幼馴染集結
朝の騒動から一段落。翔とローレルは冒険者ギルドに向かっていた。
ブランクの誘導で翔とローレルは再会し、残るは煌ただ一人。もし、ブランクが煌をこの街に誘導しているのなら冒険者ギルドに足を運ぶと判断して向かっている道中、周囲の視線は二人、いや、ローレルに集まっている。
滅多にお目にかかれない美少女であるローレルに思わず二度見する人もいれば、卑下な笑みを浮かべる者もいるも、そういう輩は翔の鋭い眼光に当てられて慌てて視線を逸らす。
「煌、いますかね?」
「さあな」
煌がこの街にやってくるのか自体、推測の域を出ていない。
だからいない可能性だって十分にある。
「…………………………そういや、お前はどこに転移してたんだ?」
二人を逃がす為にこの世界のどこかにランダム転移させた翔はその後の行く末が気になって尋ねてみた。
「どこかの森の中ぐらいしか言えないのです。あ、でもそこはカオドンの縄張りだったから大変だったのですよ。パックンされるところでした」
「よく食われなかったな」
「慌てて魔法を使って空から隕石を降らしてカオドンを倒したのです。ドラゴンキラーですよ」
「殺してはねえだろうが」
呆れながらも内心驚きを隠せれない。
ローレルはその時点で既に古代竜を倒せれるだけの実力を持っていたことになる。想像することが得意とは思っていたが、隕石を降らせるとは予想外もいいところだ。
「それからはカオドンと一緒に世界中を旅していたのです。空から」
「そりゃいい身分なこって」
流石の翔も古代竜を倒してその背に乗り、空を飛んで移動しているとは考えもしなかった。もしかしたらどこかですれ違っていたかもしれない。
「翔はどうなのですか?」
「ハッ、たいしたことねえよ」
そう言って足早で動く翔の後ろを微笑みながら追いかけるローレルは気付いている。
たいしたことがないのならたいしたことがあり、それを心配させないように気遣って翔ははぐらかしている。相変わらずの安定したツンデレにローレルは思わず笑ってしまう。
「無茶するなって言っても翔も煌も無茶しますからね~」
「うっせ」
ぶっきらぼうに答える翔達二人は目的の場所である冒険者ギルドが見えてきた。
「あそこだな」
「そうみたいですね」
二人は冒険者ギルドに入ると、中にはゴロツキのような冒険者で溢れている。元々冒険者というのは荒くれ者の為に二人はさして気にすることなく入るも、ここでも邪な視線をローレルに向ける輩を翔が睨み付けてローレルから視線を外させる。
ギルド内を見渡して翔は一つのテーブルに腰を落ち着かせているパーティーに近づいて鎧を着ている青年に声をかける。
「おい」
その呼び声に青年は振り返って翔とローレルの顔を見て微笑む。
「やぁ、久しぶり。翔、ローレル」
当たり前のようにそこにいたのは勇者としてこの世界に召喚され、二人の幼馴染である煌がいた。
「煌! 久しぶりなのです!」
幼馴染である煌との再会にローレルは抱擁するも、煌は微笑みながらローレルの頭を撫でる。
「ああ久しぶり。ちゃんと毎日御飯食べてた? 歯をしっかり磨いて、夜更かしせず寝てたかな?」
「ママですか!? 煌は私のママですか!?」
我が子を心配する母親の台詞に驚かされたローレルだが、煌は「冗談だよ」と流した。
「変わらねえな、お前も」
「そういう君も変わらないね、翔。また無茶をしたみたいだね」
「うっせ。余計なお世話だ」
「はいはい」
一目で翔が無茶をしていることに気づいたのはそういう男だと知っているからだ。
特にローレル絡みになると余計になのは伏せておく。
「ちょっとコウ。いつまで抱き着いてんのよ」
刺々しい物言いで口を挟むのは煌と同じテーブルにいる赤毛の女性だ。
赤い髪をサイドポニーで纏め、赤銅色の瞳を持つ目つきの悪い女性は不服そうに煌とローレルを睨んでいる。
「あたしは気にもしないし、あんたが誰と抱き着こうがあんたの勝手だけど、それであたし達にまで迷惑をかけないでよね。別にあたしは気にしないけど」
「アハハ、ごめんごめん。許して、ルビーノ」
「別に謝らなくてもいいわよ。気にしてないんだから」
謝罪する煌に頬を膨らませてそっぽを向くルビーノのその反応にローレルは瞳を輝かせる。
「おお、ツンデレヒロインなのです。翔と同じツンデレなのですよ」
「「誰がツンデレだ(よ)」」
「息もぴったりなのです」
ツンデレという言葉に反応してしまう翔とルビーノは互いに顔を見合わせて睨み合う。
「なんだよ?」
「あんたこそ何よ?」
互いに目を逸らさず、睨み合う二人の間に火花が散っている。
もはや、目線を先に逸らした方が負けという感じで意地で睨み合う二人に煌もローレルも苦笑いする。
「まぁまぁ二人共その辺にしておこう?」
「「フン!」」
煌が仲裁に入って止めさせるも二人は仲良くできそうにないと思った。同族嫌悪なのだろうか。
「まぁ、気を取り直してこちらの鎧を見ている人がプリセラ。それでこちらの金髪の子がクーファ」
「………………………………」
「よろしく」
無言で頭を下げる全身鎧のプリセラ。名前と鎧の形状から女性だということはわかるもそれだけだ。金髪紅眼の女性というより少女、クーファは淡々とした口調で挨拶してきた。
「翔だ」
「ローレル・ラウルスなのですよ」
互いに自己紹介を済ませる。
「それにしても翔も煌も見事にハーレムを完成しているのです。私の幼馴染はハーレム野郎とは………………………爆発しやがれです。この野郎」
「好きでしてねえっての」
「あはは………………………」
多くの女性に囲まれている時点でハーレムだということを否定できない。
「んなことより、おい、煌。お前もブランクに言われてこの街に来たのか?」
「そうだね。怪しいとは思ったけど、そのおかげで君達とこうして再会を果たすことができたのだから感謝しないとね」
やはり煌も翔やローレル同様にブランクに誘導されてこの街に集められた。
「……………………あいつがどんな目的で俺達を集めたか、心当たりはあるか?」
「残念ながら」
三人共心当たりはなかった。これでますますブランクの目的がわからなくなってきた。
「まぁいい。俺の仲間も紹介しておく。ついてきな」
「そうだね、君がお世話になっている人達にきちんとお礼を言っておかないと」
「ぶっ飛ばすぞ」
「冗談だよ、冗談」
冗談を言いながらもこうして三人は無事に再会することができた。
それがなによりも嬉しかったとは、口が裂けても言えない。




