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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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神霊魔術

白亜の塔最上階でリュマダの使徒と魔術師が攻防を広げている。

「チッ! ちょろまかと鬱陶しい!」

「甘いです」

攻撃魔術を起動させ、更に術式に追尾(ホーミング)も加えた複数属性の魔術は四方八方から使徒を襲うも、白銀色の剣から放たれる光の斬撃に打ち消される。

更には純白の翼を羽ばたかせて残像を置き去りにする神速の動きで翔に接近と同時に超速の袈娑斬り。翔の身体を切り裂くも翔の身体は炎に変わる。

「偽物………………………」

「炎熱縛鎖」

使徒から離れた位置から姿を現す翔は炎より生み出した己の分身に向けて魔術を起動させる。帯状の炎は使徒を捕えようと動くも、使徒は口を開く。

「『神の代行者として告げます。魔術を消しなさい』」

「ッ!? チッ! 面倒くせぇ!」

神霊言語。神の奇跡、言葉だけで奇跡を起こすことができる神の力。神の使徒である彼女もその力の行使でき、神霊言語で翔の魔術を無力化させた。

「見た目に寄らず随分と小技を使うのですね」

「見た目は余計だ」

淡々と皮肉を口にする使徒。

「しかし、貴方の魔術は私には届きません」

「それは俺の台詞だ。お前の神霊言語は俺には殆ど効果がねぇことに気付いてねえと思ってんのか?」

「いいえ、地に落ちた女神から授かった力とはいえ厄介とは思ってます」

そう使徒は本来であれば神霊言語を用いて異世界人である翔を殺そうと考えていた。

だが、それはほぼ不可能。翔が持つ魔昌眼(ミーミル)と能力増大(スケールアップ)はその神霊言語の力を使用した力の一端。その身に神霊言語を宿している存在と言い換えてもいい。

神霊言語は神霊言語の力でしか打ち破る術はない。

それ故に翔に神霊言語を用いた力は大した効果は発揮しない。精々、動きを阻害する程度や魔術の起動を阻止する程度の力しか行使できない。

紛いなりにも神だった十二神(デエスセア)。その神の加護を受けているに等しい翔に使徒も少なからずの厄介さを感じている。

「でしたら使徒である私自身の力で貴方を断罪します」

白銀色の剣から光が放出され、光の剣、槍、斧とうなど数多の光の武器が作り出される。

「光を自在に操る。それがお前の力か」

「そう捉えて構いません。お覚悟を。光臨舞(ルスアルム)」

放たれる無数の光の武器は翔の身体を切り刻もうと襲ってくるも、翔は負けずと魔法陣を出現させて迎撃する。しかし、使徒から光の武器は次々と生み出されて容赦もなく迫りくる。

「隙ありです」

「んなもんあるかよ!」

更には翔の隙をついて使徒が剣を振るってくるも翔は義手である左手で防いだ。

アダマンタイトで作った義手なら使徒も剣もそう簡単には通さない。更には翔は念には念を入れて義手に強化魔術を施して強固さを上げている。

素手で自分の剣が受け止められるわけがないと踏んでいた使徒は一瞬、隙が生じる。

「おらっ!」

「う!」

その隙を見逃す翔ではない。拳撃を使徒の胸部に炸裂させる。

よろめくも使徒は己に纏う鎧に守られ損傷(ダメージ)は無に等しい。

「そこです」

「ぐ!」

使徒もやられた分はやり返すように光の武器による攻撃を一点に集中させて翔の防御魔法陣を突破させ、翔の身体に傷を負わせる。

「まさかその左腕は義手とは思いませんでした。おかげで不意を突かれてしまいましたが、二度目はないと思ってください」

「ハッ、ご忠告ごくろーさん」

悪態を吐く翔の言葉を無表情で受け止める使徒に苛立つように舌打ちする。

使徒の光の武器による攻撃。一つ一つならまだ防御魔法陣で防ぐことは出来ても一点に集中されたら持たない。それに気付いた使徒は恐らくは次からは無駄打ちは止めて一点突破で翔に攻撃を仕掛けるだろう。

それに対して翔はまだ決定打はない。

向こうはこちらの防御を突破する術は見つけたが、こちらはまだ突破策はない。

光の斬撃で相殺されるか、避けられるか、神霊言語で妨害されてしまう。

それでもまだ戦えるのはこれまでの旅で十二神(デエスセア)と出会いって力を貰ったからだ。

そのおかげで絶望的状況化には陥っていない。

そして使徒の力はある程度理解できた。

剣から光を放ち、その光を自由自在に操り、純白の翼は飛行と加速。

白魔術で肉体を強化している為に五感も鋭くなり、反応することはできてはいる。

戦況はほぼ互角と見ていいだろう。だが、それでは駄目だ。

使徒はリュマダに創られた存在。つまり複数存在する内の一体に過ぎない雑兵。そんな雑兵相手に戦況が互角ではこれからの戦いに苦戦するに違いない。

どうする? と翔は思考を巡らせると、ふとあることに気付いた。

「………………………………一つ訊きてぇ」

「何でしょうか?」

「この塔はお前の神であるリュマダが創ったって言っていたな? この塔も神霊言語を使って創ったのか? だとしたらご苦労なこったな」

「それが何か?」

唐突の質問に理解ができずにそう返答する使徒に翔は嘲笑する。

「いや、少し感謝してやろうと思ってな。わざわざ俺を殺す為に人形を送ってきた間抜けな神様にな」

「………………………………」

「へぇ、人形だと思っていたが。感情らしい感情があるじゃねえか。悪かったな、俺はてっきり、お前の主神様はお人形遊びが大好きな間抜けな神だと思ってたぜ」

「その口を閉ざしなさい。我が神の侮辱は許しません」

「おー怖い怖い。で? 許さなかったらどうなるんだ?」

嘲笑い、挑発する翔に使徒は眉間を怒りに歪めた。

「貴方の存在残さず消滅させてあげましょう」

白銀色の剣に力を入れて光を放出し、凝縮させて一本の巨大な剣を形成する。

翔の防御魔法陣を容易く突破するほどまでに力を込めた強力な光の一撃。

「避ければ後ろにいる人達に当たりますよ?」

放たれた光の巨剣。

翔の後ろには使徒の神霊言語の影響で動くことが出来ない。直撃すれば間違いなく存在諸共消えるだろうその一撃の前に翔は魔法陣を展開させる。

それを見た使徒は侮蔑するかのように見下した。

「愚かな………………………」

今更その程度の魔術で防げると思っている人間(しょう)に呆れるように嘆息する。

だが――――。

「『我が名において命ずる。リュマダの使徒よ、力を解け』」

「!?」

翔の言葉に使徒は自分が放った光の巨剣を己の意思で解除してしまった。しかし、驚いたのはそこではない。

「ありえません! たかが人間如きに神霊言語を扱うなど…………………ッ!?」

先程、翔が行使したのは紛れもない神霊言語だった。

「何故その力を! 神霊言語は神のみが許された―――――!」

そこまで言って使徒は気付いてしまった。

神霊言語は神のみぞ許された奇跡の力。故に神性がなければその力を発動することさえ叶わない。

たかが人間には使えない力でも、たかがではない人間には使える。

翔は神霊言語の力の一端を、つまり、神性をその身に宿している為に使えない道理はなかった。

それでも―――

「それでも、神の力をそう容易く扱えるはずがありません! 私に命令を強制させるほどの力なんてあるはずが………………………ッ!?」

「ああ、確かにな」

確かにその身に神性がある翔になら扱える道理はある。だが、それをそう容易く扱えるほど神の力は伊達じゃない。それには翔も同意した。

「だがら感謝してるぜ。俺の前にご丁寧にぺちゃくちゃと話してくれたおかげでな」

「どういう意味ですか………………?」

「言葉通りだ。お前は神霊言語の力とその行使、そしてこの塔が神霊言語を使って創られたことを教えてくれた。そのおかげで俺は神霊言語の力の使い方と、この塔の力を解析することができた」

左眼の、魔昌眼(ミーミル)を指す。

世界の理を視る力。それが魔昌眼(ミーミル)の能力。だが、その能力を持っても解明できない部分も多々あったが、使徒が神霊言語の事について話してくれたおかげで、その内の一つが解明することができた。

翔は神霊言語で創られたこの塔を解析し、その力について理解した。

「魔術師は知識を増やせば増やすほど、理解をすればするほどに力を増すクラス。お前のおかげで俺はまた一つ賢くなったぞ? ありがとよ。お詫びに一つ良いことを教えてやる。俺達がいた世界で日本という国にはこういう言葉があるんだよ。口は禍の元ってな」

冷笑し、嘲笑う翔に使徒は烈火の如く翔を睨む。

「俺はその神霊言語を術式に組み込んで新たな魔術を完成させた。名付けるなら”神霊魔術”とでも呼ぶべきか?」

翔はわざわざ使徒に向けて挑発したのも解析が完了するまでの時間稼ぎに過ぎない。

人間だと見下し、甘く見ていた使徒はそのことに気付かず、力について話してしまったのが原因だ。

「ありえません………………………たかが人間如き、神の力を扱うなど………………………!」

動揺する使徒は己の足が下がっていることに気付いた。

無意識に恐れているのだ。自分よりも劣る下界の住民である人間に、神の使徒である自分が恐れを抱いている。

「異世界人――――――――――――――――――――――――――ッッ!!」

加速する。

神の使徒としてこの危険人物を抹消しなければならない。

使命だ。そう、これは使命だ。

烏滸がましいことにこの人間は神の力である神霊言語を使った。己の分を弁えない人間を断罪するのは使徒である私の務め。

驀進する使徒に翔は新たな魔術、神霊魔術の魔法陣を展開させる。

「ぶっ飛べ」

次の瞬間、魔法陣から放たれる巨大な光の衝撃波が使徒を呑み込み、塔の壁に風穴を空ける。

使徒は消滅し、壁の外から外の景色が見える。

「へぇ、絶景だな」

雲の上。空の景色を一望できるその光景に翔は感心するようにそう言った。


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