攻撃を防ごうと能力を使うと踏んで。


だが、それが間違いだった。



「痛っつつ!!?」



突然右腕に痛みが走る、それと同時に腕が舞う……カナデに能力など無かった。


いや、厳密には使う必要など無かった。


ミソラの能力は相手の能力の無効化、その点ではカナデも無力化されて居た。


女神の力をもらって居る時点でカナデも能力者、だが純粋な能力の差が大き過ぎた。


ミソラは舞う腕を見て即座に退いた。



「影!撤退する!!」



そう言うと彼女は影に沈む、そう簡単に逃す訳無かった。



「逃すかよ」



そう言い剣を振り下ろす、だが何か透明な物に阻まれた。


誰かしらの能力……透明なバリアを破る頃にはミソラは消えて居た。



「逃げられたか」



少なくとも彼女以外に2人は転生者が居た……バリア能力と影の能力、やはり組織を相手にするのは厄介だった。


だが、彼女のお陰でクリミナティに片凪が居るのは確定した……俺の行動は間違って居なかった。



「行くぞムタ」



「はいっす」



ムタを連れてカーニャの元へ行く、此処までがカーニャと出会うまでの流れだった。


そして時間は彼女と拳を合わせた所まで進む。



「そう言えばメリナーデは?」



「メリナーデ様なら別の場所に居る、流石に戦争の現場には連れて来られないからな」



「そうなんだ」



カーニャはあまり興味が無さそうだった。


それはそれでメリナーデが可哀想だが、こんな状況なら無理もないだろう。



「君は、アリアだったね」



「はい」



「大変だったな」



彼女の事情は知っていた、と言うより今知った。


感覚伝達魔法とでも言うべきだろうか、まぁこれが便利だった。


と言っても伝わるのは感情とかだけでそこからは推察するのだが、アリアから伝わった感情は三つ。


怒り、悲しみ、そして罪悪感。


しかもそれら全てが大きい感情となって居る、このレベルまで大きくなると考えられるのは身内の死、そして罪悪感は裏切りとかだろう。



「こっちの子は?」



「私はルナリスですわ」



「ルナリスか、2人ともカーニャをありがとう」



「別に大した事ではないですわ」



「それに、私達の方が助けられてたし」



3人は、かなり硬い絆で結ばれて居る様だった。


それぞれがそれぞれを信頼して居る……あのカーニャがこれ程に信頼できる友達を作って居るとは、嬉しい成長だった。



「談笑はそこそこに、救助に当たるか」



もう敵は居ない、だが彼らが国にもたらした被害は甚大だった。


ルデール国の首都であるルデール住民30万人、死者8万人、負傷者は10万以上に上った。


この戦争で国の最高戦力であるアルトとメイガスタが死亡、十傑も全滅して居る事が確認され、ルデールは一気に弱体化した。


そして当然、それは周辺諸国にも知り渡った。



「ルデール、大丈夫かな」



街を見下ろせる高台でアリアは呟く。



「分かりませんわ、ただ……全てがリセットされましたわね」



あの一件から3日の時が過ぎていた。


ルナリスの言葉通り、ルデールはリセットされた。


主要な貴族は甚大なダメージを受けた。


当主が死んだところも居れば、高齢なのに後継が死んだ家もある……全ての貴族に通じて言えるのは、権力が絶対的では無くなったと言う事だった。


そしてルデールの実質的国王でもあった賢者のメイガスタが無くなった事により、国内は少し荒れていた。


当然問題は誰が国王となるか、看板だけの国王だった者も死に、後継の居ない現状、本当に一からの決め直しだった。



「ブレット、大丈夫ですの?」



「んあ?別に大丈夫さ」



ベンチに座り、ただ天を仰いでいたブレットにルナリスが声を掛ける、大丈夫……そう聞かれれば大丈夫と言うしかない。


レレリアが死んだ、そしてレンデア家も殆ど壊滅状態、父も死に……いきなりブレットが当主だった。


色々な事が起こり過ぎて居た。



「そういや、アリア……処分が無くて良かったな」



「うん……」



国を裏切る、本来なら死罪確定の大罪だった。


だが彼女が殺したのは転生者、それに国に情報を流して居たのも十傑のグレイだった。


そして国がゴタゴタして居るこの状況……アリアは状況に救われた。


要するに構って居られないと言う事だった。



「別に気にすんな、何か言う奴がいても俺たちが居る」



「そうですわ」



「だね」



ブレット、ルルノア、ルナリスが口々に励ます……その優しさが痛く、同時に嬉しかった。



「そう言えば、カーニャ……もう行ったかな」



「さぁ、ただ……あいつのあんな顔、初めて見たな」



そう言いブレットは思い出して笑う。


その笑いに他の皆んなも釣られた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ