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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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崩壊する塔

白亜の塔の最上階で神の使徒を倒した翔は神霊言語によって束縛されていたラヴァン達の方に振り返ると使徒が倒されたことによって効果が切れたのか、自由の身となっていた。

「おい、問題はねえよな?」

「は、はい」

「ならいい」

ラヴァンの言葉で確認が取れた翔は魔昌眼(ミーミル)を閉じて、小さく息を吐いて空を眺める。

空の光景を見つめる翔のその背中はどこか哀愁が漂っているように見える。

『貴方は他の二人に比べると明らかに弱い』

使徒が言っていたその言葉。

二人はこの世界で生きて、そして強くなっていることに安堵と同時に悔しさを覚えた。

あの二人は自分よりも強い。それはわかり切っていたことなのに、それでも悔しいという気持ちを拭えない。

きっと心のどこかであの二人よりも強くなっていると思っていたからだ。

そして、二人を見つけて助けてやろうと傲慢にも慢心していた。

煌はこの世界で『勇者』としての力を持って召喚された唯一無二の存在。

使徒の話ではローレルはイレギュラー。ローレルという存在が何を指しているのかは定かではないが、ローレルには何かあるとだけは理解できた。

そして、自分自身はただ巻き込まれただけの一般人。ごく普通のどこにでもいる人間。

巻き込まれたのはローレルと翔じゃなく、翔一人だけだったのかもしれない。

「ハッ、上等だ………………ッ!」

だが、そんなことはどうでもいい。

あの二人が自分よりも上にいるというのならその上を目指せばいいだけの話だ。

ただの一般人? 

それがどうした。

ごく普通の人間?

上等だ。

「俺は俺なりのやり方で強くなってやるよ。この最弱と呼ばれた魔術でな」

最弱で有名なクラス『魔術師』。その魔術師が行使する魔術を使って翔はここまで這い上がってきた。

だが、まだ足りない。

もっと力を得る為に翔は魔術を使い続ける。

その為にも目的はできた。

まずは煌とローレルの二人を探す。この方針は変わらない。

そして十二神(デエスセア)と見つけて力を貰う。

神霊言語をアレンジして神霊魔術として完成させた。これでこれまで大規模や強力な魔術を起動させるのに時間がかかるという欠点はなくなったし、魔力の消費も効率もよくなった。

だが、これだけでは足りない。

推測ではあるも、今使える神霊言語は神の力の一端でしかない。使える力も限定されている。

今使えるものでも一割以下。

限定されている原因は純粋に翔が人間という生物だからだ。偶然とはいえ、神の力の一端をその身に宿していたから神霊言語を用いることができた。

しかし、強すぎる力は破滅を呼ぶ。単純に心身共に弱いのが原因だと推測した。

仮にこれからの旅でまた使徒と戦うことになったら敗北する可能性もある上に使徒の上にはリュマダがいる。翔達をこの世界に召喚した古代魔法(エンシャント)を作った存在。そして、かつては十二神(デエスセア)を倒して世界を乗っ取った強敵。

戦うことになれば手も足もでずに負けてしまうのは目に見えているし、それ以上に神々の大戦(ラグナロク)が始まり、世界が滅びる。

そうなる前に十二神(デエスセア)を見つけ出して力を貰い、世界が滅びる前に元の世界に帰る手段を見つけ出す。

考えは纏まった後はこの塔からおさばらするだけ。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」

その瞬間、悲鳴が響いた。

サクロの悲鳴が翔はまた使徒が襲ってきたと思い、神霊魔術を起動する。

「うわ! うわ! お宝、お宝がこんなに~~~~~♪ やった! 私大金持ちになった!!」

だがそれは大きな間違いだった。

使徒との戦いで気付かなかったが、この階層の端に金銀財宝が山のように置かれていて、サクロはその財宝に飛び付いて大はしゃぎしているだけだった。

先程の悲鳴は歓喜の叫びだったことに翔はこめかみをに青筋を立てる。

この女、財宝諸共ぶっ飛ばしてやろうか。と本気でそう思った。

「この塔を達成した報酬でしょうか?」

「かもしれません」

大はしゃぎするサクロを他所に冷静に考えるラヴァンとエルティ。ハルは気が付けば翔の隣にいて仙気で翔の気持ちを落ち着かせていた。

「悪いな、危うくあいつをぶっ飛ばすところだった」

「いえ」

気持ちを落ち着かせてくれたハルの頭に手を置いて礼を口にする翔はサクロを見て呆れたように息を吐いた。

「ま、今は大目見てやっか」

ここまで決して楽ではなかった道のり。今だけは何も言わず黙っておこう。

そう思っていたが―――

不意に塔が大きく揺れ始めた。

「なんだ!?」

揺れ始めた塔に全員は驚愕に包まれる。すると、党全体に亀裂が生じ始めた。

「崩壊かよ! クソ、こういうお約束展開はいらねえんだよ!!」

「というよりも塔が崩壊する原因ってショウが壊したからじゃない?」

「うるせぇ! 余計なこと言っているとおいて行くぞ!!」

「ごめんなさい!」

余計な一言を言うサクロに憤りつつ翔は金銀財宝を亜空間に収納させ、神霊言語を用いた転移魔術で塔から脱出する。

「乗れ!」

塔の外まで転移した翔は車を取り出して全員を乗せて稼働し、全速力で塔から離脱する。

天を貫く巨塔。その塔全体に亀裂が広がり、崩れていく。

その崩れ行く塔を車の中で見据えながら離れていく翔達はこのまま次の街まで走る。


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