朝から
「うぅ~朝から酷いですよ………………………」
「人の服を涎で台無しにした罰だ」
宿にある食堂に集まって朝食を取る翔達。
ローレルはまだ痛む頭を擦りながら文句を言うも一蹴する。
「おかわりじゃ!」
そんな二人を苦笑しつつ見守るラヴァン達とおかわりするカオドン。
「んー、やっぱり好きな人だとショウも対応が違うね。私だと足蹴りで追い出されたよ」
「それはそれでどうかと思いますが、仕方がないと思いますよ? ずっと探していた人なのですから」
煌とローレル。二人を探す為に世界中を動いていた翔達はまともに集まらない二人の情報のなか、僅かな可能性を信じて二人を探し続けた。
二人が生きている事を信じ、されど、死んでいるかもしれない不安を抱えながら旅をしてきた。
会いたいという気持ちも、無事だったことに安堵する気持ちも人一倍強かったに決まっている。
「愛されているのですね、ローレルさんは。少しばかり羨ましいです」
「少しどころかすっごく羨ましいよ」
自分達は何度も好意を向けても決して首を縦に振ることをしなかった。それはそれほどまでにローレルを愛してやまない証拠だ。
「だいたい、涎を垂らすってガキがすることだ。いい加減に直せ」
「うぅ~朝から翔は厳しいですよ~ハルハル」
「よしよしです」
ローレルの膝上に座らされているハルは後ろから抱き着いてくるローレルの頭を優しく撫でるも、当の本人はただ単にハルの獣耳と尻尾に触ってモフモフしたいだけ。
当然それに気付いている翔は深い溜息を吐く。
「おかわりじゃ!」
ラヴァン達から見てもローレルは絶世の美少女だと思える。
思わず見惚れてしまうほどの端整な顔立ち。女性から見ても羨ましいスタイル。気安く人懐っこい物腰や、常に笑みを絶やさない柔らかな雰囲気についこちらも頬を緩めてしまう。
不思議な魅力を持つローレルにこれなら翔も惚れるのも無理はないと思ってしまう。
「おい、口にソースがついてんぞ」
「翔、取ってください」
「たくっ、本当にガキだな…………ちった成長しやがれ」
文句を言いながらもハンカチでローレルの口についているソースを拭うその光景は面倒見のいい兄と手のかかる妹のように見える。
そこでサクロは自分の頬にソースをつけて翔に見せる。
「ショウ、私もソースついたから取って」
「自分で拭け」
「やっぱり冷たい………………………」
見向きもせず一蹴されるサクロはガクリと肩を落とす。
「それでショウさん。今日はどうなさるおつもりで?」
食事をしながらエルティが今日の予定について翔に尋ねると、翔も「ああ」と返答して言う。
「俺とローレルは冒険者ギルドに行くつもりだ。煌がこの街に来るのならまずはそこに顔を出すと思うしな」
「そうですね。煌ならそこに行くと思うのです」
翔の言葉に幼馴染であるローレルも同意する。
「あいつがこの街に来る可能性がある以上はしばらくはこの街に滞在するつもりだ。まぁ、元から休憩目的で来た街だ。お前等はお前等で好きにしろ」
元々は白亜の塔との戦いで疲れ切った心身を癒すために来た為に各自好きなようにさせる。
「そういえばそのコウという方はどのような方なのですか?」
「困っている奴ならどんなクズでも放っておけない根っこからのお人好し勇者様」
「その上を行く素直になれないツンデレのお人好しが翔なのです」
「お前は余計なこと言ってんじゃねえ」
「アイタ! 暴力反対です!」
余計な一言を話すローレルの頭に手刀を入れる翔にローレルは抗議するも無視される。
「あとはクソがつくほどイケメンだな。女子から結構モテてた」
「女子の一部ではツンデレというギャップ萌えに当てられて煌より翔がモテてました。更に腐のつく女子生徒からは二人の間に熱々な関係を期待する熱い眼差しが向けられることもしばしば。特に熱い展開は私が描いたソフトS煌×ヘタレ受けの翔の濃密な一夜が大変な人気を誇って……………あ」
「ほう? どういうことか詳しく聞こうか?」
表情は笑っていても目は全く笑っていない翔にローレルは余計なことを言ってしまった為に冷汗を流す。
「じょ、冗談ですよ………………………」
「そうか、冗談か」
「はい、冗談なのです」
「そうかそうか」
「ふふふ」
「………………………………」
「む、無言で返すのは止めて欲しいのです………………………」
「何か言い残すことはあるか?」
「ご、ごめんなさいすれば許してくれますか……………………?」
「許すと思ってんのか!! この天然オタク女が!!」
「ご、ごめんなさいです!! あまりにもいい作品だったのでつい友達に自慢したくなっただけなのです!! 悪気はないのですよ!!」
「あったら余計に悪いわ!!」
ハルを盾に身を隠す(隠れていない)ローレルに怒りの形相で憤る翔。
そんな二人の呆れるラヴァン達はどうにか翔を宥めに入る。
「おかわりじゃ!」
そして古代竜ことカオドンはマイペースに朝食を取っていた。




