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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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初めての街

煌とローレル。魔族襲来の際にこの世界のどこかに逃がした翔は二人を探すために旅に出ていた。

初めに目指す場所は人が住む街だ。そこで情報を集める。

二人の居場所、古代魔法(エンシャント)、それ以外にもこの世界に関する情報が翔には必要だ。

確固な意思を胸に秘めてレノアの家を出てから早くも一週間。

翔は今―――――

「ハッ、こんなもんかよ?」

「あ、が…………」

傷だらけのガラの悪い男の胸ぐらを掴んで持ち上げている。

その周辺には同様にガラの悪い男達が呻き声を上げながら地面の上に寝転がっている。

「ひぃぃぃぃッ!?」

その近くで商人風の小柄な男性が腰を抜かしながら悲鳴を上げていた。

「ショウ様。やはりこの近くに荷台車がありました。中には奴隷も…………」

「………………奴隷商人ってやつか?」

「はい」

白髪で白のローブを羽織る女性、ラヴァンは首を縦に振って肯定した。

元ネイション王国一の魔法使いであったラヴァンは師匠であるレノアの計らいで翔と共に旅を出て襲撃者の正体を探っていた。

旅を始めてモンスターを撃退しながらも街を目指していた二人にこのガラの悪い男達は卑下な笑みを浮かばせながら二人の前に立ち塞がっていた。

そして、今は腰を抜かして怯えている奴隷商人がこう言った。

『大人しくするのなら命だけは助けてやろう』

余裕綽々とそう言ってのけた。

自分には雇った屈強な男達がいる。だからたった二人に負けるわけがないとそう思い込んでいたのだろう。

一般人なら怯えて大人しくしていただろう。

だが、この男は違った。

『あぁ?』

苛立ちを滲ませた声と共に眼前に立っていた屈強な男を殴り飛ばした。

予想外なことに目を丸くする男達を翔は容赦なく拳を振るった。

その結果、無双。

拳のみで翔は男達を黙らせた。

「……………………ショウ様は魔術師ですよね? 拳闘士ではありませんよね?」

共に旅をしているラヴァンもその光景に思わずそう尋ねてしまう。

「こんな雑魚に魔術を使うまでもねぇ。向こうのほうがまだ強ぇ」

剣やナイフなどの武器を持っていたが使いこなせていない。それではただのハリボテと変わらない。

動きも雑。元の世界でかじりとはいえ武術や格闘技を習っていた奴に比べれば格段に弱い。

翔は掴んでいる男を放り投げて奴隷商人に歩み寄る。

「た、頼む! 命だけは……………命だけはお助けを……………………ッ!!」

腰を抜かしている為に立ち上がれない奴隷商人はそれでも懸命に逃げようとするも翔に頭を鷲掴みにされて無駄に終わった。

「《術式展開・氷結》」

呪文(スペル)を口にして魔術を起動させる。すると奴隷商人の手足が凍った。

「知ってるか? 人間の半分以上は水でできていてな。だからすんなりと氷漬けにできる」

口角を上げてせせら笑う魔術師は奴隷商人に言う。

「凍りついたお前の手足を砕いて放置してやる。そうなればどうなるかわかるか? お前はモンスターに抵抗することもできずに無残に食い殺される」

「あ、あああ……………………」

顔色を青を通り越して白くなり、恐怖のあまりに歯をカチカチと鳴らす。

股の間には小さな水溜りができる。

「助け…………………助け下さい、お願いします! 何でも、何でもしますから命だけはお助けを!!」

それでも助かりたい一心で命乞いをするも翔は鼻で笑った。

「ハッ、どの口が言いやがる? 奴隷商人は自分以外の奴の命を物のように扱って金にする仕事だろう? それを自分の命は大切だから助けてだ? 都合がいいにも限度がある」

冷たい眼差しで見下しながら翔は告げる。

「それともお前は命乞いをしてきた奴を助けたのか? ……………………ああそれとこれはただの俺の推測なんだが、友好的なフリをして近づき、騙し、薬を盛ったり、子供を人質に取って親子共に拘束。なんてこともしたんじゃねえか?」

「……………………………っ」

その言葉に肯定も否定も取らなかったが、その目が答えを明確にした。

「ならどんな惨い最後を迎えようがそれは因果応報じゃねえか?」

その言葉に奴隷商人の瞳は絶望に染まり、泡を吹いて意識を飛ばした。

「フン」

気絶した奴隷商人をどうでもいいように見下した後、氷を解いて懐から金と鍵を取り出す。

「おい、荷台車がどこにあるか教えろ」

「あ、はい! こっちです!」

荷台車がある場所に翔を案内するラヴァンは一度倒れている彼等を一瞥して訊いた。

「あの人達は………………?」

「知るか。運がよけりゃ生き残れんだろう」

殺さないだけありがたく思え。と吐き捨てながら翔はラヴァンの案内で荷台車に赴くと檻に閉じ込められている奴隷達を解放した。

首と手足に嵌められている鋼鉄製の首輪と手枷を外された奴隷達は戸惑いを見せるなかで翔は一人の女性に奴隷商人が持っていた金を投げ渡す。

「後はお前等の好きにしろ」

それだけ言って踵を返して歩き始める翔の背中を目をパチクリさせながら呆然と見つめていると、ラヴァンが一笑と共に解説する。

「もうお前達は自由だ。それを資金に故郷に帰るなり好きにしろ。きっとそう仰っていると思います」

この一週間共に旅をしているだけあって素直な発言ができない翔の言葉に慣れてきたラヴァンの一声に奴隷達は理解して自分達が自由の身になったことに歓喜した。

「では道中お気をつけて」

翔に続くように歩き始める二人の背中を元奴隷達は感謝の意を込めて深々と頭を下げた。

「お優しいですね」

「あのまま野垂れ死んだら目覚めが悪いだけだ」

その言葉に笑みを溢す。

「それより見えてきたぞ。最初の街だ」

街道を進みようやく見えてきた街。周囲に囲む巨岩の市壁はモンスターの襲撃に備えての防壁。それはまるで要塞のように見えてしまう。

正門には門兵と思われる兵士とその側に小屋、詰所もあることからそれなりに充実した街なのだろう。

「止まってくれ」

正門に近づくと門兵に声をかけられて動きを止める。

「身分を証明する物とこの街に来た目的は?」

恐らくは規定通りの質問かどこかやる気がない。仕事だから仕方なくしている感じがする。

それでも街に入る前に面倒事が起きてしまった。

翔は身分を証明するものなど持っていない。

早速躓いてしまった翔の代わりにラヴァンが口を開いた。

「私達はネイション王国の者です。この街には休息を取りに参りました」

「ネイション王国!? 一ヶ月ほど前に魔族に滅ぼされた国の!?」

「はい。逃げる際に身分を証明する物も失くしてしまいましてどうにか街に入れないでしょうか?」

魔族の襲来を受けて滅ぼされたネイション王国の話は流石に知れ渡っている。

その生き残りがこの街に訪れているんだ、驚くのも無理はない。

「そういうことならこの街で身分証を作って、後に確認させてくれれば問題はない。冒険者ギルドに行けば新しく申請してくれるはずだ」

「そうですか。あ、それとモンスターの素材を換金したいのですが」

「ああ、それも冒険者ギルドでしてくれる」

「ありがとうございます」

ラヴァンの対応のおかげですんなりと門を通ることが出来た。

街中は人で溢れ、人間族だけではなく亜人族の姿も見える活気ある街だった。

「……………………」

もしかしたらこの街にあの二人がいるかもしれない。そんな淡い希望を抱いてしまう。

いや、例えこの街にいなくてもいつか必ず見つけ出す。

「まずは冒険者ギルドに言って身分証と素材の換金をするぞ」

「はい」

ひと先ずは先ほど門兵の言葉に従ってギルドに赴いて身分証と換金を行う為に二人はメインストリートを歩きながら門兵が言っていたギルド、冒険者ギルドに足を運ぶ。

中に入るとそこは荒くれた冒険者の喧騒と酒の匂い。ということはなく中は思っていた以上に静かで酒の匂いも冒険者同士での喧嘩もない。

冒険者らしい恰好の人達はちらほらはいるもそれだけだ。

面倒事が避けられるのならそれに越したことはない二人は受付まで行く。

「ようこそ、冒険者ギルドへ」

「ここで身分証の申請と素材の換金ができると聞いたが?」

「はい。ではまずはこちらに必要事項に記入をお願いします」

女性の受付の指示通りに羊皮紙に必要な項目を埋めていく二人は書き終えるとそれを受付に渡す。

必要項目が埋まっているのを確認して受付は「少々お待ちを」と告げて奥に足を運ぶ。

数分後、戻ってきた受付から免許書サイズのカードが手渡される。

「こちらがお二人の身分証となりますのでなくさないようにお願いします。再申請の場合は手数料がかかりますのでご注意を」

「ああ」

「はい」

「では、モンスターの素材を換金しますので奥のテーブルでお待ちください」

受付に案内されて個室に案内された。

金に目のない冒険者達に変に目をつけられない様にする対応策だとラヴァンが小声でそう教えてくれた。

そして換金した結果は20万ユール。

多いのか少ないのかはわからんが、取りあえずは資金は手に入った。

「……………………一つ聞きたいことがある。ここ一ヶ月で金髪で女の魔法使いか勇者のクラスを持った男の話は聞いたことがあるか?」

「いえ、少なくとも私は聞いたことがありません」

二人の情報を尋ねたが結果は空振りに終えた。

やはりすぐに見つかるものではなかった。

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