↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
PR
85/96

温泉まで

「いや、相変わらず君は器用だよね。まさか、異世界で車を見ることが出来るなんて」

「エアコンもカーナビもねぇがな」

翔が異世界で作り上げた車に触りながら相も変わらずの器用さに感心すら抱く煌。

「これならバイクも作れるよね? 一つ頼むよ」

「はぁ? なんで俺がそんな面倒なことしなきゃいけねぇ」

「どの道皆で動くなら移動手段は必要でしょ?」

「チッ、仕方がねえな」

渋々了承する。

これからは翔達だけではなく、ローレルや煌の仲間も含めて移動することになる。

流石に車一台で全員を乗せるには限界がある。

「私はいいのですよ。私にはカオドンがいますから」

「妾は馬車ではないわ!」

カオドンに抱き着くながら言うローレルに否定の言葉を叫ぶが結局はその背にローレルを乗せることになる未来が容易に想像できるために無視した。

「…………………こんな鉄の塊が本当に動くの? 正直信じられないんだけど」

ルビーノが車を軽く叩きながらそんな疑問を口にする。

その反応にプリセラもクーファも同様の反応を示すと、ラヴァン達はかつての自分達と同じ反応に苦笑い。

そして、そんな疑問を口にしたルビーノを見て翔は悪い笑みを浮かべる。

「おい、煌。特別にそいつら乗せてやれ。魔力を流せばエンジン代わりに動くからよぉ」

「そうだね。了解」

翔同様に悪い笑みを見せる煌。

幼馴染二人の悪い顔にローレルは気付いて合掌。

普段は気さくで優しい煌だが、そのお腹は黒いことを知っているのは幼馴染である三人だけ。

100%の心が真っ白な善人などこの世には存在しないのだ。

煌はルビーノ達を車に乗せて急発進。

「いやぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」

これまでに体験したことのない速度で動く車という存在をルビーノ達は絶叫と共に思い知らされる。

遠くなっていく煌達を置いて翔は移動手段に使うバイクを作る為に行動する。

「では皆で温泉に行きましょう! 翔もついてくるのですよ!」

「はぁ? 温泉?」

行動しようとした矢先にローレルから誘いを受ける。

「実はこの街に来る前にカオドンの背中から天然温泉を見つけたのです! そんなに距離もありませんでしたし、カオドンの背中に乗っていけばすぐにつきますよ」

「だから妾は馬車ではないわ!」

後ろからローレルに抱き着かれて暴れるカオス・ケイネス・ドラゴン。だが、どう見ても駄々をこねる子供しか見えない。

「お願いなのです、カオドン」

「うぬぬ………………仕方がないのぅ」

懇願され、折れたカオドンは擬人化を解いて竜の姿へと戻る。

翔達の眼前に広がる巨大な翼。太陽の光に反射して輝く銀色の鱗。小山のような巨躯、無骨に鋭い鉤爪にぞろりと並ぶ鋭い牙。

異世界(ファンタジー)定番の最強という称号を冠するモンスター、ドラゴン。

『ほれ、さっさと乗るがよい』

「はいなのです。ほら、皆も一緒に」

それが幼馴染の手によってただの便利な乗り物にされていることに、翔の中にある男の子として抱いていた幻想らしきものが崩れた気がした。

「ほら、翔も」

微笑みながら手を指し伸ばしてくるローレルに溜息を吐いてその手を掴む。

「わぁーたよ」

『では行くぞ』

大空に向かって、その大きな翼を広げ、人ならざる圧倒的力を持って地を蹴り、力強く羽ばたき、その場を飛び立つ。

上昇するカオドン。地面は瞬く間に小さくなっていくのを見てあたりを見渡すとそこはもう空の世界。

「凄い………………………」

世界を一望できるかのような光景にポツリと誰かが呟いたが、その気持ちには翔達も同意する。

「ふふ、どうですか?」

翔達の反応に微笑ましくも笑うローレルに少しムカッとはしたが、素直に観念する。

「ああ、凄ぇよ」

『そのままじっとしておれよ』

ドラゴンの背に乗って世界を一望できる日が来るとは。翔は戦争だらけのこの世界が初めて美しいと思えた。

カオス・ケイネス・ドラゴンこと、カオドンの背中の乗って空の旅を満喫する翔達だが、目的地である温泉にはすぐに到着し、カオドンは温泉の近くで着地する。

「こっちなのです」

そこからローレルに案内され、翔達はそれに従うと確かな天然温泉がそこにあった。

「へぇ………………」

初めて見る天然温泉に翔は温泉の中に手を入れるも、手頃な湯加減だった。

一応は魔術で周辺の確認と温泉に害がないかを調べてみるも問題はどこにも見当たらなかった。

「お前にしてはいいとこ見つけたじゃねえか、ローレル」

「ふふん♪」

豊満な胸を張るローレル。

「んじゃ、少し改築するか」

翔は錬金魔術を使って温泉の周囲に壁を作り出し、更には温泉を二つに遮るように壁を作っておく。

男女別々には入れるように少しだけ改築いた翔は早速温泉に入りに行く。

「じゃ、お前等はそっちに行けよ」

「何を言っているのですか? 翔も一緒に入るのですよ?」

当たり前のように言ってくるローレルに翔の足は止まった。

「よく一緒にお風呂に入っていたじゃないですか」

「「「「ええ!?」」」」

「ガキの頃の話だろうが!! とにかくお前等はそっちに行け! こっちにはくんな!!」

荒い足踏みで向かう翔に女性陣は渋々と翔の反対側に向かう。

「たくっ………………あの天然め」

愚痴りながら服を脱いで温泉に浸かる翔。その胸に赤黒い線が浮かび上がっている。

「チッ」

その線が何か理解している翔は苛立つように舌打ち。

白亜の塔で起動させた神霊言語を用いた神霊魔術。己の分を超えた力を行使した代償だ。

人間である翔に神の力は負担が大きすぎた。

今まではその一部分だけだった為に問題なく使えたが、使徒との戦いはその枠を超えた。

神霊魔術を使い続ければ翔はその身が破滅するか、人を捨てるか。そのどちらかの道に進まなければならない。

そのことをカオス・ケイネス・ドラゴンであるカオドンは見抜いているだろう。

黙っていてくれているのは正直ありがたかった。

「屑には上等な死に方だ………………」

この身が破滅しようが、人を捨てようが翔にとってはそんなことはどうでもいい。

その道を進む覚悟はとうにできている。

翔は自分が勇者でも英雄でもないことぐらいわかっている。だから、力を得る為にはそれ相応の代償を払うのは当然のことだ。

自分の全てを、それこそ人を捨てることになっても翔は力を求める。

全てはあの二人の為に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。